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4章
5日目
しおりを挟むいつもより少し早くクラオル達が起こしてくれた。
馬車を降りてみんなを起こさない様に森に入り、みんなとバラバラ行動で昨日とは違う方向に向かってサーチをしながら採取していく。
こっち側はハーブが多め。
良く使うからありがたい。
たくさん採取して満足したらみんなに念話で声をかける。
みんなまた集めてくれていたらしい。
素晴らしく出来る子達!
みんなが集めてくれた食材を無限収納に入れて野営地に戻る。
まだみんな起きていないので、朝ごはん作っちゃおう。
ノーマルな塩スープとオーク肉の串焼き。
出来上がる頃にみんなが起き始め、みんなでいただきますをして食べる。
夜ご飯の時とのガツガツ具合の差よ!
みんなおかわりして毎回鍋は空にしてくれるけど、明らかにテンションが違う。
みんな美味しいと言ってくれるけど、淡々と確実に食べていく感じ。
食べ終わったら移動が始まるのでコテージへ。
従魔のみんなはまた別行動。
今日は気にしない!
何故って?
昨日かつお節を見つけたからさ!
おかしなテンションで木工部屋に。
かつお節を削るカンナを作らないと!
確か、キッチンスライサーより大きめで箱の上にカンナをセットする感じだったよね?
呪淵の森の木をカットして組み立てる。
ついでにキッチンスライサーとピーラーを作ろうとこれも形作っていく。
キッチンスライサーは箱型でピーラーは自分の手の握りに合わせて削る。
ピーラーは何回も握り持ちやすい様に調節する。
あ!ついでにピザカッターも作っちゃおう!
ピザカッターは細い棒に滑り止めの溝を彫る。
木を加工し終わったら、神銀を抽出して魔力で捏ねる。
刃先は薄ーく、薄ーく。
すんなり切れる様に。
集中して日本で見た形を再現する。
刃をセットしてお試しの前に防水加工を施す。
スライサーとピーラーのお試し用に人参を出して試してみる。
一応皮も剥けるし切れるけど、クオリティが低い!
1度クリーンをかけてから切れ味が良くなる様に刃物を研ぐイメージで魔力を浸透させる。
試しては魔力浸透で研ぐを繰り返す。
どんどん薄くなっていく。
何回も調整し続けるてようやく納得出来る、スライサーとピーラーが完成。
「ふぅ…疲れた…凄い神経使う…」
スライサーとピーラーが何回も微調整が必要だったのでかつお節削り器は試す前に極薄にしていく。
薄くしてから試してみるために手頃な大きさの節の木を無限収納から出す。
いざ!と試すと削れるけどガタガタで分厚い。
隙間の調整と刃ももっと鋭くしなきゃダメみたい。
更に薄くして角度を付け、隙間も無くす勢いで調整する。
また試しては調整して試しては調整を繰り返す。
途中クラオルに呼ばれてお昼ご飯。
細かく調整してやっと納得のいく薄さに削れる様になった頃には夜ご飯の時間でクラオルから念話で時間のお知らせが届いた。
馬車に戻ってモフモフしながらノック音を待って外に出る。
今日は何にしようか…クラムチャウダーもどきだと昨日の夜ご飯のミルクスープと被るからな…
ふと気付くとパブロさんがキラキラした目で私を見ていた。
“今日はポトフ?ポトフ?ねぇ、ポトフ?”って心の声が聞こえる気がする。
パブロさんの心の声に従ってポトフを作る。
出来上がって食べている間ずっとパブロさんはニコニコでおかわりしまくっていた。
1人で寸胴鍋半分以上食べたんじゃないだろうか…
「あぁー!美味しかった!セナさんのこのポトフって凄い美味しいよねー。僕このスープ出してくれるお店があったら毎日通うのに」
「そうですね…こう色んなスープを毎日食べれると宿舎の塩スープを改良して欲しくなります」
「…宿舎はどうだろうな…みんな量を食べるから難しいんじゃないか?」
(宿舎の懐事情はどうにも出来ないかなぁ。…ん!?)
ふと、グレンの気配を感じる。
《グレンが帰って来たわよー》
(やっぱり!)
