2 / 104
ディアストリーナ
運び屋の日常
しおりを挟む
俺は今、厄介ごとに絡まれている。
俺に問題があるとも言えるし、そうでないとも言える。
結局そういうのも、個々の主観によって変わるもんだ。そうだろ? お前はどう思う?
ことの発端は、俺がいつも通り任務を遂行し、死んだ冒険者たちを教会に送り届けたことにある。
いや、ここまでなら、そこまでおかしい話でもない。問題はコレからだ。
最寄りの教会が、冒険者のGを定価のマージン以上にふんだくる悪徳業者だったからだ。
俺も、運び屋稼業をしていて、同業者から似たような話を聞く。
俺は、まんまとその「悪徳業者」とやらに捕まったらしい。
冒険者たちのGは、彼らが死亡しているうちに、神父が半分財布から抜き取って良いということになっている。(それはそれで問題だが)
とは言っても一定の権力を持つ教会に、冒険者ギルドは口を出すことも出来ないし、神聖な神の使いに疑いをかけるなど、それでこそ、不届きモノとなってしまう。
第一に、彼らが居ないと、死んだ冒険者を生き返らせることが出来ない。
コレは諸君も知っている一般常識だと思う。
話を戻そう。
俺がもらえるわけまえは、そのうちの15パーセント。教会側が35パーセントで、俺たち運び屋が15パーセント。
命をかけることを差し引けば、良心的な、わけ前だと思う。
そりゃ勿論、俺たちは女神の加護を受けていないからな。命懸けさ。
それが75パーセントになったり80パーセントになれば、流石の冒険者も、財布が軽くなったことに気づくさ。
だが、教会が信用を失わない理由は他にもあった。
「私は見たぞ、この男が、君たちからスリをするのがな。」
この世界では、明確に職業の貴賤が存在する。
考えてみてほしい。
君たちなら、死体を運ぶ人間か、神の使いである善良な人間、どちらの言葉を信じるか。
だが、俺だって自分の生活がある。
ここは大事にならない、自分の評判を下げる程度で済むように、手加減をしなければならない。
--- 次元の腕---
別の世界のどこか、無数に存在する俺の中の一人に、腕を伸ばす。
そして掴み上げて、自分の心臓に打ちつけた。
「あたりだ。」
---疾風---
身体強化魔術、この状況にピッタリじゃないか、火の玉や、雷じゃ、殺傷能力が高すぎるからな。
冒険者のリーダーが口をあんぐりと開けている。
あまりにも世界がゆっくりと動きすぎているので、彼らの声がまだ聞こえない。
魔術師の首を絞めて気絶させ、武道家らしき男の後頭部に籠手を行う。
続くリーダー格の戦士にボディーブローをして泡を吹かせた。
最後の気弱そうな女送料だけを残す。
1番無害そうであり、実際無害だからだ。
俺は用意しておいた小型の録音スクロールを再生し、自分の無実を証明する。
神父は悪びれることなく、くすねた25000Gを彼女へ向けて放り投げた。
このエセ神父め、キサマのような外道は麻婆豆腐でも食ってろ!!
* * *
俺が金を稼ぐ理由。
それはただ一つ。
「おかえり兄ちゃん。」
俺の帰りを待つ孤児院の子供達を食わしていく為だ。
「おかえり、スーちゃん。」
俺を愛称で呼ぶのは、俺の義姉のリワン・スペース。
リワン姉ちゃんだ。
彼女はこの孤児院で、子供たちの世話をしている。
俺は袋から今日のリワードを彼女に渡した。
15000G……いつもより少ない。だが、彼女は嫌な顔をせず、俺に会釈をしてから、エクボを作ってみせた。
「明日からは少し遠くの依頼を受けに行くことになるかもしれない。2.3日明けるかも。」
「何かあったの? 」
「近くの教会で揉めちまってな。」
彼女は俯いて、それから、顔を上げると、俺の両肩をガッチリ掴んだ。
「別にスーちゃんが無理する必要も無いんだよ。商人でも……なんだったら私も働くし。」
彼女に、ガキたちを任せながら、製糸場に駆り出すわけにもいかない。
「大丈夫。俺に任せてくれ。リワン姉ちゃんは、子供達を頼むよ。」
俺が運び屋をやっている理由。
それは単に金のハブりが良かったからだ。
一度は冒険者も考えた。
だが、どうやら俺には女神の加護が宿らなかったらしい。
多分、師匠から受け継いだ、この力のせいだとギルド嬢は説明していたが……
俺にとっては金が稼げるならどうでも良い。
冒険者は冒険者で、あまり労働環境の良い仕事とも言えないしな。
何度も死を体験するなんて、常人ならすぐに気が滅入ってしまうだろう。
死に慣れている彼らこそ、本当にイカれた奴らだ。
危険を犯して棺桶を運ぶ俺たちよりな。
なぁお前らはどう思う?
「まーた難しい顔をしている。」
「すまない。湯に浸かりたい。」
「もう沸かしてあるよ。年長のガキんちょたちが帰ってくる前に、入っちゃって。」
俺に問題があるとも言えるし、そうでないとも言える。
結局そういうのも、個々の主観によって変わるもんだ。そうだろ? お前はどう思う?
