転生幼女はお詫びチートで異世界ごーいんぐまいうぇい

高木コン

文字の大きさ
516 / 530
17章

いざ出発

しおりを挟む


 いや~、ガイにぃが作ってくれた服のまま帰っちゃって……初めて見たデザインだとアチャとニキーダが大興奮。
 そのせいで私が普段愛用している服がパパ達のお手製ということを知るところとなったガルドさんの顔は盛大に引き攣っていた。その隣でジュードさんは爆笑してたし、モルトさんとコルトさんは平常通りだったんだけれども。
 あまりにも目立つならあんまり着られないなと思ったんだけど、そこは大丈夫らしい。夏の大陸には織物が特産の地域もあるそうで、珍しくはあるものの、悪目立ちではないだろうって。着たときの周りの様子で判断すればいいよね。ダメだったら着替えよう。


 ここから真っ直ぐ東に向かうと、ペギーちゃんのいるヴァリージェ国を通らなきゃいけない。パパ達も避けた方がいいとのことだったので、迂回が望ましい。
 それはいいんだけど……北回りか南回りかで意見が割れた。
 北回りは一カ国経由となり、そこで私が引き留められる可能性が高い。
 南回りは国土的には海に面した国に入れるが、国境が三つ巴みたいになっていて、今内政が荒れているヴァリージェ国のあおりを受けているらしい。

 正直、面倒さで言えばどっちもどっち。
 特産品に期待して北回りにしようかなと思ったところで、ジィジから「あの国はセナの従魔についてやたらと知りたがっていた」なんて情報がぶっ込まれ、南回りが決定した。ここ数日の話し合いはなんだったんだろうってくらい北回り組の手の平返しは早かった。
 
 しばらく分のお仕事関係の取りまとめたり、関係者に出発する旨の手紙を送ったり……と私は割と忙しかった。
 私達と仲よくなったメイドさん達とささやかながらパーティーなんかもした。

「ヴィルシル国に愛想尽かしたら、私の商会でいつでも雇うからね」
「オレの国の優秀な人材を奪うな」

 という私とアデトア君のやり取りに、メイドさん達はいたく感動したご様子だった。これなら私達がいなくなった後も大丈夫そうだね。
 メイドさん達は「アデトア殿下に優秀って言われたわ」ではなく、「さすがセナ様はお優しい……」と、私の予想とは違う感動だったなんて私は知らない。



 恥を忍んだ渾身のおねだりをパパ達に披露した日から三週間経った今日、ようやく出発です。
 ジルだけでなく、ちょいちょいジィジ達やガルドさん達の手を借りても商業ギルド関係の仕事が大変だったのよ。

 王都から少し離れた森の中の一角――グレンが部下ドラゴン達と人化じんかの練習や発語・発音の練習をしていた場所はドラゴン便の発着場と化した。部下ドラゴン全員が認知したからね。管理人用、荷運びの従業員用、馬車の待機場、御者の休憩用……といった建物も建ち、これからは荷降ろし場として使われることになっている。

 その場所で、全員が乗り込んだ巨大バスケットをドラゴン姿のグレンが羽ばたきつつ足で掴んだら出発だ。
 ガルドさんに支えてもらって籠から身を乗り出し、見送りに来てくれたジィジ達、アデトア君達王族三人、宰相、冒険者・商業ギルドのギルマス達に手を振る。

「またね~!」

 そう、ジィジ達とはここでお別れ。彼らは後日……ニキーダの納品の仕事が終わり次第、彼女の従魔――巨大化が可能なペンギンのオマルでキアーロ国の私の家に帰る予定である。
 パパ達が私のコテージに転移門ゲートを作ってくれたので、いつでも会えるようになったのだ。さらに、ニキーダとジィジに教えてもらって魔力で送る手紙のやり方もマスターした。
 だから離れても寂しくはない。すぐに会いに行けるし、何かあったときに相談が出来るという事実が、とてつもない安心材料だよね。

 私達を載せた籠を掴んだグレンはグングンと高度を上げ、あっという間にジィジ達は見えなくなった。
 高度があっても寒さは感じない。ポカポカな陽射しと爽やかな風がとても気持ちいい。

