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呪いを解くため
逃亡
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「なぁアスィール。もし、フォースさんの呪いが解けたら、ここで一緒に暮らさないか。」
「父さんももう若くないから。男手が必要なのよ。」
僕はスープをスプんで掬って、口に流し込む。
暖かい液体が、身体の芯から広がっていくのを感じた。
ずっと親というものがどういう存在なのか分からなかった。
でも、ソレに不満を持ったことなんて無い。
リワン姉ちゃん。
そう、彼女が僕の面倒を見てくれていた。
僕の暴走を止めてくれたのも彼女だ。
僕が僕である前、おそらくアスィールも彼女に支えられて、何度も助けられて生きてきたのであろう。
僕は立ち上がって、二人に詫びる。
「ごめんなさい。僕には故郷があるんです。」
お父さんは僕を叱責することは無かったし、お母さんは泣き出すことも無かった。
父は腕を組み無言で頷き、母は口角を少し上げると、ずっと僕を見つめる。
「お前は勇者の代理だと言ったな。」
「そうだよ父さん。」
「お前が倒せ。魔王を。」
そう言って、お父さんは僕の頭を撫でてくれた。
「いつでも帰ってきなさい。暖かいスープを作って待っているから。」
お母さんに抱きしめられる。
「未だ乗り込め!! 」
家の戸がこじ開けられ、農具を持った村人たちが僕を取り囲む。
「この子は客人だ。お前らの商品では無い!! 」
「なら、この村の礼儀ってのを教えてやんねえとな。」
「村長。コイツは確かにアスィールです。ご確認を。」
杖をついた老父は、コツコツと音を立てながら、ゆっくりとこちらにやってくる。
[トレーサー]
僕の耳の裏側に痛みが生じる。
「この焼印は確かにアスィールのモノだ。ワシがコヤツを売りに出す前にコヤツの耳裏に押し付けたモノ。開印魔術が施されとったようじゃが、ワシの目は誤魔化せん。」
「そんな!! アスィールは!! 」
「逃亡奴隷じゃ。コレでワシらにも大義名分が出来た!! 」
「彼は逃亡奴隷じゃ無いわ。英雄育成計画はすでに凍結されている。彼は王宮に買われた時点で、もう奴隷としての立場を終わらせている。」
アスピが、ノソノソと階段を降りてきた。
「アスピ!! ダメだよ、まだ寝てないと。」
「どうやらこの奴隷狩りどもはソレを許してくれない見たいだけど。」
「そんなことはどうでも良い、肝心なのは今ここに、ワシの焼印をつけた商品が、この村に戻ってきたという事実だけじゃ。」
「どうやら獣には人語が通用しないようね。」
「言ってろ小娘。お前のような貧相な身体をしておっても買い手はつく。金を持っとる商人どもは異常者ばかりだからな。」
彼女は恥ずかしがることも、身の毛をよだたせることも無かった。
「言いたいことはそれだけか、変態糞ジジイ。」
僕はお母さんに手を引かれる。
「アスィール!! 逃げろ!! 」
「アスラフィル。この村の掟に背くということはどうなるか分かっているか? 」
「したったことか!! あの子は____ 」
「母さん下ろして! 父さんが。」
「父さんの気持ちを無碍にしたらダメ。」
アスピがフォースの棺桶を背負ってこちらに走ってくる。
「ホラ!! アンタの装備。重いったら無いんだから。」
言葉とは裏腹に涼しい顔でこちらに武具を投げつけてくる。
「アスピ!! 頼む!! 助けてくれ!! 」
彼女は俯いて、沈黙する。
それから冷ややかな顔で僕に言葉を返してきた。
「助けるってどうやって? アイツらは私たちが護るべき存在なの。」
「どんなに醜悪で腐った存在でも。アイツらは私たちが護らなければいけない人たちなの。コレが現実。」
錯乱の中で、彼女の置かれている立場というものをすっかり忘れていた。
「仮にでも、貴方がアイツらにその鋒を向けようなら!! 貴方はもう勇者ではなくなる。」
「キヤッ!! 」
