婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

文字の大きさ
上 下
52 / 67
本編

52

しおりを挟む
 僕と、僕の持つ棒を見て、グロリアスは戸惑っていた。


「……?…………??」
「あっ、デザートだけど、ほら、ワインのお供に良いかなと思って!ね?」

「確かに、そうだな……おいで。君も一緒に食べよう」

 僕命名、ボッキー。元祖より固いからね。ボッキーを数本籠に持つと寝室に連れ込まれた。すかさずブロディがお酒を注いでくれる。

『グロリアス様、くれぐれも何も言わずに食べてくださいね』と、ボソッとグロリアスに忠告をしていたことなんか、気が付かなかった。初めて作ったお菓子を、気に入ってくれるかどうかドキドキしていたから。

 グロリアスは僕を膝に乗せ、ボッキーを一本握り、齧った。……その硬さに驚いたのだろう。目を見開いていた。

「……美味しい。チョコのまろやかな甘さがいいね」
「ごめんね、固いよね!でも、チョコは美味しいでしょう?」

「うん、とっても。これ、シオンは食べられたの?こんな小さいお口で……」
「え?もちろん。ほら、こうやってしたら、齧れるよ」

 ボッキーにかぶりつく。ちゅうちゅうと吸い付くようにしてチョコの層を溶かし、固いプレッツェル部分をふやかして、少しずつ齧った。

 本当にチョコは美味しくできたんだけどなぁ……と恨みがましい思いでボッキーを齧り、時折それでクリームを掬って、『こうすると美味しくなるよ』とアピールし続けていると、ふと、グロリアスが僕を凝視しているのに気付く。えと?

『小さいお口……、棒……、あんな一生懸命に……』

 ボソボソと呟く声は小さくて、聞こえない。何だって?

「シオン……、そろそろ、シオンも頂きたいのだけど」
「えっ……あ、うん……」

 あれ?ギラギラ……してる?

 何故か非常に興奮していたらしいグロリアスは、その後、僕をつま先まで余すところなく貪った。
 デザート作りはちょっと失敗しちゃったけど、グロリアスには気に入ってもらえたようで良かった。

















 お父様は次の日には、全国に響き渡る声で声明を出した。

 あ、そんなに声量がある訳では無いよ。ただ、僕のスキルで、お父様――国王陛下の声を、国民全員に聞かせたのだ。公共放送だ。






『前王家を倒す時。そこには多大な犠牲があった。奪われた者は多くいる。旧王城に無理やり買い取られた娼婦や、弱みを握られた者たち。法の機能しない街で暴れる暴徒に、資産や食料、尊厳まで奪われた者も多い。ここに、皆で祈ろう。命を失った者へ、そして命はあれど、深く傷を負った犠牲者へ。



 …………皆は知っているだろうか。この王国を新しく作り変え、吐きながらもスキルを駆使し、最短で平穏へと導いた救世主も、その犠牲者の一人だと言うことを。



 魔力の覚醒が遅かった彼は、救世主でも何でもなかった。彼もまた、前王権に蹂躙され、苦しみ、死を垣間見た一人。

 運よくスキルを顕現したからこそ、生き延び、そして我々国民を救い、豊かな国を与えてくれたが、そうでなかったのなら、――――分かるだろうか?


 前王権による圧政は止まらなかっただろう。重税に重税、暴徒は蔓延り、魔物と同じ、弱肉強食の世界になっていただろう。

 今、その世界から救ってくれた彼を、貶める噂がある。犠牲者だった彼が、まるで喜んで蹂躙されているかのような、そんな噂が。

 その噂を口にした者は、直ちに申し出よ。通報でも構わぬ。蹂躙というものが何かを、その身を持って知る機会を与えよう。



 また、口にしていない者も、認識を改めよ。心優しき救世主が、この国を去る事を想像せよ。ここまで復興させてくれた救世主を、追い出した後、誰がこの国を守ってくれる?

 私は、平凡な王だ。未だ救世主の力に頼っており、なかなか完全な自治は難しい。そんな国から、救世主を奪う――――その意味は、少し前に、皆が体感したはずだ。

 今後、救世主、及び前王権での被害者に対する誹謗中傷は、一律王族に対する不敬罪として、厳しく取り締まる。例外は認めぬ』




しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。

riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。 召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。 しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。 別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。 そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ? 最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる) ※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。

無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~

鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!  詳細は近況ボードに載せていきます! 「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」 特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。 しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。 バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて―― こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

処理中です...