女神同棲 〜転生に失敗しましたが、美人で清楚な”女神様を拾った”ので、甘々な新築生活を目指します!〜

杜田夕都

文字の大きさ
11 / 34

第11話 女神様とお昼休憩

しおりを挟む
「二人はどういう関係なん?」

「えーと……」
「はやとさんと同棲しております、セラフィーラと申します。どうぞお見知りおきください」

 俺が考えあぐねている隙に、セラフィーラさんは爆弾を投下し、橘先輩へと頭を下げた。

「ど、どうも橘です。 えっ同棲!? マジでか!」
「えぇ、マジです!」

 脇汗が止まらなかった。
 セラフィーラさんの口から"マジ"という単語が飛び出すとは。言葉のニュアンスとか分かってないんだろうな......。

「お前も隅におけない奴だな! そういうことなら俺はクールに去るぜ。その代わり、後で根掘り葉掘り聞かせてもらうからな!」

 橘先輩は、にやにやしながら俺の肩を軽く叩いて「なるほど、なるほど、そういうことか」と頷きながらコンビニへと向かってしまった。
 流石の飲み込みの速さだった。

「ちょ、ちょっといきなり何てこと言うんですか!?」
「事実ではありませんか」 
「そうですけど……」

 セラフィーラさんは泰然とした態度だった。
 提案したのは間違いなく俺なのだが、果たして公園段ボール生活を『同棲』と呼んで良いのだろうか。
 それ以前に一体どうやってここまで来れたのか。
 まさか公園の外に出るとは思わなかった。

「それよりも、はやとさん。私は怒っています」
 
 セラフィーラさんから怒りというワードが飛び出し、思わずギョッとする。

「朝ご飯、どうしてご一緒してくれなかったのですか? 約束しましたのに」

 セラフィーラさんは、頬をぷくっと膨らませた。

「食べなくても大丈夫だと思って」
「いけません! 人間は1日3食食べないと健康を保てないと本で学びました。しっかり食べてください」

 反論の余地なし。

「はい、すみませんごめんなさい……」
「肝に命じてください」

 俺は将来、尻に敷かれるのかもしれない。告白もまだな癖にそんな贅沢なことを考えてしまう。

「ですが、ここにいらっしゃるということは、お仕事が決まったのですね。おめでとうございます」

 叱られたと思ったら、褒められた。温度差で風邪引いちゃう。

「ありがとうございます。 期間限定の日雇いですけど」
「期間限定とは?」
「一度死んだので戸籍がないんですけど、そのせいで1ヶ月しか働けないみたいなんです」
「最近はそのような規定があるのですね……」
「残念ながら天界からの支援は見込めませんが、私の方でも何か方法がないか調べてみます」
「ぜひお願いします」

 神頼み。

「情報を集める手段としては、スマホ、テレビ、新聞、図書館あたりが主流ですが、今は金欠なので図書館ぐらいしか使」
「図書館ですか!?」

 セラフィーラさんが食い気味で顔を寄せてきた。近すぎます。

「えぇ、おそらく市が所有する無料で使える図書館がどこかにあると思います」
「承知しました! 私、図書館に行ってきます! ですが、その前に」

 セラフィーラさんはソワソワしていたが、はやる気持ちを抑えて一言。

「お昼にしましょう!」

 そう言って手提げ袋からコンビニのサンドイッチを取り出した。

「セラフィーラさんが買ったんですか?」
「いえ、山田様からいただきました」
「今夜、食費を支払うようにとおっしゃっていました」
「わかりました」

 昨日の夕食の件もあるし、それなりの額を覚悟しておこう。

「それでは、いただきます、ですね。はやとさん」
「はい、いただきます」

 顔を見合わせて二人で合掌した。
 生前は無言で食べていたから、こうした一挙一動をするたびに心がほぐれる。

 セラフィーラさんがたまごサンドを頬張る。

「んー! 生地がしっとりですね! たまごがほんのり甘くてふわふわで大変おいしいです」

 セラフィーラさんは頬をほころばせた。かわいい。

「卵という物は、白色のイメージがあったのですが、黄色の卵もあるのですね。私、知りませんでした」
「卵は基本的に白だと思いますよ。殻は白ですが、中に色素成分であるカロテノイドによって黄色になっている卵黄があるんです。この卵黄を混ぜて作っているので黄色なんですよ」
「中身の色なのですね! はやとさんは博識ですね」
「そんなことないですよ」
 