視界が転がる。
幸い雪が積っているおかげで僕は怪我を免れた。
が、お母さんは
「安心しろ。そのトラップには毒なんて塗ってない。身体が痺れて動けなくなるぐらいだ。」
ボウガンを持った男が、サクサクとこちらにやってくる。
「アスラフィルんところの奥さんかぁ。もう年は若くねえし……だが顔が良い。今年はコイツで。」
「辞めなさいアスィール!! 逃げるのよ!! 」
アスピに手を引かれる。
「離してくれアスピ!! こんなことになるなら!! 」
「こんなことになるのならって。じゃあどうするつもりなの貴方は。」
母さんが痺れた声帯で力を声を絞り出した。
「ごめんねアスィール。貴方を売ったりして。コレは私たちの罰だから。」
母はどんどん遠ざかり、銀世界の中へと消えていく。
前方にはアスピが。
涙を流すアスピの姿が。
彼女はドライな人間なんかじゃ無い。
ただ、責任感が強いだけなのだ。
[フフフ……滑稽ねアンタは。どこまで偽善者気取ってりゃ済むのかしら。]
幻聴では無い。確かにそれは竜宮の剣から聞こえてきた。
彼女の、ドゥルガの言う通りだった。
全て彼女が正しいし、僕のことを本当に思っていてくれたのは彼女の方だ。
「お前が……お前がそんなことを言う奴だとは思わなかったァッ。」
目が熱くなって、前方が見えなくなってくる。
[いい顔ね。やっぱりお前にはその顔が似合ってるわよッ。]
「……くそくしろ。」
[なんて? 聞こえないわよ。]
「僕と約束しろよ。二度とそんなこと言わないって。」
[ええっーどうしよっかなぁー。]
[まぁいいですよ。私の柄を握って肉を斬ってくれるなら。]
[ね童貞勇者様。]
「もう良いよお前は、お前の力には頼らない。剣としての役割を果たしてくれれば。」
[元よりお前のようなイカ臭いガキには、力を貸す気なんてないですけどね。]
「泣くな馬鹿!! 伏兵がいたらどうするのよ。私たちは狙われているのよ。」
アスピの言葉で我に帰る。
そうだ。こんなところで惨めったらしく泣いている暇なんてない。
今は、あの村から出来るだけ離れないと。
僕たちは必死に走った。
走って走って走り続けた。
王都の高い高い塔を目指して。
「父さんももう若くないから。男手が必要なのよ。」
僕はスープをスプんで掬って、口に流し込む。
暖かい液体が、身体の芯から広がっていくのを感じた。
ずっと親というものがどういう存在なのか分からなかった。
でも、ソレに不満を持ったことなんて無い。
リワン姉ちゃん。
そう、彼女が僕の面倒を見てくれていた。
僕の暴走を止めてくれたのも彼女だ。
僕が僕である前、おそらくアスィールも彼女に支えられて、何度も助けられて生きてきたのであろう。
僕は立ち上がって、二人に詫びる。
「ごめんなさい。僕には故郷があるんです。」
お父さんは僕を叱責することは無かったし、お母さんは泣き出すことも無かった。
父は腕を組み無言で頷き、母は口角を少し上げると、ずっと僕を見つめる。
「お前は勇者の代理だと言ったな。」
「そうだよ父さん。」
「お前が倒せ。魔王を。」
そう言って、お父さんは僕の頭を撫でてくれた。
「いつでも帰ってきなさい。暖かいスープを作って待っているから。」
お母さんに抱きしめられる。
「未だ乗り込め!! 」
家の戸がこじ開けられ、農具を持った村人たちが僕を取り囲む。
「この子は客人だ。お前らの商品では無い!! 」
「なら、この村の礼儀ってのを教えてやんねえとな。」
「村長。コイツは確かにアスィールです。ご確認を。」
杖をついた老父は、コツコツと音を立てながら、ゆっくりとこちらにやってくる。
[トレーサー]
僕の耳の裏側に痛みが生じる。
「この焼印は確かにアスィールのモノだ。ワシがコヤツを売りに出す前にコヤツの耳裏に押し付けたモノ。開印魔術が施されとったようじゃが、ワシの目は誤魔化せん。」
「そんな!! アスィールは!! 」
「逃亡奴隷じゃ。コレでワシらにも大義名分が出来た!! 」
