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8.甘い夜、甘くない理由
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しおりを挟む「ちょ――」
車から降りるなり、手を掴んで足早に部屋まで連れてこられた。
私は、泣きすぎて顔はテカテカを通り越してカピカピで、喉もカラカラ。
ただでさえ足の長さが違うのだ。
その足を競歩並みの速さで回転させられては、私が息切れするのも当然だろう。
それなのに、玄関ドアが閉まるか閉まらないかのタイミングで唇を塞がれた。
「んっ……」
問答無用で唇をこじ開けられ、侵入された舌に私のそれを引きずり出される。
「ふ……っん」
息苦しくて鼻呼吸すると、なぜか甘ったるい音が漏れる。
私の腰を抱く彼の両腕はきつく、さらに二人の足が交差するように膝を割られては、力も入らない。
「んーーーっ!」
抵抗の意思を伝えようと、自由になる両手で皇丞の肩や腕を叩いた。
やっと唇が解放され、限界まで酸素を取り込む。
「先に言っとく」
「へ……?」
唇が触れるか触れないかの距離に顔を寄せられ、背けようとしたら鼻を噛まれた。
「風呂は後」
「え!?」
「マジでムリ」
「私も――」
「――昨夜からとっくに限界超えてんだ。ベッドに移動してやるだけで良しとしろ」
グイッと、さらに強く腰を抱き寄せられる。
そして、気づいてしまった。
既に硬くなった皇丞の熱。
「痛くて堪んねぇ」
「え、痛いの?」
「痛いよ。だから、早く」
早く……って――。
バタバタと靴を脱いだ皇丞が、私の腰を抱いたまま室内に入る。
私も慌ててパンプスを脱いだら、後ろに蹴り飛ばしてしまい、ガンッとドアにぶつかった。
が、皇丞は振り返りもせず、ずんずん歩く。
乱暴にリビングのドアを開け、寝室のドアを開ける。
「ね、おう――」
「――無理」
まったく聞く耳なし。
ベッドに放るように解放され、私は躓くように前のめりでベッドに手と膝をついた。
すると、動物の交尾を思わせるような体勢で、皇丞が圧し掛かってきた。
「ちょ――」
恥ずかしすぎる。
耳たぶを食まれ、突き出す格好のお尻には皇丞の熱。彼の片手は私の手に重ねられ、もう片方の手は脇の下から胸の膨らみに添えられている。
「ね、皇丞!」
「ん?」
たった一音の威力よ。
低いのに甘く、短いのに鼓膜の奥まで震わせる声。
いやらしい体勢なのに、すごく求められていると感じる。
皇丞の手が、おなかの位置のボタンを外し、その隙間から差し込まれた。
キャミソールをウエストから引き抜き、直接肌に触れる。
「待って! ね、これ――」
「――このまま挿れたりしないから大丈夫だ」
「全然大丈夫じゃない! まっ――」
皇丞の手が、ブラの上から胸を包む。
カップをずらされて触れられたら、きっともう抗えなくなる。
「――ストップ! ホントにストップ!」
皇丞の手が、指がカップの端に引っ掛けられたような状態で止まる。
「なに」
打って変わって不機嫌な声。
「は、恥ずかしいんだけど」
「すぐ慣れる」
「腕、が痛いし」
「……」
もう一押し。
「顔が見れないの、イヤ……かも」
恥ずかしい。
こんな甘い台詞、言ったことない。
「手加減してやろうと思ったのに、な?」
「え?」
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