復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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16.復讐の終わり

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 私と皇丞は、夫婦になった。

 皇丞のご両親は快く私を迎えてくれた。

 お義母さまからは「皇丞をよろしくお願いします」と言われ、お義父さまからは「寿々音と私のこともよろしくお願いします」と言われた。

 それから、くれぐれも順序を守るように、とも。

 皇丞が「そのためにもこの後すぐに婚姻届を提出する」と言って、記入済みの婚姻届を広げると、お義父さまはすんなり書いてくれた。

 そして、すぐに提出しに行くようにと追い立てられた。

 その理由を聞かされたのは、区役所の帰り道。

「父さん、母さんに逃げられたくなくて妊娠させたんだ」

「……は?」

 皇丞は、ご機嫌でハンドルを握っているが、話す内容は全くご機嫌ではない。

「父さんに政略結婚の話が持ち上がって、母さんは父さんと会社のために身を引こうとした」

 それは、前に聞いた。

「でも、母さんを手放したくなかった父さんは、子供ができたら母さんが観念して結婚してくれると踏んだ」

「や、でも、すぐに子供ができるかなんて――」

「――『最後の思い出作りに、一ヵ月だけ一緒に暮らしてほしい』」

「……?」

「そう言って母さんを軟禁して、孕ませた」

「軟禁……?」

 犯罪まがいの表現に、目を瞬かせる。

「まぁ、実際には母さんの意思で出て行けたんだろけどな」

「それ、誰から聞いたの?」

「二人が喧嘩してる時にそう言ってた。衝撃だったな。思春期真っ只中の中学二年の秋だった……」

 確かに、衝撃的だ。

「ちょっと待って。じゃあ、さっき順序を守れって言ってたのは?」

「フライングすると一生尻に敷かれるぞっていう、アドバイス? 的な意味」

 お義父さまの計略は功を奏したのだろう。

 お義母さまは皇丞を身籠り、お義父さまと結婚した。

「ま、経緯がどうであれ、父さんは母さんに頭が上がらないんだよ。子育てに追われて自分が構ってもらえないのが嫌だって、俺に兄弟を作ろうとしなかったくらいだから」

 この話を、お義父さまのお義母さまへの愛の深さに感動すべきか、一歩違えば皇丞は犯罪の末に生まれた子だったと恐怖すべきか、迷う。

「あ、心配するなよ? 母さんだって気づいてたに決まってるし。梓だってわかるだろ?」

 確かに、避妊せずにセックスして気づかないことはない。

 ならば、お義父さまの策に嵌まったと見せかけて、主導権はお義母さまにあったのか。

「俺は、梓が望むだけ子供を産んでほしいと思ってる」

「望むだけ……って」

「父さんと違ってベビーシッターなり家事代行なりを使って、梓との時間も作るし」

 やはり、親子だ。

 皇丞の性格は、間違いなくご両親に似ている。

 皇丞を相手に主導権を握る自信はないが、最初から弱気ではいけない。

 私はふぅっと肩を上下させて息を吐いた。

「子供の前に結婚式じゃない? 順序を間違えたら、うちのお父さんにぶった切られるわよ?」

 彼がグッと息をつめたのがわかった。
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