女神同棲 〜転生に失敗しましたが、美人で清楚な”女神様を拾った”ので、甘々な新築生活を目指します!〜

杜田夕都

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第12話 恋愛相談

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「詳しく聞かせてもらおうか」
「な、何のことですか?」

 俺は案の定、橘先輩に問い詰められていた。

「職歴なしって言ってる割には、やる気に満ちていると思ったんだが、あんな美人と同棲していたとは驚いたぜ、全く。そりゃ頑張っちゃうよな」

 図星がすぎる。
 橘先輩のダル絡みはまだまだ続いた。

「で、告白はどっちからなんだ?」
「し、してないです……」
「え?」

 橘先輩の施工の手が止まる。

「告白すっ飛ばして、同棲してんの?」
「はい……」
「マジかよ、じゃあ知り合ったのはいつ?」
「昨日です」

 耳まで真っ赤にしながら包み隠さず白状した。

「同棲の形は人それぞれだとは思うが、知り合ったのが昨日ってのはちょっとした恐怖だな……」
「ぐうの音も出ません」
「単刀直入に聞くが、ハヤトはセラフィーラさんのことが好きなんだよな? セラフィーラさんのために日雇いも始めたんだろ?」

 橘先輩から白黒はっきりさせようという意思をやんわりと感じた。19年もの間、全てを曖昧にしてきた俺の内を見透かされているようだった。
 彼女いない歴=年齢。
 セラフィーラさんに下界を見せてあげたい。
 セラフィーラさんを守りたい。では、なぜそう思うのか。
 一度も口にしていなかったが、認めざるおえなかった。

「好きです。仕事もセラフィーラさんを養いたくて始めました」

 恥ずかしすぎて顔から火が吹き出してしまいそうだった。

「そうか。なら告白しなくちゃな」
「やっぱりした方がいいですか?」
「あったりまえだろ。俺はぁ、なあなあな関係でだらだらと引き延ばすラブコメが好きじゃない。ハヤトはそういうタイプな気がする。目標を決めるんだ。いつ、どうなったら告白するのかをな」

 見透かされている。
 いつ、どうなったら告白するか。
 節目としては、ホームレスを卒業してアパートを借りれたら?

「分かりました。考えておきます」
「偉そうに言って悪いが、俺はハヤトを応援してるし、仕事の面倒は俺が見てやる。いつでも恋愛相談待ってるぜ」
「ありがとうございます!」

 俺の意思を確認したかっただけなのか、それ以上追求されることはなかった。

 その後は、午前の施工の続きに打ち込んだ。
 橘先輩は壁の上半分、俺は壁の下半分。
 コテを使って板にのったモルタルを救い上げて壁に塗り込んでいく。
 そろそろ慣れたかと思ったけれど、定期的に手直しされてしまう。

「落ち込むなよ。一番難易度の低い上塗りとは言え、そもそも左官工事は専門性の高い仕事だぜ?」

 施工は夕方までかかった。
 作業終わりに家主さんが新築の前まで来て差し入れをくれた。

「カキモト建設さんお疲れ様です。いつもありがとうございます。家の完成を楽しみにしていますね」

 とても短い挨拶だったが、人から感謝されるという経験に乏しかった俺の心にじんわりと染み渡った。
 
「ああいう風に言ってもらえると俺たちがこの街を作っているって実感できて、次も頑張ろうって気持ちが湧いてくるよな」

 橘先輩の屈託のない笑顔が胸に残った。





 事務所に戻って日給を受け取った俺はその足で古着屋と業務スーパーに直行して、二人分の着替えや日用品を買い漁った。
 必要な物が多すぎて、お金はほとんど使い切ってしまった。
 俺は大荷物を抱えて、足が棒になりながらも佐々木公園の段ボールテント前にたどり着いた。

「はやとさん、おかえりなさいませ」
「セラフィーラさん、ただいまです」

 理想のマイホームではないけれど、こうして俺のことを待ってくれる人がいる幸せを噛み締める。

「こんなに大荷物で、どうしたのですか?」
「今日の給料で生活必需品を買ってきました」

 俺は荷物を段ボールテントの中に下ろす。

「まぁ、こんなにたくさん! ありがとうございます」

 セラフィーラさんは相も変わらず深く、深く頭を下げた。

「気にしないでください。同棲ですから」
「では、ちょっと外に出ませんか?」
「まだお夕飯の時間ではないようですが?」

 俺はセラフィーラさんを手招きして外に連れ出した。
 セラフィーラさんが昨日、興味を示し「楽しみにしています」と言っていた物の前まで案内する。

「自動販売機!! 覚えてくれていたのですね!」
「今はお金があるので、お好きな飲み物をどうぞ」
「わぁ! はやとさんありがとうございます!」

 セラフィーラさんにお金を渡して見守る。
 ウキウキのセラフィーラさんが見れて眼福である。

「では、コーンポタージュ? というものをお願いいたします」

 静寂。

「あら? コーンポタージュをお願いいたいます」

 セラフィーラさんは自販機に語りかけ、おじぎを繰り返す。

「あっこれ自分でお金を入れて、ボタンを押さないと出てきませんよ。あと自販機との意思の疎通は無理です」
「私としたことがっ! 申し訳ございません」
「いえ、こちらこそ説明不足でした……」

 セラフィーラさんは知識として自販機というものの存在を知っていたにすぎない。
 現代の尺度でセラフィーラさんの行動を推し量ってはいけないと痛感した。

 セラフィーラさんはお金を入れ、恐る恐るボタンに手を伸ばした。

 ピッ

 ガタンッ

「はやとさん! 私、自分の力で買えました!」
「おめでとうございます^^」
「ありがとうございます! 私の宝物にします」
「いや、せっかく買ったので飲んでくださいね」

 無邪気に喜ぶセラフィーラさんがとても愛おしかった。
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