婚約破棄された銀の猫は、チートスキルと激甘伴侶をゲットしました

カシナシ

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「ブロディー……僕、僕、一体どうしたら……」

 僕の寝不足を心配し、朝なのに安眠の香りを部屋に撒き散らしたブロディは、はた、と動きを止めた。

「どうしたのでしょう?私でお力になれることがあれば良いのですが」
「グロリアスが、僕に触れてくれない」

 ピシリと、空気が固まったような気がした。ちなみにリンは寝ているので、僕とブロディの会話は聞いていないはずだ。

「国王陛下は、よく我慢なさっておりますね……」
「な、なんで!?ブロディはどっちの味方なの!?」
「もちろんシオン様でございますよ」
「僕だって我慢、してる!ふ、触れて欲しいけど!言えない!言えるか!うわぁぁああ!誰が何の味方なのさぁぁあ!!」

「お、落ち着いて下さい!シオン様」

 ぐしゃぐしゃと髪をかき乱した。相当なストレスになっていたらしい。ブロディが目を見開き、駆け寄ってきた。

「シオン様、ゆっくり、ゆっくり息を吐いて、吸って」
「うっ、うっ……うう………ごめん、ブロディ」
「いいのです。さあ、シオン様。私の手は、怖いですか?」
「え?」

 ぽん、ぽん、と優しく叩かれている背中。優男のブロディが、怖いって?そんな訳、ない。

「怖く、ない」
「そうですよね。つまり、シオン様は、国王陛下にも、恐怖は感じていらっしゃらない」

「もちろんそうだよ!」
「では何故、国王陛下から距離を取ろうとするのでしょう?私の目には、そう見えました」

「距離……、そっか、そう見えたんだね」

 話しているうちに落ち着いてきた。いつもの如く、ブロディはホットミルクを入れてくれる。もう本当、お酒の代わりにこればっかりはやめられなくなってきていた。
 渇いた喉を潤したら、早口で喋り出す。と言うか、言葉が次から次へと、止まらない。

「僕、グロリアスと今までのように気軽に抱き付いたりなんか出来ない。なんかもう、いっぱいいっぱいになってしまって、息も出来なくて苦しいし、心臓がバーンってはじけて死んでしまうよ。グロリアスは何も変わらないのに、僕だけこんなに変わってしまうなんて、薄情者な気がするし、申し訳ないのに、けど、触れられたいなんて矛盾したことを思って、訳が分からなくて」

「……」

「距離を取りたいというか、僕は、自分の生きていられる距離を図りかねているんだよ。だって近付き過ぎればだめだから。って、別にグロリアスを爆弾扱いしている訳じゃない」

「シオン様」

「爆弾というなら僕の心臓が爆弾かもしれない。どうしよう、こんなに痛くなるのは、グロリアスだけ。なんてお医者さんに言ったら、グロリアスから離れろって言われちゃう!」

「シオン様。それは、端的に言うと恋ですね」

「は………………こ、い……?」

 ブロディは僕の隣に腰をかけると、自分用にも作ったホットミルクを、優雅にもこくりこくりと飲んでいた。

 あんぐりと開けた口を戻し、再起動する。

「ぼ、僕のこの複雑怪奇な気持ちを、そんなたった一言で簡単に纏めるなんて許せない!もっと何か……こう……ないの!?」
「いやですから、恋ですって」
「そんな……え?恋?」

 全く違うベクトルに走り出そうとした怒りを押し留め、もう一度その言葉を舌の上で転がしてみる。この、苦しいのが、恋?

「今までシオン様は、グロリアス様を小さな天使みたいな、もっと言うと子供に対する扱いでした。当然ながら。でも、あのお姿となられれば、その意識は変えざるを得なかったでしょう?」
「そ、そうだね」

「陛下を見る見方は変わって当然ですし、むしろ、それをあの方も歓迎していらっしゃると思います。あの方も、あの大きさで子供扱いされずに済んでほっとしていると思いますよ」
「で、でも……触れて欲しいのに、近付けないのは、おかしいことじゃ?」

「近付けば近付くほどに増す胸の高鳴りは、『ときめき』と言うんです。シオン様は正しくは、『近付きたいし触れられたい、けれど恥ずかしい』んじゃないんですか?ほら、私には感じないでしょう?残念なことに」
「うん、全く」
「うっ……」

 ブロディが遠い目をして胸を抑えていることなど気付かず、僕は愕然としていた。

 トキメキ。これ、が?こんなに痛いのに?『シメツケ』じゃないの?病気でしょう、これ。それもこれも、全部『恋』で済まそうって?随分と乱暴だ。

「……シオン様は、たとえば国王陛下が、誰か別な人を側に置いていたら、どう思いますか?」
「絶対に嫌だ。え……どうしよう。僕、グロリアスを攫ってどこかに閉じ込めてしまうかもしれない」

「そんなことをできるのはシオン様だけですし、陛下も喜んで攫われることでしょうが……、それが嫌だ、ということは、やはり、シオン様は陛下を愛していらっしゃるからでは」

 愛……。ああ、なんてことだ。

 僕はこんな制御不能で、激しくて凶暴な気持ちを知らなかった。王子を『慕って』いたのとか、エリオットに口先だけで言っていた『愛している』なんて、これっぽっちも比じゃない。小さなグロリアスに言っていた『好き』も、嘘じゃないけれど、この気持ちに比べれば、ふわふわの兎さんのように可愛らしいものだった。

 んで、えっと……どうすればいいのかな?これ……。











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