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人間はクソだ。
(両腕はロープでガッチリ結ばれている)
世界もクソだ。
(僕を縛ったロープは鈍色の兵士に繋がれており、そのロープを彼が強引に引く)
僕は世界に選ばれた。
(一人の子供が僕に石を投げた)
だからこそ処刑されなければならなかった。
(大人たちから罵声が聞こえる)
それが世界のルールだから。
(僕が生きた十一年とはなんだったのだろうか?)
もう手足に感覚は無かった。
(永遠に続く民衆の道を進みながら)
ようやく、僕を殺すための道具が姿を現す。
(つい最近まで良くしてくれた、おばさんも)
手足を丈夫な丸太に、張り付けられて。
(お菓子をくれたおじさんも)
僕の足元の薪に火がつけられる。
(みんな僕を憎悪している)
熱い? のかな? 足が麻痺しているから分からない。
(それがせめてモノ救いだった)
だんだん火の手が上がってくる。
(下半身まで上がって来た時、急に激痛が走り出した)
「ンーッ!!ンーッ!! 」
(痛くて、苦しくて、煙のせいでうまく息ができない)
慌てた魔道士が、僕の顔に空気の膜を作った。
(僕に情けを掛けているわけではない)
僕は慌てて息を吹き返すが、今度は腹部にまで上がって来た激痛に身を悶える。
(できるだけ苦しめて殺すためだ)
無我夢中で下半身を動かそうとするが、もう身体は言うことを聞かなかった。
(香ばしい肉の焼ける臭い)
僕の下半身だったモノが崩れ落ちる。
(気を失いそうになった僕を、魔導士が叩き起こす)
嗅覚が薄れていく。
(再び呪文)
感覚も徐々に薄れていった。
(再び呪文)
熱いのに寒い。
(再び呪文)
もう何も見えない。
(再び呪文)
最後に聴覚が残った。
(優しかったみんなの罵声)
・
・
・
「---目が覚めたか? 勇者? 」
(___僕は生きていた)
「おかしいな? ちゃんと蘇生して、喋れるようにはしたはずなのだが。」
(ここはどこだ? )
「エスカリーナ様。勇者様は混乱されているのです。みな、あなた様とは違い、心を持っていらっしゃるのです。」
(ツノ? 悪魔? )
「相変わらず、言葉がキツイなお前は。」
(召使らしき女は、首を振った)
「ええ、当然です。貴方は親殺しですから。」
(彼女は苦虫を噛んだような顔をしながら床のタイルを見ている)
「なんだ? 私の父から暴行を受けているお前を救ってやったんじゃないか? 私はお前の命の恩人だぞ。」
(女が僕を抱き上げる)
「心か、失ってしまったのなら、また与えれば良い。」
(彼女が僕を見下ろした)
「なぁ勇者? 私と、この世界を統べないか? 」
(人間はクソだ)
「お前が望むのなら」
(世界はクソだ)
「せかいのはんぶんを おまえにやろう。」
(この女性だけが、僕を必要としてくれた)
(両腕はロープでガッチリ結ばれている)
世界もクソだ。
(僕を縛ったロープは鈍色の兵士に繋がれており、そのロープを彼が強引に引く)
僕は世界に選ばれた。
(一人の子供が僕に石を投げた)
だからこそ処刑されなければならなかった。
(大人たちから罵声が聞こえる)
それが世界のルールだから。
(僕が生きた十一年とはなんだったのだろうか?)
もう手足に感覚は無かった。
(永遠に続く民衆の道を進みながら)
ようやく、僕を殺すための道具が姿を現す。
(つい最近まで良くしてくれた、おばさんも)
手足を丈夫な丸太に、張り付けられて。
(お菓子をくれたおじさんも)
僕の足元の薪に火がつけられる。
(みんな僕を憎悪している)
熱い? のかな? 足が麻痺しているから分からない。
(それがせめてモノ救いだった)
だんだん火の手が上がってくる。
(下半身まで上がって来た時、急に激痛が走り出した)
「ンーッ!!ンーッ!! 」
(痛くて、苦しくて、煙のせいでうまく息ができない)
慌てた魔道士が、僕の顔に空気の膜を作った。
(僕に情けを掛けているわけではない)
僕は慌てて息を吹き返すが、今度は腹部にまで上がって来た激痛に身を悶える。
(できるだけ苦しめて殺すためだ)
無我夢中で下半身を動かそうとするが、もう身体は言うことを聞かなかった。
(香ばしい肉の焼ける臭い)
僕の下半身だったモノが崩れ落ちる。
(気を失いそうになった僕を、魔導士が叩き起こす)
嗅覚が薄れていく。
(再び呪文)
感覚も徐々に薄れていった。
(再び呪文)
熱いのに寒い。
(再び呪文)
もう何も見えない。
(再び呪文)
最後に聴覚が残った。
(優しかったみんなの罵声)
・
・
・
「---目が覚めたか? 勇者? 」
(___僕は生きていた)
「おかしいな? ちゃんと蘇生して、喋れるようにはしたはずなのだが。」
(ここはどこだ? )
「エスカリーナ様。勇者様は混乱されているのです。みな、あなた様とは違い、心を持っていらっしゃるのです。」
(ツノ? 悪魔? )
「相変わらず、言葉がキツイなお前は。」
(召使らしき女は、首を振った)
「ええ、当然です。貴方は親殺しですから。」
(彼女は苦虫を噛んだような顔をしながら床のタイルを見ている)
「なんだ? 私の父から暴行を受けているお前を救ってやったんじゃないか? 私はお前の命の恩人だぞ。」
(女が僕を抱き上げる)
「心か、失ってしまったのなら、また与えれば良い。」
(彼女が僕を見下ろした)
「なぁ勇者? 私と、この世界を統べないか? 」
(人間はクソだ)
「お前が望むのなら」
(世界はクソだ)
「せかいのはんぶんを おまえにやろう。」
(この女性だけが、僕を必要としてくれた)
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