ことの発端は、俺がいつも通り任務を遂行し、死んだ冒険者たちを教会に送り届けたことにある。
いや、ここまでなら、そこまでおかしい話でもない。問題はコレからだ。
最寄りの教会が、冒険者のGを定価のマージン以上にふんだくる悪徳業者だったからだ。
俺も、運び屋稼業をしていて、同業者から似たような話を聞く。
俺は、まんまとその「悪徳業者」とやらに捕まったらしい。
冒険者たちのGは、彼らが死亡しているうちに、神父が半分財布から抜き取って良いということになっている。(それはそれで問題だが)
とは言っても一定の権力を持つ教会に、冒険者ギルドは口を出すことも出来ないし、神聖な神の使いに疑いをかけるなど、それでこそ、不届きモノとなってしまう。
第一に、彼らが居ないと、死んだ冒険者を生き返らせることが出来ない。
コレは諸君も知っている一般常識だと思う。
話を戻そう。
俺がもらえるわけまえは、そのうちの15パーセント。教会側が35パーセントで、俺たち運び屋が15パーセント。
命をかけることを差し引けば、良心的な、わけ前だと思う。
そりゃ勿論、俺たちは女神の加護を受けていないからな。命懸けさ。
それが75パーセントになったり80パーセントになれば、流石の冒険者も、財布が軽くなったことに気づくさ。
だが、教会が信用を失わない理由は他にもあった。
「私は見たぞ、この男が、君たちからスリをするのがな。」
この世界では、明確に職業の貴賤が存在する。
考えてみてほしい。
君たちなら、死体を運ぶ人間か、神の使いである善良な人間、どちらの言葉を信じるか。
だが、俺だって自分の生活がある。
ここは大事にならない、自分の評判を下げる程度で済むように、手加減をしなければならない。
--- 次元の腕---
別の世界のどこか、無数に存在する俺の中の一人に、腕を伸ばす。
そして掴み上げて、自分の心臓に打ちつけた。
「あたりだ。」
---疾風---
身体強化魔術、この状況にピッタリじゃないか、火の玉や、雷じゃ、殺傷能力が高すぎるからな。
冒険者のリーダーが口をあんぐりと開けている。
あまりにも世界がゆっくりと動きすぎているので、彼らの声がまだ聞こえない。
魔術師の首を絞めて気絶させ、武道家らしき男の後頭部に籠手を行う。
続くリーダー格の戦士にボディーブローをして泡を吹かせた。
最後の気弱そうな女送料だけを残す。
1番無害そうであり、実際無害だからだ。
俺は用意しておいた小型の録音スクロールを再生し、自分の無実を証明する。
神父は悪びれることなく、くすねた25000Gを彼女へ向けて放り投げた。
このエセ神父め、キサマのような外道は麻婆豆腐でも食ってろ!!
* * *
俺が金を稼ぐ理由。
それはただ一つ。
「おかえり兄ちゃん。」
俺の帰りを待つ孤児院の子供達を食わしていく為だ。
「おかえり、スーちゃん。」
俺を愛称で呼ぶのは、俺の義姉のリワン・スペース。
リワン姉ちゃんだ。
彼女はこの孤児院で、子供たちの世話をしている。
俺は袋から今日のリワードを彼女に渡した。
15000G……いつもより少ない。だが、彼女は嫌な顔をせず、俺に会釈をしてから、エクボを作ってみせた。
「明日からは少し遠くの依頼を受けに行くことになるかもしれない。2.3日明けるかも。」
「何かあったの? 」
「近くの教会で揉めちまってな。」
彼女は俯いて、それから、顔を上げると、俺の両肩をガッチリ掴んだ。
「別にスーちゃんが無理する必要も無いんだよ。商人でも……なんだったら私も働くし。」
彼女に、ガキたちを任せながら、製糸場に駆り出すわけにもいかない。
「大丈夫。俺に任せてくれ。リワン姉ちゃんは、子供達を頼むよ。」
俺が運び屋をやっている理由。
それは単に金のハブりが良かったからだ。
一度は冒険者も考えた。
だが、どうやら俺には女神の加護が宿らなかったらしい。
多分、師匠から受け継いだ、この力のせいだとギルド嬢は説明していたが……
俺にとっては金が稼げるならどうでも良い。
冒険者は冒険者で、あまり労働環境の良い仕事とも言えないしな。
何度も死を体験するなんて、常人ならすぐに気が滅入ってしまうだろう。
死に慣れている彼らこそ、本当にイカれた奴らだ。
危険を犯して棺桶を運ぶ俺たちよりな。
なぁお前らはどう思う?
「まーた難しい顔をしている。」
「すまない。湯に浸かりたい。」
「もう沸かしてあるよ。年長のガキんちょたちが帰ってくる前に、入っちゃって。」
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
三日天下の聖女です!
あんど もあ
ファンタジー
平凡なアルファパレス好き女子高生の私は、いきなり異世界に聖女として召喚されてしまった。でも、明後日に瘴気を浄化する神事をやってくれたら元の場所・時間に戻してくれると言うのでちょっと安心。なら三日間、立派な聖女になりましょう! ……でも、私が邪魔な人がいるようで……。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」
イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。
ある日、夢をみた。
この国の未来を。
それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。
彼は言う。
愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
婚約破棄は構いませんが、私が管理していたものは全て引き上げます 〜成金伯爵家令嬢は、もう都合のいい婚約者ではありません〜
藤原遊
ファンタジー
成金と揶揄される伯爵家の令嬢である私は、
名門だが実情はジリ貧な公爵家の令息と婚約していた。
公爵家の財政管理、契約、商会との折衝――
そのすべてを私が担っていたにもかかわらず、
彼は隣国の王女と結ばれることになったと言い出す。
「まあ素敵。では、私たちは円満に婚約解消ですね」
そう思っていたのに、返ってきたのは
「婚約破棄だ。君の不出来が原因だ」という言葉だった。
……はぁ?
有責で婚約破棄されるのなら、
私が“善意で管理していたもの”を引き上げるのは当然でしょう。
資金も、契約も、人脈も――すべて。
成金伯爵家令嬢は、
もう都合のいい婚約者ではありません。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる