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5章

精霊の国【2】

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《騒がしくて申し訳ありません》
精霊帝せいれいていが頭を下げる。

「いやいや!それ私の台詞セリフ!私共々すみません」
申し訳なくて頭を下げる。

《ふふふっ。大丈夫ですので気にしないで下さい。では、改めまして。ようこそおいで下さいました。
私は精霊帝せいれいていをしております。契約しておりませんので名前を名乗る事が出来ません。よろしくお願い致します。
そして青を助けていただきありがとうございます》
精霊帝せいれいていが頭を下げる。

《今はわしはエルミスという名だ》
エルミスがドヤ顔で精霊帝せいれいていに言う。

《私はプルトンよ!可愛い名前でしょ?》
プルトンもエルミスに便乗して自慢げに精霊帝せいれいていに言う。

《はい。良き名前をいただいた様ですね》
ドヤ顔につっこむ事もなくスルーして爽やかなまま微笑む。


「私はセナです。この子達が、クラオル・グレウス・ポラルで、人型なのがグレンです。よろしくお願いします。
助けたのは、えっと…偶然みたいなものなので」
名前を呼ぶとみんな「はーい」と手を上げてくれる。
グレンだけは頷いた。

《当時の精霊王が代替わりをして総出で助けようとしたのですが上手くいかず、私のチカラを持ってしても助けられなかったのです。
とても感謝しております。
我が精霊の国は精霊一同セナ様を歓迎致します》
ニッコリと微笑まれる。

「ご丁寧にありがとうございます」
ペコりと頭を下げる。

《私もエルミスやプルトンと一緒にお会いしたかったのですが、国から出られずに来てもらうほかありませんでした。お会い出来て嬉しいです》
ニコニコと爽やかな笑顔を振りまく。

「こちらこそです。えっと…お土産としてパン作って来ました」
(瞳が気になるけど、聞いても良いのか分からなくて聞けない!)

《セナちゃんのパンはすっごい美味しいのよ!私達のためにいっぱい作ってくれたんだから!》

《それはそれは。とても嬉しいです》

「どこに出せばいいですか?」

《そうですね…ではこちらにお願い致します》
パチンと指を鳴らすと大きめなお皿が1枚テーブルの上に現れた。

《光。あなた相変わらずねぇ…こんなんじゃ足りないわ!セナちゃんは優しいから私達精霊全員に行き渡る様にたーっくさん作ってくれたのよ!》

《!》

「エルミスとプルトンが精霊はあまり食べないって言うので1000個くらいしかないですけど…」

《そんなにですか!セナ様はお優しいのですね。では全員を呼び出しましょう。少々お待ち下さい》
言い終わった後ブツブツと何か呟いている。

「はい?」
(呼び出す?まさか呼んで1人ずつ手渡しじゃないよね?)


《集まるまで少々お時間がかかります。ところでセナ様。私とも契約をして名前を付けて頂けませんか?》

「はい?」

《エルミスとプルトンが羨ましいのです。私もあの時国から出れたら契約して貰えたかもしれませんのに…》

《あら!良いじゃない!セナちゃんのためにふしの木伐採してちょうだい》

ふしの木ですか?大量にあり処分に困っているので大変助かりますが…何かに使えるのですか?》

《セナちゃんのご飯になるのよ!》

《それでは語弊ごへいがあるだろう。あるじが作る料理の材料だからだ》

《あの木が料理にですか?繁殖力が強く困っていますのでいくらでもどうぞ》

「ありがとうございます。とても助かります」

《それで…私とは契約して貰えませんか?》

(あら。話が流れてくれなかった)

精霊帝せいれいていが契約って大変じゃないですか?お仕事もあるでしょうし」

《今は落ち着きましたので大丈夫です。なんなら代替わりをしても構いません》

「えぇ!?いやいや!」

《私達の様になると、契約相手にそれ相応の魔力が必要になりますので中々契約出来ないのです。セナ様はお優しいですし、魔力も申し分ありませんのでぜひお願いしたいのです》

「えーっと…ちょっと待って下さいね」

《はい》

「((ちょっとこれどうすれば良いと思う?))」
『((うーん。主様には悪い話ではないと思うわ。光って言ってたから光魔法が使えるんだろうし、精霊帝せいれいていになるくらいだから治せるケガや病気も多いはずよ))』
〈((われも良いと思うぞ。ここで仕事をさせつつふしの木を定期的に貰えば良い。精霊なら呼べば来る事が出来るから常に近くにいなくても大丈夫だしな。そしたら美味い飯が食べられる))〉

(なるほど…みんな利用する気満々じゃないか…それはどうなんだろうか…)

「えっと…」

《はい》

《セナちゃんの言う事を聞くことと役に立つ事が条件よ。それにあなた仕事もあるでしょ?普段はここで仕事してても構わないわ》
プルトンが私にウィンクしながら言う。

(プルトン。言いにくい事をズバリありがとう!)

《ありがとうございますっ!とても嬉しいです!仕事はなるべく振り分けます。私も一緒に行きたいので。私しか出来ない仕事はちゃんとします》

「じゃあ…あなたの名前は、ウェヌス」

私が決めた名前を言うと毎度の従魔契約の時と同じくピカーッと光る。
(なんか流されて契約してばっかりだなぁ……ありがたいけど、“昨日の敵は今日の友!”みたいなのに少し憧れるよね)

《私はウェヌスですね。とても素敵な名前をありがとうございます。これからよろしくお願い致します》

「よろしくお願いします」

《伝えるのが遅くなりましたが、セナ様は私の主人となる方ですので普通に話して下さい。私は通常がこの喋り方ですので気になさらないでください》

「じゃあ遠慮なく」

《はい。ちょうどそろそろ集まりますのでバルコニーに向かいましょう》

(バルコニー?なんで?)
分からないまま付いていく。

バルコニーに到着すると隣りに立つ様に言われる。
(まさか…)

―《みなよく聞きなさい。今結晶化してしまった元精霊王の青…エルミスを助けて下さったセナ様がいらっしゃっています。
セナ様からのお土産の食べ物をここから配りますのでみなで仲良く分け合いなさい》―
街に暮らしている精霊に聞こえる様に告げる。

(ぎゃああああ!めっちゃ目立ってるじゃん!)

《セナ様。ここからパンを下へ投げて下さい》

「えぇ!?」

《風の精霊がちゃんと配りますので大丈夫です》

「分かった…」

寸胴鍋を出して中に作ったオレンジピールパンとドライフルーツパンとナッツパンをどんどん出していく。
従魔みんなが私が出したパンをバルコニーから外に投げていく。

(なんか食べ物粗末にしている気がして微妙な気持ちになるわ…)

《どうかなさいましたか?》
私の顔を見てウェヌスが不思議そうに聞いてくる。

「うーん…食べ物を投げるのは粗末にしている気がしちゃうんだよね」
ウェヌスに苦笑いで応える。

《配慮が足らずに申し訳ありません。これ以上は城にて配る事に致しましょう》

「そうしてもらえるとありがたい」

―《これより城内にて配ります。行き渡っていない者は取りに来なさい》―
また街に暮らしている精霊達に聞こえる様に言う。

《セナ様。移動してもらってもよろしいでしょうか?》

「はーい」



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