復讐溺愛 ~御曹司の罠~

深冬 芽以

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11.炎上

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 そのスカートを穿いているのは、林海きらり本人。

 見ている私の方が身震いしてしまいそうな短いスカートからすらりと伸びた足は、絶対にストッキングなんて穿いていない。

 腰まである髪は歩くたびに大きなウェーブがほわんと揺れる。

 しばらく美容室に行っていないからパーマもおち、クリップでハーフアップにしただけの私の髪とは大違いだ。

 きらりは、妊娠前のような八センチか十センチのヒールを履いている。

 行き交う人でよく見えず、引き寄せられるように足を進めた。

 そして見えたのは、きらりの隣を歩く男。

 真っ白なスーツに真っ赤なシャツを着ている。

 きらりは彼に腕を絡ませ、寄り添っている。



 どういう……。



 直と別れたのだろうか。

 いや、浮気かもしれない。その方が可能性は高い気がする。

 それとも、親戚かもしれない。私にはわからないが、親しければ腕を組むくらいするのかもしれない。

 わからない。

 どうでもいい。



 どうでもいい……?



 きらりには傷つけられた。

 散々、滅茶苦茶。

 今更だけれど、事実を知る必要がある気がした。

 いや、知りたい。

 好奇心かもしれない。



 理由なんてなんでもいいや……。



 私はフラフラと二人の後を追った。

 が、人生初の尾行は数分で終了した。

 やっぱりと言うべきか、どうしてと言うべきか。



 妊娠……してるのに?



 二人が向かう先には、真っ白い建物。入口にはピンクの看板に黒文字で料金がいくつか書かれている。

 ラブホテルだ。



 妊娠は……?



 妊娠してなければいいという問題でもないが、とにかく私は、妊娠しているのにセックスしてもいいのかばかり考えてしまう。



 安定期に入ればいい……とか小説? かドラマで見たような。



 いや、そもそもそういう問題ではない。

 きらりは直と婚約している。

 きらりは男に腰を抱かれ、嬉しそうにお尻を振って笑っている。

 このまま入るのだろうか。

 入るだろう。

 私は二人の後ろ姿をぼうっと眺めて突っ立っていた。

 お腹が空いたな、なんて思いながら。

 あんまりぼうっとしていたから、音が鳴るまで背後に人が立っているなんて気づかなかった。

 カシャッ

 シャッター音にビクッと肩を竦ませて、振り向く。

「俵……さん?」

 社長秘書が、無表情でスマホをラブホテルに向け、シャッターをきっている。

 音を消すこともできるのに、そうせずに。

 音がしても、雑踏の中で、距離もあるからきらりには聞こえないが。

「動画の方が確かか」

 私には目もくれず、俵さんはスマホをタップし、スライドし、また正面に向けた。

 動画を取っているのなら邪魔をしない方がいいだろうと、私はそっと彼の前から身体をずらした。が、そっと肩に手を置かれ、阻止される。

 五秒くらいして、俵さんがスマホをおろした。

 見ると、きらりの姿はもうない。

 瞬間は見ていないが、ホテルに入ったからだろう。

「お疲れ様です」

 俵さんがスマホを操作しながら、ちらりと視線を私に向けた。

「お疲れ……様です」

「焼肉、付き合ってもらえませんか」

「へっ――!?」

「一人では味気ないので。すみませんが、お願いします」

「え、でも――」

「――皇丞は社長と食事ですし、急がないですよね?」

 ほぼほぼ無表情でそう言うと、彼はくるりと身体を反転させて、歩き出した。

「あっ、ちょ――」

 私は後を追うしかなくなった。

 逆走するサラリーマンの波をかわしながら、辿り着いたのは、さっき私は足を止めた焼肉店。

 肉の焼ける香りに、やっぱりお腹が鳴る。

 ドアを開けた俵さんが、私が入るのを待っている。

 ここで入らない選択肢はないらしく、従った。

 通されたのはソファの四人席。

 飲めるかと聞かれて、飲めると答えたら、ビールを注文された。

 好きな肉はと聞かれて、ホルモンと答えたら、彼は口元だけで笑い、注文した。

「あの、どうしてここに?」

「それは、どうしてこの界隈にいたか? それとも、この店のこと?」

「あ、どっちも……」
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