 卵の黄身の存在はたぶんみんな知ってる。
 セラフィーラさんの新鮮なリアクションが微笑ましい。

 俺もたまごサンドを食べた。
 食べ慣れたはずの味なのに、セラフィーラさんと一緒だからかとても美味しく感じた。

「やっぱり二人で食べると美味しいですね」
「はい、またご一緒しましょうね! はやとさん」
「わかりました」

 セラフィーさんの優しい笑顔を向けられたら何も断れない。

「それにしてもよくここまでお一人でこれましたね」
「山田様からカキモト建設様について教えていただいたので特に問題ございませんでした。 こちらへは、柿本様がご案内してくださいました」

 建物が多くて代わり映えしない景色だったので、チラシの地図を見ながらでも迷ったものだが、セラフィーラさんは方向感覚がしっかりしているらしい。

「ここまでの道のりで思ったのですが、魔法を一切使わずに、これほど大きな建物をいくつも作ってしまう人間は、本当に素晴らしいですね」
「魔法を使わない、というか使えないが正しいですけどね」
「下界を支える大切なお仕事だと思います。はやとさんはお家を作っていらっしゃるんですよね」
「はい。まだ仕事を覚えれていませんが……」
「はやとさんなら、きっとできます!」
「ありがとうございます」

 俺の覇気のない声を聞いて察したのか、励ましの言葉をくれた。
 セラフィーラさんを支えたいと考えていたが、支えられているのは俺の方だ。
 もし一人だったら、一度も挑戦したことがない仕事を頑張ろうなどという姿勢にはならなかっただろう。

 俺たちはしみじみと新築へ目を向けた。

「俺たちも、いつか家に住めるといいですね」
「そうですね。私の体がそれまで持てばよいのですが......」
「何か言いましたか?」
「いえ、なんでもございません」

 家は憧れだが、その前に解決しなければならない問題が山積みだ。

「お楽しみのところ悪いけど、そろそろ施工再開するぜー」

 いつの間にか帰ってきていた橘先輩の号令で振り返る。

 「それでは、そろそろ失礼いたします。 図書館で戸籍について調べて参りますね」
 「はい! お願いします」

 俺は施工の道具を持って橘先輩の元へと駆け寄った。

 果たして、無戸籍を乗り越える手段など存在するのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームに転生するつもりが神々の悪戯で牧場生活ゲームに転生したので満喫することにします

森 湖春
恋愛
長年の夢である世界旅行に出掛けた叔父から、寂れた牧場を譲り受けた少女、イーヴィン。 彼女は畑を耕す最中、うっかり破壊途中の岩に頭を打って倒れた。 そして、彼女は気付くーーここが、『ハーモニーハーベスト』という牧場生活シミュレーションゲームの世界だということを。自分が、転生者だということも。 どうやら、神々の悪戯で転生を失敗したらしい。最近流行りの乙女ゲームの悪役令嬢に転生出来なかったのは残念だけれど、これはこれで悪くない。 近くの村には婿候補がいるし、乙女ゲームと言えなくもない。ならば、楽しもうじゃないか。 婿候補は獣医、大工、異国の王子様。 うっかりしてたら男主人公の嫁候補と婿候補が結婚してしまうのに、女神と妖精のフォローで微妙チートな少女は牧場ライフ満喫中! 同居中の過保護な妖精の目を掻い潜り、果たして彼女は誰を婿にするのか⁈ 神々の悪戯から始まる、まったり牧場恋愛物語。 ※この作品は『小説家になろう』様にも掲載しています。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

距離を置きたい女子たちを助けてしまった結果、正体バレして迫られる

歩く魚
恋愛
 かつて、命を懸けて誰かを助けた日があった。  だがその記憶は、頭を打った衝撃とともに、綺麗さっぱり失われていた。  それは気にしてない。俺は深入りする気はない。  人間は好きだ。けれど、近づきすぎると嫌いになる。  だがそんな俺に、思いもよらぬ刺客が現れる。  ――あの日、俺が助けたのは、できれば関わりたくなかった――距離を置きたい女子たちだったらしい。

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

『鉄壁の御曹司は、お節介な「姉」に料理される』

エイプリル
恋愛
訳アリの彼と世話好き女の子、疑う彼をエサ付けした女の子が恋愛のハードルを突然上げられて!付き合うって何?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...