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3章 妄想のなかの、理想の王子様
3-8 帝国の皇子5
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学校の休日に王城で行われた小さな三人だけのお茶会は恙なく終わった。
俺の衣装をマイア様とソニア嬢で悩み、服飾職人の意見を加えたという打ち合わせのようだったが。
王子様衣装って何が正解なんだろう。
現実の王子も皇子もこの頃よく見ているが、令嬢たちの理想の王子様とは違うというのはわかる。
令嬢たちは理想と現実の線引きをキッチリしているのだ。
現実の王子たちが理想と程遠くとも、擦り寄る相手だと怖いほど認識している。
王城でソニア嬢を見送った後マイア様に引き摺られて、イーティ第一皇子ともお茶をすることになった。
この部屋にはマイア様と、なぜかキュジオ隊長とバロン副隊長の二人もいる。第三王子を守るはずのキュジオ隊長とバロン副隊長はマイア様の護衛としているようだが、王妹に逆らえる臣下はいない。
休日なので、第三王子も王城にいるから彼らも暇だったのだろうと思いたい。
「この場が設けられたということは、オルト殿とお呼びしてもよろしいのですか?」
あの場では濁してくれたが、イーティ皇子には普通にバレている。
俺がオルレアだという先入観がなければ、女性としては見れないってことかな?
男が男の制服着ていたら、そりゃ男にしか見えないよね。
今後、気をつけよう。何を、と言われても困るけど。
「イーティ殿下、どこに誰の目があるかわかりませんので、オルレアのときはオルレアと」
マイア様が言ってくれた。
うん、バレたら怖いもんねえ。主に女子生徒とその親に。男が女子寮にいるってわかったらどうなることか。
「そうですか。では、心のなかで愛しい者の名を呼ぶことにしましょう」
イーティ皇子の言葉にスッと表情が死んだのは、キュジオ隊長。
まあ、気持ちはわかるけど。
言われたのが俺だからな。
「、、、そういや、皇子たちには婚約者はいないのですか?」
と言ったところで、皇帝は一夫多妻制だったことを思い出した。
「全員いないよ。跡継ぎ以外の皇子は全員死ぬから、跡継ぎと決まってから婚約者も決定される。というか、有力な家は送り出す令嬢を用意して、跡継ぎが決まるのを待ち構えているからねえ。決まる前から、有力な跡継ぎ候補者には令嬢たちの圧力がかなり強いけど」
「はあ、そうなのですか」
「第六皇子にはハニトラを仕掛ける家も多かったから、巨乳好きだしね。オルレア殿は私にしておいた方が良いと思うよ」
皇帝になればすべてを妻にすることができるから、幾人もの女性と関係を持っても何の問題もないのか。
ただ、誰が正妃になるかでもめるのだろう。
「アルティ皇子殿下はともかく、イーティ皇子殿下は俺のことをわかっていてそういうことを言うのですか」
「わかっていないのに言う第六皇子の想いの方が私にはわからないんだが」
反対に、俺が女性のオルレアだと思っているからこその言葉なんじゃないですか?
巨乳好きが男に嫁になれとは口が裂けても言わないでしょう。
イーティ皇子は俺がオルトとわかった上で言っているということは、最強の盾を帝国に持ち帰りたいというルイジィの意志と同じだ。
愛の言葉で囁く方が効果があると思っているのだろうか。
主従関係より、結婚した方が法で縛れるのは確かだが。
「オルレア殿、皇帝になれない私は複数の妻を娶らない。この意味をわかってくれると嬉しいのだが」
にこやかーんに甘く微笑むイーティ皇子は、アルティ皇子より様々な顔を使い分けることができると見た。
アルティ皇子は文字通り魔法で様々な顔になれるが、そういうことではない。
正妃である実の母親に消されないための対策か。
第一皇子であっても苦労していたんだろう。
バカの顔しか演じられないアルティ皇子とは違うな。
「ああ、なぜマイア様がこの席を設けたのかようやくわかりました。勘違いし続けているアルティ皇子を勘違いさせ続けるための席なんですね」
「あら、オルレア、気づかない者にわざわざ言ってあげる必要はないわよ、面白いから」
マイア様が怖い。
自分の娯楽のためだけに、帝国の皇帝跡継ぎを笑いものにしようとしている。。。
黒歴史になるだろうな。
いや、黒歴史にはならないのか?
