虚構の愛は、蕾のオメガに届かない

カシナシ

文字の大きさ
64 / 95
第二章 二回目の学園生活

51

しおりを挟む
 息苦しさを感じてリスティアが目を覚ますと、両脇をギッチギチに固められていた。


「……?」


 右にはノエルが。
 左にはアルバートが。
 全員裸の状態で、4本の腕が絡みついていた。

 そこで気付いた。
 二人の裸を、見せてもらっていなかった。

 あまり動けないので頭だけを動かすと、見事な鎧のようなアルバートの身体と、ギュッと絞られたしなやかなノエルの身体。どちらも眼福だ。

(それにしても、あんなに気持ちの良いのは驚いた。……僕ばかり気持ち良くなってしまったな……)

 自慰では得られない感覚だった。思い出しながらうっとりと目を保養していると、流石に二人も起きたようだった。


「……おはよう、二人とも。なんでこうなったんだっけ……?」







 裸のままでいるのは、なんとなく危険な予感がして、リスティアはさっと服を着た。たまたま手に取ったのがアルバートのシャツで、いい香りのそれを着てみると、思いの外安心する。


「「な……」」

「アルの匂いがする……」


(これはオメガの本能かな。守られてる感じがする……)


 ぶかぶかのシャツから覗く、細い首と形の良い脚。

 ノエルは伸ばしかけた手を、自分で叩き落とした。アルバートは顔を真っ赤にして覆っている。呑気にアルバートのシャツを楽しんでいるリスティアは、後で持ち帰ろうと企んだところで、まだ裸の二人に気付く。


「早くしないと講義の時間になっちゃうよ……?」

「ああ、もう……っ!!」







 無心で服を身につける二人。背中越しに話しかければ、二人が裸になってリスティアを拘束していたのは、肌を触れ合わせるだけで幸せだったから、という訳らしい。


「確かに起きた時、気持ちよかった。幸せな気分、分かるよ。でも、昨日は僕だけ脱いで寂しかったのに、朝起きたらあっさり脱いでるなんて……」

「すみません、リスティア。昨日は挿入まではいかないと決めていたので、服を脱ぐ訳にはいかなかったのです」

「決めていたの?」

「はい。初めてですから、触れ合いに慣れさせるためだけに。痛みがあっては良くないですし、次のリスティアの発情期までに広げておかないと」

「……っ!」


 ああああ……。
 朝からなんて話題を出してしまったんだろう。これが藪蛇をつつくというやつだろうか。

(でも、二人はちゃんと考えてくれているんだ)

 こんなに身体を大事にしてくれる二人に、感動して泣けてきてしまった。
 リスティアのためだと言って、放置した誰それとは違う。初めから然程解さずに入れようとし、リスティアを高めようともしなかった誰かとは。


 目元を拭うリスティアを、アルバートがキュッと抱いてくれる。ノエルは困ったように笑い、慰めるようにこめかみへキスを落とした。


「とはいえ、毎日これでは講義に差し当たりがありますし、リスティアの疲労が溜まってしまいます。数日置きにしましょうね」

「………………ハイ…………」


 ノエルはまるで教師のように、完璧な計画でリスティアと触れ合うと決めているらしい。それはどこかロビン薬師を彷彿とさせるが、きっと気のせいだろう。


「ところで、これ、気になりませんか?」


 ノエルの指し示す先には、平たい箱があった。
 あまりにさりげなかったので気付かなかったが、どうやら二人がそわそわしている原因のようだ。


「え?何だろう。……開けても、いいの?」

「ええ、もちろん」


 これは、シンプルに見せかけて重厚な包装だ。こういうものは、値が張ると決まっている。おっかなびっくり、開けてみると、まるでティアラのように綺麗な、ネックガードだった。


「これは……!」

「私たちからの贈り物です。どうか」

「着けてくれ」


 こんなネックガードは見たことがない!
 震える手で持ち上げると、恐ろしい程軽かった。

(こ、これは、ミスリルとか言う、滅多に発掘されない鉱物を、こんな円環の形に贅沢に使っている……!?)

 今までのものだって十分に強度のあるものだった。

 しかし、それを外して、新しいものにつけ変えると、どれだけ使用感が違うのか、すぐに分かる。


「あ、ありがとう……!すごい、まるでつけてないみたいに軽いし、二人の色も大胆に入っていて嬉しい……!」


 鏡を見てみても、その透明感のあるネックガードは自分によく似合っていた。
 二人の独占欲を独り占めしている気がして浮かれるリスティアを、二人は鏡越しにだらしない顔を晒さないよう、背けるので精一杯だった。






しおりを挟む
感想 184

あなたにおすすめの小説

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

妹に婚約者を取られるなんてよくある話

龍の御寮さん
BL
ノエルは義母と妹をひいきする父の代わりに子爵家を支えていた。 そんなノエルの心のよりどころは婚約者のトマスだけだったが、仕事ばかりのノエルより明るくて甘え上手な妹キーラといるほうが楽しそうなトマス。 結婚したら搾取されるだけの家から出ていけると思っていたのに、父からトマスの婚約者は妹と交換すると告げられる。そしてノエルには父たちを養うためにずっと子爵家で働き続けることを求められた。 さすがのノエルもついに我慢できず、事業を片付け、資産を持って家出する。 家族と婚約者に見切りをつけたノエルを慌てて追いかける婚約者や家族。 いろんな事件に巻き込まれながらも幸せになっていくノエルの物語。 *ご都合主義です *更新は不定期です。複数話更新する日とできない日との差がありますm(__)m

殿下に婚約終了と言われたので城を出ようとしたら、何かおかしいんですが!?

krm
BL
「俺達の婚約は今日で終わりにする」 突然の婚約終了宣言。心がぐしゃぐしゃになった僕は、荷物を抱えて城を出る決意をした。 なのに、何故か殿下が追いかけてきて――いやいやいや、どういうこと!? 全力すれ違いラブコメファンタジーBL! 支部の企画投稿用に書いたショートショートです。前後編二話完結です。

処理中です...