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第二章 二回目の学園生活
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息苦しさを感じてリスティアが目を覚ますと、両脇をギッチギチに固められていた。
「……?」
右にはノエルが。
左にはアルバートが。
全員裸の状態で、4本の腕が絡みついていた。
そこで気付いた。
二人の裸を、見せてもらっていなかった。
あまり動けないので頭だけを動かすと、見事な鎧のようなアルバートの身体と、ギュッと絞られたしなやかなノエルの身体。どちらも眼福だ。
(それにしても、あんなに気持ちの良いのは驚いた。……僕ばかり気持ち良くなってしまったな……)
自慰では得られない感覚だった。思い出しながらうっとりと目を保養していると、流石に二人も起きたようだった。
「……おはよう、二人とも。なんでこうなったんだっけ……?」
裸のままでいるのは、なんとなく危険な予感がして、リスティアはさっと服を着た。たまたま手に取ったのがアルバートのシャツで、いい香りのそれを着てみると、思いの外安心する。
「「な……」」
「アルの匂いがする……」
(これはオメガの本能かな。守られてる感じがする……)
ぶかぶかのシャツから覗く、細い首と形の良い脚。
ノエルは伸ばしかけた手を、自分で叩き落とした。アルバートは顔を真っ赤にして覆っている。呑気にアルバートのシャツを楽しんでいるリスティアは、後で持ち帰ろうと企んだところで、まだ裸の二人に気付く。
「早くしないと講義の時間になっちゃうよ……?」
「ああ、もう……っ!!」
無心で服を身につける二人。背中越しに話しかければ、二人が裸になってリスティアを拘束していたのは、肌を触れ合わせるだけで幸せだったから、という訳らしい。
「確かに起きた時、気持ちよかった。幸せな気分、分かるよ。でも、昨日は僕だけ脱いで寂しかったのに、朝起きたらあっさり脱いでるなんて……」
「すみません、リスティア。昨日は挿入まではいかないと決めていたので、服を脱ぐ訳にはいかなかったのです」
「決めていたの?」
「はい。初めてですから、触れ合いに慣れさせるためだけに。痛みがあっては良くないですし、次のリスティアの発情期までに広げておかないと」
「……っ!」
ああああ……。
朝からなんて話題を出してしまったんだろう。これが藪蛇をつつくというやつだろうか。
(でも、二人はちゃんと考えてくれているんだ)
こんなに身体を大事にしてくれる二人に、感動して泣けてきてしまった。
リスティアのためだと言って、放置した誰それとは違う。初めから然程解さずに入れようとし、リスティアを高めようともしなかった誰かとは。
目元を拭うリスティアを、アルバートがキュッと抱いてくれる。ノエルは困ったように笑い、慰めるようにこめかみへキスを落とした。
「とはいえ、毎日これでは講義に差し当たりがありますし、リスティアの疲労が溜まってしまいます。数日置きにしましょうね」
「………………ハイ…………」
ノエルはまるで教師のように、完璧な計画でリスティアと触れ合うと決めているらしい。それはどこかロビン薬師を彷彿とさせるが、きっと気のせいだろう。
「ところで、これ、気になりませんか?」
ノエルの指し示す先には、平たい箱があった。
あまりにさりげなかったので気付かなかったが、どうやら二人がそわそわしている原因のようだ。
「え?何だろう。……開けても、いいの?」
「ええ、もちろん」
これは、シンプルに見せかけて重厚な包装だ。こういうものは、値が張ると決まっている。おっかなびっくり、開けてみると、まるでティアラのように綺麗な、ネックガードだった。
「これは……!」
「私たちからの贈り物です。どうか」
「着けてくれ」
こんなネックガードは見たことがない!
震える手で持ち上げると、恐ろしい程軽かった。
(こ、これは、ミスリルとか言う、滅多に発掘されない鉱物を、こんな円環の形に贅沢に使っている……!?)
今までのものだって十分に強度のあるものだった。
しかし、それを外して、新しいものにつけ変えると、どれだけ使用感が違うのか、すぐに分かる。
「あ、ありがとう……!すごい、まるでつけてないみたいに軽いし、二人の色も大胆に入っていて嬉しい……!」
鏡を見てみても、その透明感のあるネックガードは自分によく似合っていた。
二人の独占欲を独り占めしている気がして浮かれるリスティアを、二人は鏡越しにだらしない顔を晒さないよう、背けるので精一杯だった。
「……?」
右にはノエルが。
左にはアルバートが。
全員裸の状態で、4本の腕が絡みついていた。
そこで気付いた。
二人の裸を、見せてもらっていなかった。
あまり動けないので頭だけを動かすと、見事な鎧のようなアルバートの身体と、ギュッと絞られたしなやかなノエルの身体。どちらも眼福だ。
(それにしても、あんなに気持ちの良いのは驚いた。……僕ばかり気持ち良くなってしまったな……)
自慰では得られない感覚だった。思い出しながらうっとりと目を保養していると、流石に二人も起きたようだった。
「……おはよう、二人とも。なんでこうなったんだっけ……?」
裸のままでいるのは、なんとなく危険な予感がして、リスティアはさっと服を着た。たまたま手に取ったのがアルバートのシャツで、いい香りのそれを着てみると、思いの外安心する。
「「な……」」
「アルの匂いがする……」
(これはオメガの本能かな。守られてる感じがする……)
ぶかぶかのシャツから覗く、細い首と形の良い脚。
ノエルは伸ばしかけた手を、自分で叩き落とした。アルバートは顔を真っ赤にして覆っている。呑気にアルバートのシャツを楽しんでいるリスティアは、後で持ち帰ろうと企んだところで、まだ裸の二人に気付く。
「早くしないと講義の時間になっちゃうよ……?」
「ああ、もう……っ!!」
無心で服を身につける二人。背中越しに話しかければ、二人が裸になってリスティアを拘束していたのは、肌を触れ合わせるだけで幸せだったから、という訳らしい。
「確かに起きた時、気持ちよかった。幸せな気分、分かるよ。でも、昨日は僕だけ脱いで寂しかったのに、朝起きたらあっさり脱いでるなんて……」
「すみません、リスティア。昨日は挿入まではいかないと決めていたので、服を脱ぐ訳にはいかなかったのです」
「決めていたの?」
「はい。初めてですから、触れ合いに慣れさせるためだけに。痛みがあっては良くないですし、次のリスティアの発情期までに広げておかないと」
「……っ!」
ああああ……。
朝からなんて話題を出してしまったんだろう。これが藪蛇をつつくというやつだろうか。
(でも、二人はちゃんと考えてくれているんだ)
こんなに身体を大事にしてくれる二人に、感動して泣けてきてしまった。
リスティアのためだと言って、放置した誰それとは違う。初めから然程解さずに入れようとし、リスティアを高めようともしなかった誰かとは。
目元を拭うリスティアを、アルバートがキュッと抱いてくれる。ノエルは困ったように笑い、慰めるようにこめかみへキスを落とした。
「とはいえ、毎日これでは講義に差し当たりがありますし、リスティアの疲労が溜まってしまいます。数日置きにしましょうね」
「………………ハイ…………」
ノエルはまるで教師のように、完璧な計画でリスティアと触れ合うと決めているらしい。それはどこかロビン薬師を彷彿とさせるが、きっと気のせいだろう。
「ところで、これ、気になりませんか?」
ノエルの指し示す先には、平たい箱があった。
あまりにさりげなかったので気付かなかったが、どうやら二人がそわそわしている原因のようだ。
「え?何だろう。……開けても、いいの?」
「ええ、もちろん」
これは、シンプルに見せかけて重厚な包装だ。こういうものは、値が張ると決まっている。おっかなびっくり、開けてみると、まるでティアラのように綺麗な、ネックガードだった。
「これは……!」
「私たちからの贈り物です。どうか」
「着けてくれ」
こんなネックガードは見たことがない!
震える手で持ち上げると、恐ろしい程軽かった。
(こ、これは、ミスリルとか言う、滅多に発掘されない鉱物を、こんな円環の形に贅沢に使っている……!?)
今までのものだって十分に強度のあるものだった。
しかし、それを外して、新しいものにつけ変えると、どれだけ使用感が違うのか、すぐに分かる。
「あ、ありがとう……!すごい、まるでつけてないみたいに軽いし、二人の色も大胆に入っていて嬉しい……!」
鏡を見てみても、その透明感のあるネックガードは自分によく似合っていた。
二人の独占欲を独り占めしている気がして浮かれるリスティアを、二人は鏡越しにだらしない顔を晒さないよう、背けるので精一杯だった。
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