正体を知らなかったとしても最強の盾を帝国にスカウトしていたことは帝国の民にとっては評価に値する出来事だ。
雇用関係だと契約に縛られるが、契約は解除することができてしまう。
ま、結婚も離婚することができてしまうが、最強の盾を手に入れたら離婚することはないし、無下には扱わないだろう。
そうなると、皇帝が最強の盾と結婚した方が良いように思えるのだが。
皇帝は他の女性とも結婚できる。
俺だけを相手にしなくても良い。
というより、相手が同性の俺ではどうやっても跡継ぎができない。
「皇帝の相手が最強の盾であれば、蔑ろにはされない。けれど、知っていると思うが、帝国の皇妃たちの争いはこの国のものよりも幾倍もおぞましいものだ。オルレア殿、貴方が第六皇子に心底惚れているのでなければ、私と結婚した方がより良い関係を築けると思うが」
イーティ皇子が俺の手を取った。
イーティ皇子も必死だな。。。
跡継ぎ争いに負けた皇子でも、最強の盾と結婚していたら帝国も殺すわけにもいかなくなる。
しかも、男同士なら子供は生まれない。
「ちょーーーっと待ったあぁーーっ」
扉が勢いよく開いた。
部屋に飛び込んできたのは我が国の第三王子だ。後ろには護衛たちがついている。
「クオ王子殿下、」
「オルレアっ、今、求婚されてなかったっ?」
最後の部分だけ聞こえたのかな?
この部屋の壁、薄いのかな。王城でも内緒話するときは魔法が必須だな、こりゃ。
「あー、そのようですねえ」
「何でそんなに他人事のように言うんだっ。帝国に嫁に行く気かっ」
「バーレイ侯爵がそう命令するなら」
「そんなの、バーレイ侯爵も国も許すわけがないだろっ」
いや、あのバーレイ侯爵はオルレアなら溺愛しているが、俺はどうでもいいからなあ。
この皇子はきちんと俺と認識しているし、この国には俺に用意できる爵位もないし、最強の剣はこの国にいるし、俺自身は最強の盾としては落ちこぼれだし、本当にどうでもいいんじゃないか?
しかも、男性同士なら子供は生まれない。
おや、バーレイ侯爵家でも同性婚は有効な手札になりそうだ。
バーレイ伯爵は子供が産まれてしまったから問題だったわけだし。
「ほほーう、落とすべきはまず父親なのか。なるほど」
「家の命令が出てしまえば、結婚にも本人の意志は関係ないですからねえ」
今のオルレアに扮しなければならない状況も、バーレイ侯爵の絶対的な命令だ。
俺の意志など簡単に踏み潰される。まだドレスを着て女装しなかっただけマシだと思うが。
俺を見るイーティ皇子の目が細くなる。
「、、、それは。うーん、できれば、本人の意志も尊重したいところだけど。ライバルが多そうだし、なりふり構っていられないかな。オルレア殿、私と結婚すれば、生涯大切にすると誓うよ」
と言って、イーティ皇子は俺の手に口づけをした。手袋越しだが。
手を取られたままだったな、そういえば。
「何をやっているっ。令嬢に承諾もなしに触れるとはやってはならぬことだっ」
クオ王子が怒っている。
触れると言っても直接は触っていないんだけどね。
これぐらいでも王子にはオルレアがふしだらに見えてしまうのかな?別に不特定多数と関係を持っているわけでもないのに。
ただ、クオ王子からバーレイ侯爵に苦情を言われてしまうとすべてが面倒だ。
アイツはオルレアの評判が下がることをものすごく嫌がる。
「大変申し訳ございません、クオ王子殿下。イーティ皇子殿下も見知らぬ土地で男性の格好をした私に気安い態度を取り易かったのでしょう。王子同士なら話が通ずることも多いと思います。帝国の皇子たちに気安く話せる人間関係を我が国の王子たちが構築していただければ幸いです」
「え、えっと、その、オルレア」
なぜか慌てたのはクオ王子。
イーティ皇子はにこやかスマイルのままだ。
おそらく、イーティ皇子にはクオ王子がオルレアに扮しているのが俺だということをわかっていないと伝わってしまったのだ。
「私も結婚を申し込むっ」
「バーレイ侯爵へお願いします」
間髪入れずに答えておいた。
俺の衣装をマイア様とソニア嬢で悩み、服飾職人の意見を加えたという打ち合わせのようだったが。
王子様衣装って何が正解なんだろう。
現実の王子も皇子もこの頃よく見ているが、令嬢たちの理想の王子様とは違うというのはわかる。
令嬢たちは理想と現実の線引きをキッチリしているのだ。
現実の王子たちが理想と程遠くとも、擦り寄る相手だと怖いほど認識している。
王城でソニア嬢を見送った後マイア様に引き摺られて、イーティ第一皇子ともお茶をすることになった。
この部屋にはマイア様と、なぜかキュジオ隊長とバロン副隊長の二人もいる。第三王子を守るはずのキュジオ隊長とバロン副隊長はマイア様の護衛としているようだが、王妹に逆らえる臣下はいない。
休日なので、第三王子も王城にいるから彼らも暇だったのだろうと思いたい。
「この場が設けられたということは、オルト殿とお呼びしてもよろしいのですか?」
あの場では濁してくれたが、イーティ皇子には普通にバレている。
俺がオルレアだという先入観がなければ、女性としては見れないってことかな?
