闇堕勇者と偽物勇者

ぼっち・ちぇりー

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新しい日常

お仕置き

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「本当に宜しいのですか? アポカリプス様。」
「問題ない。そっちはどうだ? 準備はできたか? 」
「ケッケッケ。いつでも良いっすよ。」
 アモスは、腰から抜いた 橘緑きつりょくの短剣をペロリと舐めた。
「こっちも良いぜ、魔・王・様。」
 ベリアントは両手で印を組み、魔術の発動の準備をすると、高らかにそう宣言した。
「開始。」
 リリスさんの気持ち重々しい掛け声と共に、ベリアントが魔術を発動する。
[シャドー・バインド]
 僕の身体が、奴の影によってガッチリ絡め取られる。
 そしてアモスが握っている短剣。
 慧眼で事前に読んでいた二人の行動。
[おい、早くバインドを解け。]
「その必要はないよディアスト。」
 この決闘は、エスカリーナの名誉を回復させるためだけのモノでは無い。
 僕は、彼の毒牙を身体で受け止めた。
 受け止めようとした。
 僕の身体に、アモスの探検が触れた瞬間、アモスの短剣が、乾いた音と共に砕け散る。
 僕の身体には傷一つ付かなかったし、身体の自由が奪われることもなかった。
「「なんだとぉ。」」
 彼らは目ん玉をひん剥くと、僕も目ん玉をひん剥き、一緒に驚いた。
「ハァー。」
 後ろでメイドの、ため息が聞こえるような気がする。
 本来の目的を見失ってはいけない。
 僕は取り繕ったように、バインドを無理矢理引き裂いて解除すると、逃げるベリアント達を追った。
「その程度か? 我が家臣達よ。」
 ロールプレイを完璧にこなして見せると、彼らは息を荒げながら、中庭の中を駆け巡る。
「おい、アモス。二手に分かれるぞ。」
「分かった。」
 ディアストが、ベリアントを魔術でマーキングしていたので、僕はアモスを追った。
「ぎゃーあ。こっちかよ。」
「その程度か? 逃げているだけでは、世に勝てないぞ。」
 頼むから逃げないでくれ。君の魔術を見せて。
 彼が止まったので、僕も追うのをやめて立ち止まった。
「そこまで言うのなら…… 」
「見せてやるよ。俺の魔術。」
 アモスが身体にグッと力を込めると、あちらこちらの血管が浮かび上がる。
「毒による身体強化。ほう。お前の魔術はそういう使い方も出来るのか? 」
「ケケケ、幼い頃から鍛錬しましたからね。少量ずつ、抗体が付くように自分の毒を摂取していました。」
 ならば、毒による身体強化のデメリットは無いに等しいか。
「ビァーっ!! 」
 甲高い音を上げながら、こちらに突っ込んでくる。
 僕は、彼の右手首を自身の右手でガッチリ掴むと、避けながら、投げ飛ばした。
「分かりやすいし、単調だな。」
「少し手練の冒険者なら、お前の攻撃に反応出来なくとも、その甲高い声で、お前のその突進を見切るだろうな。」
「さて、手練の冒険者は、私の手首に触れてどうなったでしょうね。」
 自身の掌が、ドロドロと解け始めていることに気づく。
 なんでこと無いが、少し痒い。
「よくやったぜアモス。」
 彼が茂みに隠れながら、少しずつこちらにやってきていたことには気づいていた。
 彼と自身の影が重なり、再び拘束される。
 それを即座に解くと、影がガラスのように崩れ、回し後ろ蹴りで、ベリアントを蹴り飛ばした。
 蹴りはベリアントの頬にクリーンヒットし、大きく吹き飛ぶ。
 正面から、アモスが迫ってきて、今度はアッパーを喰らわせてきた。
 接触させるだけなら、リーチの長い突進を繰り返せば良い。
 アモスは、自分に毒が効かない事を悟ると、肉弾戦に切り替えてきたのだ。
「こっちも見えてるかぁ? 」
 ベリアントは、右手から影をワイヤーのように伸ばすと、城の外壁に突き刺し、こちらへと飛んできた。
 体勢を低くして、ソレを避ける。
 アモスは、二マリと歯を見せながら、右脚を大きく振り上げていた。
---飛鷹ヒヨウ---
 思わず身体強化魔術を使ってしまい、自分がいた場所に、大きなクレーターが出来た。
 飛び散った煉瓦の破片が、僕の頬に傷を付ける。
 無意識に苦虫をすりつぶし、後ろの迎撃に対応する。
 ギアを上げたことにより、思考に余裕が出来る。
[こい、---雷斬ライキリ---]
 魔導剣を出現させ、狙うは、ベリアントでは無い。
 彼が使用している影目掛けて、ソレを投げつけた。
 影は、雷斬に当たると切れるというより、消滅し「おっととととととぉ。」
 バランスを崩したベリアントの腹を、左腕でガッチリ掴む。
 ベクトルが正面衝突した影響で、彼の肋骨が何本か逝く。
[バカかお前は。]
 ディアストに罵倒されながら、彼を地面に下ろした。
 アモスの回し蹴りをバックステップで交わしながら、体勢を立て直そうとした。
「アモス!! やれ!! 」
 左脚をベリアントの影に掴まれて、体勢を崩す。
「良いぞ、ベリアント!! 」
 二人は、決闘のことなんて忘れて(僕自身も忘れていたかもしれない。)ただ、目の前の敵を倒すことに集中していた。
 空高く飛翔し、回転しながら、右手に力を溜めて、一気に叩き落とす姿勢。
 僕は体勢を立て直す事を諦めて、そのまま倒立した。
「堕ちろぉぉぉ。」
 アモスは渾身の一撃を、自身に叩き込もうとしている。
---裏斬レーヴァテイン--- 
 今度は右足に魔導剣を出現させて、黒炎で靴を焼かせると、ソレを五本の指でガッチリ掴んだ。
「キィィィィィン。」
 乾いた音が、小刻みに、連続して鳴り響く。
 ソレと同時に、力同士がぶつかった、衝撃波エネルギーが、何度も発生し、僕たちの肌を傷つけた。
「グァァァァァァ。」
 僕は本来の目的を忘れて、いつのまにか本気マジになっていた。
 ディアストが抑えてくれなければ、アモスは、死んでしまっていたかもしれない。
 彼は吹き飛ばされ、地面に倒れると、遅れて右腕が堕ちてきた。
 僕は、右脚が無くなっていることに気付かないで、左脚のみで彼へと歩み寄った。
「ごめん、すぐ治すから。」
 アモスに全快をかけて、遅れて、ベリアントに対しても全快をかけた。
 二人は、僕たちに対して土下座をして、ソレから、そそくさと逃げていった。

 翌日、尾鰭おびれが付いた噂が、魔族達の間で出回ったとさ


 
 
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