男装の麗人と呼ばれる俺は正真正銘の男なのだが~双子の姉のせいでややこしい事態になっている~

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3章 妄想のなかの、理想の王子様

3-17 第二王子の誘い7 ◆イーティ視点◆

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◆イーティ視点◆

「コレはひどいな」

 今までの感想。

 バーレイ侯爵家の馬車で、ハニーは王都の貴族学校の寮へ戻っていった。
 別に寮で何をするわけでもないのに。
 悪意にまみれた報告をされたからといって、意味ないことをハニーに命令できるバーレイ侯爵の頭の中は大丈夫か?
 第二王子と話してもらいたくないといっても、ハニーが決めたことに横槍を入れるなんてひどいだろ。
 子供の自主性をなんと心得る。
 彼はもう十四歳。ウィト王国でも十五歳で成人だ。
 この命令にも何の報酬も用意されていない。
 侯爵家が彼に正当な報酬を用意できないのなら、騎士学校卒業後の就職先は自分で選択できるようになる。
 彼はバーレイ侯爵の跡継ぎではないから。
 それが慣例であろうとも、ウィト王国の騎士にならなくたっていいのだ。


 壁に映像化してくれたリアルタイムでの状況を見ていて、魔法で映していたサイ・モルトも一緒に見ていたスレイ・フラワーも声を失ってしまった。
 重い沈黙がこの部屋を支配している。
 第二王子がハニーに何をするのか、を見る会ではなくなってしまった。

 ネオ第二王子はハニーに対して懺悔と決意表明をしたかっただけのようだ。
 淡い恋心とかそんな雰囲気ではなかったな。
 一泊二日の旅行にしなくとも、と思ったが、邪魔を入れたくないという気持ちはわかる。
 第二王子の願いとは裏腹に邪魔が入って、早めに行動していて良かったね、と言わざる得ないが。

 完全に予想できていたことかもしれないが。

 しっかし、魔法って便利だね、ホント。
 俺はそこまで高度な魔法は使えないからなあ。
 帝国では第一皇子でも、というよりも皇子の身分では宮廷魔導士を動かせなかった。皇帝の承諾が必ず必要だったため、魔導士を自由にできなかった。
 お金で雇える市井の魔導士の実力は帝国ではたかが知れた。
 最強の盾には遠く及ばないが人外魔境とさえ言われる皇帝の影は第六皇子についていたし、そもそも第六皇子は魔法の腕が宮廷魔導士より上だ。
 本当に必要なところに人が回らない。
 魔法で集める以上の精度の情報を、私は人海戦術で集めなければならなかったのだ。


 で、実はこの撮影の許可は、王妹マイア様にすでに取っている。
 さすがに王族の別邸。許可がなければ、このような魔法は感知されてしまう。
 マイア様から第二王子に伝えているかは、、、本人の自由である。
 サイ・モルトが自ら協力してくれなければ、この地で雇った魔導士たちで何とかしようと目論んでいたが、ありがたいことだ。魔導士たちは別の仕事を割り振ることができた。

「さあーって、諸君ら。ここでのんびりしていても始まらないが、キミたちはどうする?」

 ソファから立ち上がって、二人に尋ねた。

「、、、そういうアンタはどうするんだ?」

 あ、やさぐれている。
 この二人はまだまだ若い。
 私はプランBに行動変更だ。

「私はイー商会の商会長として、王族の別邸にご挨拶に行くよ」

 扉を開けると、先程の従業員が鞄を持って立っている。

「馬車の準備はできております」

「ありがとう。さて、キミたちはどうする?」

 私は振り返った。




「、、、貴方が訪ねて来るとは。出発する前に叔母上が意味深に笑っていたから、そういうことか」

 いや、マイア様が意味深に笑っていたのは、後で報告が来ると知っていたからじゃないでしょうか。
 私は時間を無駄にできない性分なので。
 後ろには鞄を持っている従業員と、サイ・モルト、スレイ・フラワーがいる。

「ご存じのようだが、私はウィト王国の第二王子ネオだ」

「私はイー商会の商会長イーティ・ランサスと申します。以後よろしくお願いします」

「それ。」

「どれ?」

「その、ランサスという姓は偽名なのか?わざわざ偽名にしているのに帝国の第一皇子を同じ名前はつけないだろうというところで見逃されたところもあるが、魔法でも感知されなかった」

「本名ですよ。公になっていないことですが、我々帝国の皇子は元々二つの姓を名乗っております。第六皇子も然り」

「、、、跡継ぎにならない皇子を逃がす気もないのに殊勝なことだ」

「本当にそうですよねー」

 軽い口調で答えたら、嫌そうな顔をされた。
 人間味溢れる王子だ。感情を顔に出すなんて。
 ハニーにとらわれているのだから、当たり前か。人間の情がなければ、バーレイ侯爵に追随するだけだ。