男が男の制服着ていたら、そりゃ男にしか見えないよね。
今後、気をつけよう。何を、と言われても困るけど。
「イーティ殿下、どこに誰の目があるかわかりませんので、オルレアのときはオルレアと」
マイア様が言ってくれた。
うん、バレたら怖いもんねえ。主に女子生徒とその親に。男が女子寮にいるってわかったらどうなることか。
「そうですか。では、心のなかで愛しい者の名を呼ぶことにしましょう」
イーティ皇子の言葉にスッと表情が死んだのは、キュジオ隊長。
まあ、気持ちはわかるけど。
言われたのが俺だからな。
「、、、そういや、皇子たちには婚約者はいないのですか?」
と言ったところで、皇帝は一夫多妻制だったことを思い出した。
「全員いないよ。跡継ぎ以外の皇子は全員死ぬから、跡継ぎと決まってから婚約者も決定される。というか、有力な家は送り出す令嬢を用意して、跡継ぎが決まるのを待ち構えているからねえ。決まる前から、有力な跡継ぎ候補者には令嬢たちの圧力がかなり強いけど」
「はあ、そうなのですか」
「第六皇子にはハニトラを仕掛ける家も多かったから、巨乳好きだしね。オルレア殿は私にしておいた方が良いと思うよ」
皇帝になればすべてを妻にすることができるから、幾人もの女性と関係を持っても何の問題もないのか。
ただ、誰が正妃になるかでもめるのだろう。
「アルティ皇子殿下はともかく、イーティ皇子殿下は俺のことをわかっていてそういうことを言うのですか」
「わかっていないのに言う第六皇子の想いの方が私にはわからないんだが」
反対に、俺が女性のオルレアだと思っているからこその言葉なんじゃないですか?
巨乳好きが男に嫁になれとは口が裂けても言わないでしょう。
イーティ皇子は俺がオルトとわかった上で言っているということは、最強の盾を帝国に持ち帰りたいというルイジィの意志と同じだ。
愛の言葉で囁く方が効果があると思っているのだろうか。
主従関係より、結婚した方が法で縛れるのは確かだが。
「オルレア殿、皇帝になれない私は複数の妻を娶らない。この意味をわかってくれると嬉しいのだが」
にこやかーんに甘く微笑むイーティ皇子は、アルティ皇子より様々な顔を使い分けることができると見た。
アルティ皇子は文字通り魔法で様々な顔になれるが、そういうことではない。
正妃である実の母親に消されないための対策か。
第一皇子であっても苦労していたんだろう。
バカの顔しか演じられないアルティ皇子とは違うな。
「ああ、なぜマイア様がこの席を設けたのかようやくわかりました。勘違いし続けているアルティ皇子を勘違いさせ続けるための席なんですね」
「あら、オルレア、気づかない者にわざわざ言ってあげる必要はないわよ、面白いから」
マイア様が怖い。
自分の娯楽のためだけに、帝国の皇帝跡継ぎを笑いものにしようとしている。。。
黒歴史になるだろうな。
いや、黒歴史にはならないのか?
