復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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15.罠の真相

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「そもそも、寿々音さんはどうして怒ってるんですか?」

「ん? ああ。社長が梓ちゃんを社長室に呼んだことがバレたんだ」



 バレた……っつーか、お前が言ったんだろうが。



「脅しだと思われて皇丞がフラれたら社長のせいだと、ね」

「脅しだなんて思ってませんよ!?」

「寿々音さんにしてみたら、皇丞に恋人がいることを知っていながら自分に黙っていたことの方が許せないんだろうね」

「はぁ……」

 第三者の口から聞かされる両親については、いい年をしてバカップルの上に親バカだ。

 三十も半ばの息子の恋愛に勝手に首を突っ込んで、勝手に夫婦げんかしていたら世話ない。

「今日はまぁ仕方がないとしても、明日は大事な会議と会食が入ってるんだ。あんなへっぽこぶりじゃあ、話にならない」

 秘書のくせに随分な物言いだが、父さんが俵に助けられているのは事実だ。

 さすがに、俺の両親について息子の俺より詳しいのは複雑だが。

「でも、私が言ったところで効果あります?」

「あるよ。寿々音さんは梓ちゃんをかなり気に入ったみたい。『皇丞がフラれても、お友達付き合いしてくれるかしら』とか言ってたくらい」

「あはは……」

 梓同様、俺も乾いた笑みを浮かべてしまう。

「じゃあ、ひとつ質問に答えてくれたら」

「あれ。気を利かせて皇丞の着替えを持って来てあげた俺に、交換条件とか出しちゃう?」



 俵の奴、梓に気を許し過ぎじゃないか!?



 学生時代の俵、会社での俵、俺や欣吾と一緒にいる時の俵、女といる時の俵はみんな違う。

 多重人格かというほど、完璧に使い分けている。

 今、梓と話している俵は、俺や欣吾に見せる素の奴だ。

 決して、女には見せない腹黒な本性。

「着替えは私の為じゃなくて皇丞の為でしょう? 私が感謝して俵さんのお願いをきいてあげる理由にはならないと思いますけど?」

「……梓ちゃん、なんか怒ってる? 言葉とイントネーションに棘を感じるけど」

 俺もそう思った。

「どうでしょう。俵さんの答え次第ですね」

「なるほど。質問をどうぞ?」

「どうして皇丞の恋人を寝取ったんですか?」

 俺が聞かれているわけでもないのに、なぜかグッと息をつめた。

「聞いたんだ」

「はい」

「あいつ、なんて言ってた?」

「私が聞いてるんですけど」

「……」

 俵の答えを待たずに、既にしっかり怒っているように聞こえる。

「大学時代の皇丞は、女に割く時間があるなら勉強したいって言ってた」

「え……?」

「トーウンの後継者って責任感からだろうけど」

 そんなことを言っただろうか。

 覚えがない。

「けど、モテるんだよ。まぁ、見てくれはそれなりだし? トーウンの後継者だし。よく告られてたし、つきまとわれてた。皇丞は断ってたけど、中には全くめげない女もいて」

 ぐぅっと腹が鳴り、思わず押さえた。

「その中の一人に押し切られる形で付き合ったことがあるんだけど」

 まるで自分のことのように話すんだな、と思った。

「一週間くらいして、俺のところに来た。皇丞に好かれている自信がない、とかなんとか言って、要はまぁ、色目を使ってきた」
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