「ネオ王子殿下におかれましては、ご婚約おめでとうございます。婚約者に贈り物をされるとお聞きしまして、こちらで取り扱っている選りすぐりの品物をお持ち致しました」

 視線を送ると従業員がテーブルに鞄を広げる。

「あー、ホントにイー商会って怖いよね。兄のときもすぐに営業員がおススメに来てたよねー。何かある度ごとに、これぞという品物を持ってくるよねー、キミら」

「信頼と実績の証でございます」

 恭しくお辞儀をしても、嫌そうな顔をされる。
 情報戦には強い商会と育て上げた。

 はあーーーっ、と深いため息を吐いた後、ネオ王子は品物を見始める。

「ねえ、最強の盾を帝国に連れ帰る気?」

「本人の意志で来てくれるのなら、望外の喜びでしょうね」

「、、、その話術で丸め込むクセに」

「私の全身全霊をもって、ハニーを幸せにしますからね」

「何でこんなにも胡散臭い笑顔なのに、、、」

 ギリギリギリと奥歯を噛みしめている。
 婚約者への贈り物を見ている顔じゃないぞー。

「、、、まあ、でも、この国にいる貴方がたよりは幸せにできると思いますが。私はようやく自由も手に入れましたので」

 ネオ王子の手がとまった。

「バーレイ侯爵に貴方の正体を明かす」

「それでどうなると?」

「バーレイ侯爵に貴方とオルトとの婚約を解消してもらう」

 私は少々沈黙を返す。

「それはできなくはないですし、悪くない手だとも思いますが、私は他国の人間ですよ。バーレイ侯爵家からの婚約解消は契約通りに多額の違約金を発生させますし、もちろん請求いたします。バーレイ侯爵が払えますかね?」

 ニヤリと笑う。
 恐ろしいほどの多額の違約金は、バーレイ侯爵も契約書を見たはずだ。
 夫人とオルレアのためにバーレイ侯爵に贈った宝飾品がこれほどまでに目をくらますとは思ってもみなかったが。

 隣にいた夫人が大歓喜して、婚約に大賛成してくれた。
 昔から付き合いのあるイー商会の商会長なら大丈夫よー、と太鼓判まで押して。
 どこが大丈夫なのか、不思議だったな。
 高額な宝飾品をポンっとプレゼントするなんて、絶対おかしい、下心があると思うだろう、普通。

 バーレイ侯爵の権力はウィト王国内のものだ。限定品だ。
 最強の剣と最強の盾なしではこの国は回らない。
 違約金なんか払うかっ、と相手が国内の貴族なら、バーレイ侯爵は踏み潰せるものだ。

 だ・け・ど、最強の剣と最強の盾に守られていない他国の者には、バーレイ侯爵の圧力なんて関係ない。
 お前の領地だけを守ってやらないぞ、という脅しは全然効かない。

 商会に向ける伝家の宝刀、この国で商売させてやらんぞ、というのは、もう目的は果たしたので特に問題ない。
 反対にそんなことをしたら、イー商会が撤退すると困ることになるのはお前たちの方だよー、と教えてあげたいが、そこまで親切でもないので素直に撤退するだけだ。

 ついでに言うと、婚約は魔法による契約書にしておいてやった。
 簡単には婚約解消させてやらないので。

「国が肩代わりしますか?」

 第二王子が決められることではない。
 第二王子の自由になるお金では全然足りないだろう。
 違約金はこの国の国家予算を遥かに超える金額なのだから。
 ウィト王国は小国で平和な国だから一年の国家予算を超えるんだけどね。

 軍事国家の広大な帝国じゃ、あっという間になくなる金額だよ。
 ここでは言わないけど。

「くっ、私の一存では決められない。けれど、両親を必ず説得する」

 顔を歪めて本当に悔しそうに言うので、私も鬼ではない。
 ヒントをあげようではないか。

「ただし、一つだけバーレイ侯爵には逃げ道がありますよ」

「逃げ道?」

「ハニーとの結婚の時期によっては、バーレイ侯爵は代替わりしている可能性もあり、そのときは次期バーレイ侯爵の判断を仰ぐことになっております」

 私が笑顔で教えたのに、ネオ王子がさらに顔を歪めた。
 おや?
 この国の者なら喜ぶところじゃないのかな?
 この文章の真意自体は理解しているようだけど。

「怖いな。これが帝国の第一皇子か。。。しかし、なぜ貴方がここまでする?」

「それはもちろん、ハニーの幸せを第一に考えていますからね」

「あのブラコン最強の剣が、貴方とオルト殿の結婚を素直に喜ぶとお考えか?」

「そのときはハニーを説得して駆け落ちしますっ」

 恋愛結婚なら問題なしっ。
 成人してしまえば問題ないしー、ハニーが侯爵家から報酬をもらっているわけでもないしー、ハニーが侯爵家と縁が切られても私が喜ぶだけだしー。
 ただ最強の剣と武力衝突したら、私が完全に負けるので逃げに徹することにするけど。

 帝国の皇帝から逃げるための手段を活かす可能性がまだまだあるとは。
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