グレンは出発時と同じく人間の姿にドラゴンの羽をバサバサと動かしながら降下してきた。
〈戻った〉
「おかえり!」
「…疲れているだろうから今日はもう休もう。馬車でゆっくりしてくれ」
〈ふむ。ありがたくそうさせてもらおう〉
プルトンが結界を張ってくれたのでみんなで馬車に戻りコテージへ。
〈セナ。飯が食いたい〉
「パン足りなかった?」
〈いや。パンはまだ残っている。飯に間に合うかと飛ばしたが遅かったみたいだな〉
「そっかそっか!温かい物がいいもんね!何食べたい?」
〈セナの飯なら何でも良い〉
「じゃあ豚丼食べる?」
〈分からんがそれで頼む〉
ダイニングのテーブルに座っててもらい、キッチンに行き炊いたご飯の上に前に作った豚丼の具を乗せる。
私もちょこっと。
クラオル達もちょっと食べたいらしく、珍しくエルミスとプルトンも食べたいと言うので全員分作ってダイニングに運ぶ。
みんなでいただきますと食べ始めるとグレンはガツガツと食べすぐに完食する。
〈もう無くなった…〉
「おかわりあるよ?」
〈良いのか!?〉
「もちろん。私のワガママでお願いしたからね」
〈食う!〉
グレンから丼を受け取ってキッチンで盛り付けてグレンに渡す。
どんどんおかわりして今グレンは10杯目。
「ごめん。お肉の方はまだあるんだけど、ご飯の方が無くなっちゃった。お肉だけでも食べる?」
〈ご飯と言うのはこの白いやつか?〉
「そうだよ。炊くのにちょっと時間がかかるから。お肉どうする?」
〈食べても良いなら食べたい〉
「また作れば良いから大丈夫だよ。なんなら全部食べても良いよ」
〈本当か!?〉
「うん。じゃあこのテーブルにお鍋出すから好きなだけ食べて大丈夫だよ。ただ、ちゃんとお皿によそって食べてね」
〈分かった!〉
寸胴鍋を出すとよそって食べていく。
私はみんなに言ってからキッチンでお米を研ぐ。
みんなが食べたお皿もクリーンをかけてしまう。
グレンはすぐに食べ終わったらしく寸胴鍋と丼を持ってキッチンに来た。
クリーンをかけて回収する。
〈美味かった!ブタドン!気に入った!オーク肉か?〉
「そうそう。前にピンクオーク狩ったから。高い分お肉も美味しかったね」
〈ピンクオーク!?〉
「そうだよ。ギルドですごい珍しいって言われたから良いお肉なのかと思って、お肉と魔石は売らなかったんだ」
〈それはあいつらにも食べさせたのか!?〉
「へ?いや。お米を嫌がるかなって思って出してないよ。パパ達はお米大丈夫だったから渡したけど」
〈そうか…ピンクオークは我らが食べるからあいつらにはダメだ!〉
「そんなに気に入ったんだね。じゃあ家族だけで食べようか」
〈気に入ったと言うか…いや。そうだ。気に入ったからな!〉
「分かった。そんなに好きなら、お肉引き取っておいて正解だったね」
〈(セナは効能を知らないのか…)〉
「ん?何か言った?ごめん。聞き取れなかった」
〈いや。何でもない〉
「なら良いけど。あ、お米炊けるから炊いちゃうね」
〈お米とはシラコメか?〉
「そうだよー!美味しかったでしょ?あ、もしかしてグレンはお米嫌だった?」
〈いや。美味かった。だが、これ家畜用じゃないのか?〉
「私がいた所だと国民食だったんだよ。炊飯器が無くて困ってたんだけど…パパ達が作ってくれたから食べられる様になったんだよ!」
〈そうか。良かったな〉
グシャグシャと頭を撫でられる。
「うん!」
〈そういえば土産があるぞ〉
「お土産?」
〈あぁ。ここだとあれだから外に出よう〉
グレンに促されてコテージの家の前に移動する。
暗いので生活魔法でライトをだす。
〈出すぞ〉
グレンが言ってからドン!ドン!と音を立てながら大きな鳥を出していく。その数10匹以上。
「鳥?」
〈これは“ホットホークス”だ。飛んでる最中に集団に遭遇してな。セナなら美味い物を作れるんじゃないかと狩ってきた。これはピリッとして美味いんだ!特に足が辛くて美味いぞ!〉
ホークスって鷹と鷲どっちだっけ?
グレンが足と言うので近付いて見てみると、鳥の足は大根のひと回り以上の太さで、足の爪は人参サイズの赤い爪が三本伸びている。
ん?んん?
赤い爪…
もしかして…
クリーンをかけた人参サイズの爪を少し削ってペロッと舐めてみる。
「!」
〈美味いだろ?〉
「これ…これ鷹の爪だ!凄いよグレン!鷹の爪だよ!ホークスって鷹か!まさに鷹の爪!」
興奮しながらグレンの服をグイグイ引っ張る。
(これがあればピリ辛料理が作れるじゃん!)
〈な、なんだ?〉
『心配ないわ。主様が欲しい食材だったみたいね』
〈そ、そうか。喜んでくれたみたいだな〉
「うん!これで料理の幅が広がるよ!」
〈そうか!それは我も嬉しいぞ!〉
「これお肉も貰っちゃっていいの?」
〈あぁ。料理に使ってくれ。解体が必要か?〉
「ううん。無限収納で解体出来るから大丈夫!」
テンション高めにホットホークスを無限収納にしまう。
「そうだ!パンケーキ食べたかったんだよね?食べる?」
〈今はブタドンで腹がいっぱいだから明日食べたい〉
「分かった!じゃあそろそろ寝ようか」
帰りにキッチンに寄って炊けた炊飯器を回収してから主寝室でクリーンをかけて着替えてベッドに入る。
鷹の爪の興奮が中々引かずクラオル達をモフモフしながら眠りにつく。
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