「彼は逃亡奴隷じゃ無いわ。英雄育成計画はすでに凍結されている。彼は王宮に買われた時点で、もう奴隷としての立場を終わらせている。」
アスピが、ノソノソと階段を降りてきた。
「アスピ!! ダメだよ、まだ寝てないと。」
「どうやらこの奴隷狩りどもはソレを許してくれない見たいだけど。」
「そんなことはどうでも良い、肝心なのは今ここに、ワシの焼印をつけた商品が、この村に戻ってきたという事実だけじゃ。」
「どうやら獣には人語が通用しないようね。」
「言ってろ小娘。お前のような貧相な身体をしておっても買い手はつく。金を持っとる商人どもは異常者ばかりだからな。」
彼女は恥ずかしがることも、身の毛をよだたせることも無かった。
「言いたいことはそれだけか、変態糞ジジイ。」
僕はお母さんに手を引かれる。
「アスィール!! 逃げろ!! 」
「アスラフィル。この村の掟に背くということはどうなるか分かっているか? 」
「したったことか!! あの子は____ 」
「母さん下ろして! 父さんが。」
「父さんの気持ちを無碍にしたらダメ。」
アスピがフォースの棺桶を背負ってこちらに走ってくる。
「ホラ!! アンタの装備。重いったら無いんだから。」
言葉とは裏腹に涼しい顔でこちらに武具を投げつけてくる。
「アスピ!! 頼む!! 助けてくれ!! 」
彼女は俯いて、沈黙する。
それから冷ややかな顔で僕に言葉を返してきた。
「助けるってどうやって? アイツらは私たちが護るべき存在なの。」
「どんなに醜悪で腐った存在でも。アイツらは私たちが護らなければいけない人たちなの。コレが現実。」
錯乱の中で、彼女の置かれている立場というものをすっかり忘れていた。
「仮にでも、貴方がアイツらにその鋒を向けようなら!! 貴方はもう勇者ではなくなる。」
「キヤッ!! 」
視界が転がる。
幸い雪が積っているおかげで僕は怪我を免れた。
が、お母さんは
「安心しろ。そのトラップには毒なんて塗ってない。身体が痺れて動けなくなるぐらいだ。」
ボウガンを持った男が、サクサクとこちらにやってくる。
「アスラフィルんところの奥さんかぁ。もう年は若くねえし……だが顔が良い。今年はコイツで。」
「辞めなさいアスィール!! 逃げるのよ!! 」
アスピに手を引かれる。
「離してくれアスピ!! こんなことになるなら!! 」
「こんなことになるのならって。じゃあどうするつもりなの貴方は。」
母さんが痺れた声帯で力を声を絞り出した。
「ごめんねアスィール。貴方を売ったりして。コレは私たちの罰だから。」
母はどんどん遠ざかり、銀世界の中へと消えていく。
前方にはアスピが。
涙を流すアスピの姿が。
彼女はドライな人間なんかじゃ無い。
ただ、責任感が強いだけなのだ。
[フフフ……滑稽ねアンタは。どこまで偽善者気取ってりゃ済むのかしら。]
幻聴では無い。確かにそれは竜宮の剣から聞こえてきた。
彼女の、ドゥルガの言う通りだった。
全て彼女が正しいし、僕のことを本当に思っていてくれたのは彼女の方だ。
「お前が……お前がそんなことを言う奴だとは思わなかったァッ。」
目が熱くなって、前方が見えなくなってくる。
[いい顔ね。やっぱりお前にはその顔が似合ってるわよッ。]
「……くそくしろ。」
[なんて? 聞こえないわよ。]
「僕と約束しろよ。二度とそんなこと言わないって。」
[ええっーどうしよっかなぁー。]
[まぁいいですよ。私の柄を握って肉を斬ってくれるなら。]
[ね童貞勇者様。]
「もう良いよお前は、お前の力には頼らない。剣としての役割を果たしてくれれば。」
[元よりお前のようなイカ臭いガキには、力を貸す気なんてないですけどね。]
「泣くな馬鹿!! 伏兵がいたらどうするのよ。私たちは狙われているのよ。」
アスピの言葉で我に帰る。
そうだ。こんなところで惨めったらしく泣いている暇なんてない。
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