正体を知らなかったとしても最強の盾を帝国にスカウトしていたことは帝国の民にとっては評価に値する出来事だ。
雇用関係だと契約に縛られるが、契約は解除することができてしまう。
ま、結婚も離婚することができてしまうが、最強の盾を手に入れたら離婚することはないし、無下には扱わないだろう。
そうなると、皇帝が最強の盾と結婚した方が良いように思えるのだが。
皇帝は他の女性とも結婚できる。
俺だけを相手にしなくても良い。
というより、相手が同性の俺ではどうやっても跡継ぎができない。
「皇帝の相手が最強の盾であれば、蔑ろにはされない。けれど、知っていると思うが、帝国の皇妃たちの争いはこの国のものよりも幾倍もおぞましいものだ。オルレア殿、貴方が第六皇子に心底惚れているのでなければ、私と結婚した方がより良い関係を築けると思うが」
イーティ皇子が俺の手を取った。
イーティ皇子も必死だな。。。
跡継ぎ争いに負けた皇子でも、最強の盾と結婚していたら帝国も殺すわけにもいかなくなる。
しかも、男同士なら子供は生まれない。
「ちょーーーっと待ったあぁーーっ」
扉が勢いよく開いた。
部屋に飛び込んできたのは我が国の第三王子だ。後ろには護衛たちがついている。
「クオ王子殿下、」
「オルレアっ、今、求婚されてなかったっ?」
最後の部分だけ聞こえたのかな?
この部屋の壁、薄いのかな。王城でも内緒話するときは魔法が必須だな、こりゃ。
「あー、そのようですねえ」
「何でそんなに他人事のように言うんだっ。帝国に嫁に行く気かっ」
「バーレイ侯爵がそう命令するなら」
「そんなの、バーレイ侯爵も国も許すわけがないだろっ」
いや、あのバーレイ侯爵はオルレアなら溺愛しているが、俺はどうでもいいからなあ。
この皇子はきちんと俺と認識しているし、この国には俺に用意できる爵位もないし、最強の剣はこの国にいるし、俺自身は最強の盾としては落ちこぼれだし、本当にどうでもいいんじゃないか?
しかも、男性同士なら子供は生まれない。
おや、バーレイ侯爵家でも同性婚は有効な手札になりそうだ。
バーレイ伯爵は子供が産まれてしまったから問題だったわけだし。
「ほほーう、落とすべきはまず父親なのか。なるほど」
「家の命令が出てしまえば、結婚にも本人の意志は関係ないですからねえ」
今のオルレアに扮しなければならない状況も、バーレイ侯爵の絶対的な命令だ。
俺の意志など簡単に踏み潰される。まだドレスを着て女装しなかっただけマシだと思うが。
俺を見るイーティ皇子の目が細くなる。
「、、、それは。うーん、できれば、本人の意志も尊重したいところだけど。ライバルが多そうだし、なりふり構っていられないかな。オルレア殿、私と結婚すれば、生涯大切にすると誓うよ」
と言って、イーティ皇子は俺の手に口づけをした。手袋越しだが。
手を取られたままだったな、そういえば。
「何をやっているっ。令嬢に承諾もなしに触れるとはやってはならぬことだっ」
クオ王子が怒っている。
触れると言っても直接は触っていないんだけどね。
これぐらいでも王子にはオルレアがふしだらに見えてしまうのかな?別に不特定多数と関係を持っているわけでもないのに。
ただ、クオ王子からバーレイ侯爵に苦情を言われてしまうとすべてが面倒だ。
アイツはオルレアの評判が下がることをものすごく嫌がる。
「大変申し訳ございません、クオ王子殿下。イーティ皇子殿下も見知らぬ土地で男性の格好をした私に気安い態度を取り易かったのでしょう。王子同士なら話が通ずることも多いと思います。帝国の皇子たちに気安く話せる人間関係を我が国の王子たちが構築していただければ幸いです」
「え、えっと、その、オルレア」
なぜか慌てたのはクオ王子。
イーティ皇子はにこやかスマイルのままだ。
おそらく、イーティ皇子にはクオ王子がオルレアに扮しているのが俺だということをわかっていないと伝わってしまったのだ。
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