 心配性なパパ達によって、このバスケットはメガ進化を遂げた。改造じゃなくて進化ね。
 もし、万が一にもグレンが手……っていうか足を離しても、載っている私達が放り出されたり、落下した衝撃でケガをしたりしないように。飛んでいる最中に魔物と遭遇して攻撃されても大丈夫なように……細工をしてくれたらしい。
 アクエスパパは「結界石みたいなものだ。これで安全だぞ」なんて言っていた。
 神様がさ、安全って断言するって相当じゃない? 改造ってレベルじゃないと思うんだよね。おそらく、人間が集まって総攻撃しても大丈夫だよ。
 自信満々のパパ達の様子に、思わず乾いた笑いが零れちゃったのは記憶に新しい。


 説明されたときのことを思い出していた私は、ガルドさんに名前を呼ばれて意識を戻した。

「セナ、一時間つってたよな?」
「ん?」
「ジュードが昼着って言っててよ」
「あぁ。んとね、私達が出た後、アデトア君が街に戻って連絡するって話になって、あまり早く着くと向こうが困るだろうから、お昼ごろを目安にしたの。だから三時間くらいかな?」

 ドラゴン便発着場は王都からちょっと離れている。今日、王族の馬車を引いていたのは以前見たラクダ型のキャメージョではなく、馬型の魔馬だったけど、グリネロほどスピードは出せない。そのため、アデトア君が王都に戻るのに時間がかかる。……っていうかグリネロ達龍走馬ドラゴンライダーホースが異常に速いんだよ。

 正確にはお昼前に目的地に到着。その場で私達は昼食。食べ終わったお昼過ぎに迎えの人が来る予定である。
 ガルドさん達は私の説明で納得したみたい。「じゃあ、頑張ってくれてるグレンのお昼は大盛りだねー」と、ジュードさんがグレンのやる気を上げてくれた。
 ちなみに、待ち合わせているのはヴィルシル国の辺境伯。王族や宰相の話では国境を守る文武両道な人らしい。

 同国なのに何故馬車じゃないのかと言えば、グレンの希望。南回りが決定した数日後に〈籠があるんだから飛んで行けば速いだろ〉って言い始めたのよ。多分、宰相が道中に寄って欲しい街及び村リストを作り始めたとプルトンから聞いて面倒になったんだろうな。
 私がこの大陸の港街で買い物をしたいって言ったため、グレン的にはそのまま海っぺりの街まで行きたかったみたい。しかーし、グレンで飛来するのは辞めたほうがいいと、王族三人だけじゃなく、ジィジやニキーダにも止められたのだ。「すわ、魔物が攻めて来た!」とか、「我々に対する脅しでは!?」とか……連絡しておいたとしても、勘ぐる人もいるからって。
 なので折半案としてこうなった。
 グレンは私達を〝運んであげる〟っていう事実があればいいみたいで、距離も速度も特に希望はないらしい。なんなら、〈われはセナの要望に添えるからな〉なんて言っていた。部下ドラゴン達との会話かなんかで何気ないセリフが気になったんだろうなと全員が察した。


 私はネラース達を呼んでモフモフをモフモフ、ジルは私がお願いした書類チェック、ガルドさんとモルトさんとコルトさんは交代でリバーシ、ジュードさんは野菜の皮剥き……わりとバラバラである。
 ジュードさんが、とっても機嫌よく、ひたすら、ピーラーで皮剥きをしてる姿に軽く恐怖を感じる。
 MYピーラー、そんなに嬉しかったのね……グレンさん、今日のお昼は大量の人参とじゃが芋の野菜料理みたいですよ。


しおりを挟む
感想 1,814

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜

シュガーコクーン
ファンタジー
 女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。  その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!  「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。  素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯ 旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」  現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

見た目の良すぎる双子の兄を持った妹は、引きこもっている理由を不細工だからと勘違いされていましたが、身内にも誤解されていたようです

珠宮さくら
恋愛
ルベロン国の第1王女として生まれたシャルレーヌは、引きこもっていた。 その理由は、見目の良い両親と双子の兄に劣るどころか。他の腹違いの弟妹たちより、不細工な顔をしているからだと噂されていたが、実際のところは全然違っていたのだが、そんな片割れを心配して、外に出そうとした兄は自分を頼ると思っていた。 それが、全く頼らないことになるどころか。自分の方が残念になってしまう結末になるとは思っていなかった。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。