復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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15.罠の真相

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*****


 翌朝。

 目覚めた俺は一人だった。

 ガバッと起き上がり、見慣れない部屋に一瞬だけ戸惑い、状況を思い出す。



 そうだ。

 昨日は梓の部屋に……。



 頭が、身体が軽い。

 久しぶりにぐっすりと寝たおかげだろう。

 梓から見た俺は余程疲れ切っていたらしい。

 ベッドに誘われてソノ気になったのはほんの一瞬で、横になるなり睡魔に襲われた。

 さらに、梓の声が子守歌代わりとなった。

 子守歌にしては穏やかでない内容だったが。

「昨日、寿々音すずねさんと俵さんが来たの」

「……は?」

 寿々音とは俺の母親の名。

 俵から、母さんに色々とバレたと聞いていたから、そのうち何か言ってくるだろうとは思っていたが、まさか梓に接触するとまでは思わなかった。

『あなたは息子に相応しくないわ』『別れてちょうだい』なんて、漫画のワンシーンのようなことを言われると覚悟した梓に、母さんは謝ったという。

「主人と息子がご迷惑をおかけしたと聞いたの。ごめんなさいね」

 それから、「『お義母さん』と呼んでもらえたら嬉しいのだけれど、それは都合が良すぎるわよね」とも。

 その時、テーブルに置きっ放しだった退職願を見られたのだ。

 思えば、俵は『梓が退職願を書いた』と言った。それを俺は『梓が退職願を出した』と思い込んでしまった。



 俵が誤解しやすい表現をしたのは、わざとだろうが……。



 退職願を見た母さんは「あなたが辞めることはないわ。皇丞を辞めさせましょう」と言ったらしい。

 母さんなら、本気で俺を後継者から外すように父さんに言いそうだ。

 当然、梓は焦ったという。

 その後、梓は俵から、天谷がキャバ嬢とホテルに入って行ったのを俺と一緒に見たと聞いた。

 それを知ったから、梓は天谷と決別すべく、奴を部屋に上げたと言った。

 そこまでの話は覚えている。

 その後は目を閉じてしまった。



 あの後、梓は何を話した……?



「梓ちゃんから、社長を許すように言ってくれないか?」

 ぼうっとした思考が、意外な声でハッキリした。



 俵の声……?



「寿々音さんのお許しがないと、社長が仕事にならないんだよ」

「はぁ……」

「俺と梓ちゃんの仲だろ?」

 馴れ馴れしい物言いにイラッとしてベッドを下りる。

 ドアノブに手をかけた時、梓の声がした。

「どんな仲かはとりあえず置いておいて。俵さんて寿々音さんのお供もするんですか? 社長の秘書ですよね?」

「皇丞に聞いたことない? 社長の世界は寿々音さんを中心に回ってるんだよ。お供と言ったら聞こえはいいけど、監視役と言うのが正しいだろうね」

「監視……」

「そ。皇丞といい社長といい、女への執着は異常だから」



 言いたい放題、言いやがって。



「その証拠に、社長は寿々音さんに寝室を追い出されて、仕事も手につかない有様だ」



 父さん……。



 俺の両親には珍しいことじゃない。

 母さんが好きすぎる父さんは、口をきいてもらえないだけで出社拒否する。

 かなり前、父さんが仕事から帰ると母さんが家出していたことがあり、トラウマになっているよう。
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