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13章
ごちゃ混ぜダンジョン【2】
しおりを挟む目を覚ますと、リポップした魔物に囲われていて……すぐに覚醒した。
気配多さに言葉が出ないくらい驚いた私に、クラオルから『結界石置いたじゃない』って冷静にツッコミが入った。
いくら安全とはいえ寝起きの心臓に悪いから、次はセーフティーゾーンがいいなと思わされた朝だった。
人がいないことを確認して、グレンが威圧。ネラース達が狩ってくれ、私達は第十四階層に降りた。
十四階層は洞窟型でニラもネギも生えていない。その代わり、ところどころにキノコが生えていた。
「へぇー! 干しシイタケがそのまま生えてるんだね!」
「そちら、傷んだキノコではないのですか?」
「違うよ~。傘茸の美味しさを閉じ込めたやつ!」
〈む! 不味い!〉
「そのまま食べちゃダメだよ~。料理に使うやつだから」
〈セーナー〉
そんなジト目を送られても……言う前にグレンが食べたんだよ?
ペッと吐き出すグレンに謝りながら果実水を渡すと、ゴクゴクと一気飲み。口の中はリセットされたみたいだけど〈早く言え〉と怒られた。
出てくる魔物は【ブーコラビ】という兎とゴブリンとスライム。
ブーコラビはCランクの中でも強い部類に入る魔物らしくて、グレンが驚いていた。ゴブリン達と一緒に出るような魔物じゃないんだって。
「あ! エリンギ!」
〈セナ! 待て!〉
「え? うわっ!」
走り寄った私がエリンギを収穫しようとすると、そのキノコの下からオオサンショウウオみたいな魔物が現れた。
《主よ。油断は禁物だ》
「ごめん……まさかキノコが魔物の一部だと思わなくて……」
私をサッと抱えてくれたエルミスに謝る。
腕の中から鑑定してみると【エギ茸ヤーシリ】。エリンギそっくりなエギ茸を頭に生やし、その擬餌におびき寄せられた他の魔物を食べるトカゲらしい。見た目はそこまで強そうには見えないのに、Bランクに属すると書かれていて驚いた。
「グレ~ン。それ頭のキノコ採らないで狩ったら美味しいって」
〈わかった!〉
ここはダンジョンだから何がドロップ品になるかわからないんだけど、グレン達は〝美味しい〟の一言でそんなのは吹っ飛んだみたい。
グレンやネラース達がボコボコと物理で殴り、二分もかからずにエフェクトが出て消えた。
〈む……肉ではないじゃないか……〉
現れたドロップ品の小ビンを見てガックリと肩を落とすグレンに笑ってしまう。
「次はお肉かもしれないよ? また見つけたら狩ろうね」
〈うむ! ほら【エギ茸パウダー】だそうだ〉
「あぁ! しいたけ茶じゃん!」
「これがお茶……なのですか?」
グレンに渡された小ビンを鑑定した私が声を上げると、ジルが小ビンを覗きこんできた。
お茶の葉ではなく、粉末だから馴染みがないみたい。
「これはお湯に溶かして飲むの。美味しいよ~。お昼ご飯のときにでも飲んでみよ?」
「はい。どんな味なのか楽しみです」
ジルはお茶だから気になるみたい。
なんでエリンギの魔物からしいたけ茶がドロップするのかはわからないけど、〝異世界だから〟ってことで自分を納得させる。他に説明のしようがないもん。
第十五層はボス部屋ではなく、普通の森タイプの洞窟型。ここでは黄ニラとわけぎが手に入った。
第十六層は進んで行くと、ノーマルな洞窟型から森の広場型に変わった。出てくる魔物は初心者でも倒せる魔物ばかり。順番を守っているのか一匹ずつ現れ、ネラース達に瞬殺されていく。
「なんかこのダンジョン変だね」
「そうですね。グレン様方がいるので全く感じませんが、強い魔物と弱い魔物が混在しています。僕もこのようなダンジョンは初めてです」
〈ここまでランク差があるのは珍しいが、たまに存在する。天候で出てくる魔物が変わるダンジョンが前にあっただろ? そういうのと大差ない〉
「あぁ……それ、ジィジの国の近くのダンジョンだよね? 吹雪くとダンジョンランクが上がるなんて、ギルドで言われてめっちゃ驚いた記憶がある」
〈うむ! だからダンジョンは面白い!〉
なるほど。こういうギャンブル性もダンジョンの醍醐味なのね。
私達はグレンやネラース達、さらに精霊もいるけど……これ一般人からしたら大変だろうな……
しらみ潰しにウロウロしているため、進みは遅い。
第十九階層は草原広場型だったんだけど……畑のように一面にニラとネギが生えていた。魔物はいなく、セーフティーエリアみたい。
「ここでお昼ご飯にしよー!」
しいたけ茶を試したいから、和食に決定!
鶏肉のさっぱり煮とお味噌汁にしよう! 付け合わせはみぞれ和えでいいかな?
ジルと料理をしている間、みんなには収穫をお願いしておいた。
「できたよー!」
ちゃんとしいたけ茶も全員分用意してからみんなに声をかける。
しいたけ茶をおっかなびっくり飲んだみんなは、ホッと息を吐いた。
「ふふっ。美味しいでしょ?」
「はい。香りは独特ですが、コショウが効いていて美味しいです」
「この茶碗蒸しにも使ってあるんだよ」
ジルが「料理にも使えるのですね」と感心している横で、グレンが〈これなら狩ってもいい〉とニカッと笑う。
ネラース達も気に入ったみたいで、おかわりを望まれた。
お昼ご飯をゆっくり取った私達は残ったネギとニラを刈り尽くしてから第二十階層へと歩みを進める。
二十階層はゴブリンとコボルトの集団が待ち構えているパニックルームだった。
グレンが咆哮を上げ、勢いがなくなった魔物達をみんなで協力して狩っていく。
グレンに言われてグリネロを呼ぶと、戦闘に呼ばれたことのなかったグリネロが大喜びで蹴散らしていった。
グリネロさん……強かったのね……
『呼んでくれて嬉しく思う』
「手伝ってくれてありがとう」
『役に立つ。練習して主人を乗せて飛べるようになる』
私の想像以上に上手く飛べないことを気にしていたみたい。『忘れてくれるな』と一言残して影に戻って行った。
ドロップ品を回収した私達が第二十一階層へ降りると、今度はネズミが地面の下から現れるエリアだった。
ボコボコと開いた穴から飛び出してくるネズミが面倒で、グレウスと一緒に土魔法で蓋をする。
『えげつないわね……』
「そう? ドロップ品もいいものじゃないからいいかなって」
「こちらのしっぽは熱冷ましのポーションに使われておりますので、商業ギルドでは売れるかと思います」
「マジ? ネズミのしっぽのエキスが入ったポーションなんて飲みたくない……」
「そう……ですか? 暑い地方では涼む目的で日常生活で飲まれているものになります」
「マジか……」
コテンと可愛く首を傾げるジルはしっぽエキスは特に気にならないみたい。
異世界の常識って怖い! 自分で飲むのも嫌だけど、みんなにも飲んで欲しくないよ!
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