神獣様の森にて。

しゅ

文字の大きさ
上 下
3 / 14

03

しおりを挟む




「え、えと........」

「!!! なんだい?」



とりあえず説明がほしくて、空気が読めていないかもしれないが声を発した。俺の声に反応して、くるっとこちらを振り返ったワンちゃんの声はやはり甘く、ふわふわの尻尾をブンブン振っている。


「か、可愛い............。」

「なッ!?!?貴様!神獣様に向かっ「(バシンッ)馬鹿!!!!お前!!!」(ハッ) も、申し訳ございません!!!!」


俺の思わず溢れた言葉に反応した見回りの人が、仲間に頭を思いっきり叩かれて止められていた。
容赦ないな.......。なんて思っていたら、なんだか周りの気温が下がってきた気がする。いや、気のせいじゃない。現に下がっている。


さ、寒............。


「...............余程、潰されたいらしいな..........?」


「お、お許しくださいませッッ!!!!!わ、私の命だけで!!!!お収め下さいませ!!!!!お願い致します!!!!!お願い致します!!!!!」


号泣しながら額を土に擦り付ける見回りの人。い、命.......?ってか本当に........


「寒.......(ボソッ)」

「ッ!あぁ!ごめんね!我としたことが!寒い思いをさせてしまったね。」



スルッと俺の身体に擦り寄ってきたワンちゃ.....神獣様(?)。


「い、いえ........。あ、あの.........。」

「ん?なんだい?」

「よ、よくわかってないんですけど、俺のために怒ってくれてるって解釈して、大丈夫、ですか、ね?」

「ん?ふふ。うーーん。君の為でもあるかもしれないけれど、ほぼ自分が気に食わないから、かな?」

「あ、じゃあ、ゆ、許し?て、あげるってことは......できないんですか、ね?」

「..........君は赦すの?あんなに無礼な態度をとった奴らを?」


チラッと見回りの人達に睨みをきかせる神獣様。「ヒィッ!」と怯えた声が聞こえる。


「え、えと.......でも、仕事、なんでしょう?実際図らずも、侵入者な訳だし........」

「................君は優しいね。いいよ。赦してあげようか。.............まぁ、我の番だと知った後でさえ『貴様』呼ばわりしたお前。お前の故郷くにに、雨は半年降らんと思え。」


「そ、そん、なッ!!!!   ッッ...!!..........大変な、ご、配慮、ありがとう、ございます..........」


あ、雨......半年降らないって..........


「し、神獣様......?雨、降らないと、作物、育たないですよ........?」

「ん?そうだね。」


そ、そうだねって..........


「飢えちゃいますよ.......?」


現代に生きてきた俺。『雨が降らない=飢え』だなんて、普段ならば絶対に思い浮かばないことだと思う。けれども、この世界においての雨は、人々にとっての生命線なのだと何故だか俺は


「...............はぁ.........。我の番が真っ直ぐで優しくて...........。..........お前、我の可愛い番に感謝しろよ。お前とお前の故郷くにはこの子に救われたんだからな。」

「あ.......あぁ.........!ありがとう、ございます.......!!ありがとうございます番様........!!!ありがとうございますありがとうございます......!!!!!」


号泣しながら土下座されているこの状況。そろそろ俺のキャパシティが限界なんですが宜しいでしょうか?



宜しいですよね。夢なら早く覚めて.....!!!!!!!




そう強く思いながら、俺は気を失った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「本当に可愛い。」 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

聖女の兄で、すみません!

たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。 三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。 そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。 BL。ラブコメ異世界ファンタジー。

弟、異世界転移する。

ツキコ
BL
兄依存の弟が突然異世界転移して可愛がられるお話。たぶん。 のんびり進行なゆるBL

王子様から逃げられない!

白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。

僕のユニークスキルはお菓子を出すことです

野鳥
BL
魔法のある世界で、異世界転生した主人公の唯一使えるユニークスキルがお菓子を出すことだった。 あれ?これって材料費なしでお菓子屋さん出来るのでは?? お菓子無双を夢見る主人公です。 ******** 小説は読み専なので、思い立った時にしか書けないです。 基本全ての小説は不定期に書いておりますので、ご了承くださいませー。 ショートショートじゃ終わらないので短編に切り替えます……こんなはずじゃ…( `ᾥ´ )クッ 本編完結しました〜

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

処理中です...