76 / 95
第三章 三人の卒業、未来へ
9
しおりを挟む骨の髄まで愛され尽くしたリスティアは、ぐったりとシーツに身体を投げ出した。長い銀髪が広がり、背中や腰を覆う。ちらちらと見える素肌は、艶やかさを隠しきれていなかった。
「もうだめ……、はぁ、ふやける……」
「ふやけてていいのですよ、リスティア。そう言われても、ああ、むしろ強請られているように感じてしまいます」
「ほんとに、もう……身体が鈍るから、だめ」
「なんてかわいい『だめ』なんだ……」
リスティアはスンッとジト目になった。もう何をしても、彼らには『可愛い』リスティアに見えているらしい。
二週間もベッドの上の住人になってしまったため、日課の鍛錬もこなせていない。リスティアは筋力の衰えを危惧し、決死の思いで服を纏う。残念そうにノエルとアルバートが眉を下げていても、こればかりは譲れない。
気怠げに釦を止めて、顔にかかる銀髪もそのままにゆっくりと衣服を身につけていくリスティア。そこはかとなく醸し出す退廃的な色香に、これでは外に出せないとアルファたちは心で通じ合った。
「そういえば、ノエルとアルはもう王城へ行かなくても良くなったの?」
「ああ、そういえば。そうですね、もうひと段落しましたので」
「そっか……」
ひと段落したということは、マルセルクをはじめ各々の処遇が決まったということ。
ようやく空気が落ち着いたところで、ノエルとアルバートから、リスティアの誘拐に関わった者たちの顛末を聞く。
マルセルクは全ての企みを白状していた。フィルがリスティアを甚振ろうとしたのを見て、余程ショックだったらしい。
しかし吐き出されたのは、リスティアに『少々』傷が付いても問題としない計画の数々。それを聞くと、マルセルクを愛していたかつての自分自身ですら許せないほどの呆れを覚えた。
(僕を傷付けてでも囲いたかった、なんて。愛というか執着かな。どうせ囲って満足して放置すると決まっているのに……恐ろしい)
マルセルクにリスティアを殺す意図は無かったらしいが、そうと納得出来ないくらい、危険な計画だった。
「大丈夫ですか?……せっかく幸せに染められたのに、こんな話で水をさしてしまって……」
「いえ、それは。むしろ、僕が思っていたより僕は動じていないみたい。二人に愛されたから、今の僕は無敵だよ」
「かわ……っ」
アルバートにひしと抱き込まれてしまった。ノエルは困ったようにリスティアの頭を撫で、ちゅっちゅとキスを落としている。
「それなら良いのですが。それで、数日後にはマルセルク元殿下は男爵領へ移送されるんです。そうなればもう会うことは出来なくなりますが、最後に面会しますか?」
「向こうは謝罪したいと言っているが、ティアは気にしなくていい。ティアが会いたくなければ会わないでいいと思う」
リスティアは少し考え、会うことに決めた。
かつて愛した人。どうしようもない人。それでも、最後くらいはフィルに邪魔されることなく話をして、きちんとお終いにしたかった。
ノエルとアルバートも一緒についてきてくれる。二人には、時間を遡っていることを話しているし、隠すこともない。マルセルクだけが知るリスティアを不用意に叫ばれても、困ることはない。
リスティアはもう愛の行為を痛がることはないし、花紋も開花している。常に二人から欲されている事実を奥まで教え込まれ、自信をつけさせられた。
「僕の側から離れないでね。……じゃあ、殿下にさようならって言いに行こう」
「もちろん」
「手も握っている」
数日後。
リスティアの、キールズ侯爵家の洗練された使用人たちすら赤面させる色気が落ち着いた頃、三人は王城の貴族牢へと向かったのだった。
487
あなたにおすすめの小説
もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか
まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。
そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。
テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。
そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。
大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン
ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。
テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する
子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき
「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。
そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。
背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。
結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。
「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」
誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。
叶わない恋だってわかってる。
それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。
君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている
キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。
今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。
魔法と剣が支配するリオセルト大陸。
平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。
過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。
すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。
――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。
切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。
お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー
AI比較企画作品
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる