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13章
ごちゃ混ぜダンジョン【1】
しおりを挟むまだまだ飲むと言う護衛さん達と別れ、ラゴーネさんの宿で一泊。
夜遅くに宿に入った私達は翌朝ようやくラゴーネさんと挨拶できた。
「またセナ様にお会いできて大変嬉しく思います。昨夜、窮屈な思いはされませんでしたか?」
「私も嬉しいし、超快適だったから安心して!」
まだ他の宿泊客は起きてきていないけど、前回泊まった部屋は埋まっていて昨夜は違う部屋に案内されたんだよね。
大人気でほぼ毎日満室。断る日もあるくらいなんだって。
謝るラゴーネさんは悪くないし、私達も気にしていない。
「それはようございました。全てセナ様のおかげでございます。国王陛下より感謝状もいただきました。それによりお客様は増えましたが、良心的な方々が多く、以前よりも仕事がしやすくなったのです」
「おぉ! アーロンさんパワーだね」
おそらく、お守りとして送った木彫り像が悪いやつを弾いていると思うんだけど、効果の話をしていないからアーロンさんのおかげってことにしておく。
実際お客さんが増えたのはアーロンさんからの感謝状のおかげだろうしね!
私が送った木彫り像はカウンターの後ろの棚に飾られている。ホコリも被っていないから、ラゴーネさんが都度掃除してくれているんだろう。
美味しいモーニングセットを食べていると、階段の方から「まぁ、セナ様! おはようございます!」と声がかけられた。
顔を上げるとタルゴーさんとダーリさんが満面の笑みで私達を見ていた。
一緒にご飯を食べることになったタルゴーさんに聞いてみたら、いつもこの街では貴族御用達の宿に泊まっているんだけど、私が気に入っている宿だから泊まってみたんだって。
昨日の別れ際の〝また明日〟発言は宿で会うってことだったらしい。謎が解けたわ。
泊まれてラッキーだと言うタルゴーさんはこの宿もお気に入り認定したみたい。
◇
街を出た私達は昨日護衛さん達が言っていたダンジョンにやってきた。
まだ上手く飛べないグリネロが役に立とうとスピードを出したため、お昼前にダンジョンに到着。
ちょっと早いけどお昼ご飯を済ませた。
「さて行きますか」
グレンとジルに声をかけ、私達はダンジョンへと足を踏み入れる。
第一階層から森の広場型だったため、私はグレンの腕の中に避難した。
今回のミッションは……新しいスライムの核とドロップ品、ニラの収穫、ネギの収穫。
ラゴーネさん情報によると、ネギも生えているらしいんだよ。
タルゴーさんにはスライムで期待されちゃったから、使えるものだといいんだけど……
〈ふむ。他の冒険者がいるな〉
「だねぇ……これっていつ戻るの?」
刈られたニラを指さして聞いてみると、グレンはちょっと考える素振りをして〈ダンジョンによる〉と答えた。
数十分で復活することもあれば、年単位かかることもあるらしい。コンスタントにリポップする魔物とは違うことがわかったけど、何で違うのかはわからない。
「他の人がいるならネラース達は呼ばない方がよさそうだね……グレンも火魔法使わないでね」
〈仕方ないな……〉
私達は階段を探して、下層下層へと降りていく。
今のところ出てきた魔物はゴブリン、コボルト、エイプバット。
コボルトを初めて見たときはちょっと感動しちゃった。だってゲームによく出てくるでしょ?
マンガとかだと可愛く描かれたりするコボルトは、この世界ではそんなことなかった。
ゴブリンの顔が犬バージョンになった感じとでも言えばわかりやすいかな?
ヨダレを垂らしながらゲヘゲヘと笑ってきて、あまりの気持ち悪さにすぐに水魔法を放ってしまった。
エイプバットは小型の猿にコウモリの羽を付けた感じ。
こっちはポラルとジルが瞬殺している。
このダンジョンは魔物を狩りに来ると言うよりはニラを刈りに来ているみたいで、見かけた人はもれなく全員鎌やハサミで収穫していた。
「あれ? ボス部屋だ」
第十階層に降りると、ボス部屋特有の扉が待ち構えていた。
〈セナ。我は甘いやつが食べたい〉
「いいよ~。休憩しようか? 暇で飽きたんでしょ?」
〈うむ!〉
ラグを出してみんなで座り、私は揚げパンを出す。
「きな粉も砂糖もパラパラ落ちるから気を付けてね。クラオルとグレウスのはきな粉少なめにしてあるから前歯にくっつかないと思うよ」
『主様ありがと!』
「ん~! 美味し~! 超久しぶりに食べると激ウマだね。作ってるときも思ったけど給食を……」
〈おかわり!〉
グレンもジルも気に入ったらしく、四回もおかわりされた。
いいんだけどさ……パン十本っておやつじゃなくない? ご飯じゃない?
おやつを食べたグレンの機嫌がよくなったところで、私達はボス部屋へ。
ゴブリンとコボルトが二十匹ほどいたんだけど、グレンがあっという間に片付けた。
第十一階層にしてやっとスライムを発見!
しかもこの階層にはニラを収穫している人もいない。
ネラース達を呼んでコボルトとゴブリンを任せ、ポラルとクラオルとグレウスにはニラの収穫をお願い。私とジルとグレンはスライムの核を採取する。
狩り尽くしながら進み、第十三階層でタイムオーバー。
下層へ降りる階段近くで野営をすることになった。
「今日は~……私の懐かし料理にしてみました!」
〈セナが作る料理はセナの故郷の味じゃないのか?〉
「そうなんだけど、これはまた別なんだよ。揚げ餃子、ほうれん草のピーナッツ和え、ポークビーンズ、チキンピカタ、鮭と枝豆ご飯です!」
給食メニューにしたかったんだけど、私の好みで選択したらこうなっちゃった。
欲を言えばワカメご飯やゆかりご飯が食べたかった……
小学校、中学校って給食を食べてたハズなのに、結構思い出せないもんだよね。レシピ検索したら地域にもよるだろうけど「こんなん出たっけ?」ってやつが多かった。
〈このギョーザは前も食べたが、それよりこの肉がいいな!〉
「こちらのご飯も絶品です。セナ様の思い出の味だと思うと、殊更それを食べられる僕は幸せなのだなと思います」
うん。今日もジルの信者スキルは絶好調だね!
グレンはチキンピカタ、ジルは混ぜご飯、クラオルとグレウスはピーナッツ和えが気に入ったらしい。
プルトンは食レポリポーターばりに褒めちぎり、エルミスは無言で平らげていく。
私も懐かしの献立におかわりしまくっておなかはパンパン。
「デザートはオレンジゼリーのシャーベットだよ!」
〈シャリシャリがいいな〉
「はい。とても甘いのに冷たさでスッキリ致します」
これは作っておいたゼリーを氷魔法で半冷凍させた。
デザートは別腹よね!
即席だったけど好評で何より。
満腹で眠くなった私はニヴェスにもたれてウトウト。
「あぁ……モフモフって素晴らしい……」
『うふふ。眠っても大丈夫よ。ワタシがみんなを見ていてあげるわ』
「ありがとう……」
みんなが遊びで盛り上がる声をBGMに私は眠りに落ちた。
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