僕は人畜無害の男爵子息なので、放っておいてもらっていいですか

カシナシ

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番外編(と言いつつ番号順)

65 ショーン(4)

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(ショーンside)


「チッ……ついてねぇ」


 おれの気分は最悪だった。セフレには裏切られたどころか詐欺だったし、ロロには『さっぱり理解できない』みたいな顔をされるし。



 やっぱ、おれにとって、ロロが“可愛い”の権化なんだよ。



 ロロの半裸というか、赤い縄で縛られた姿が未だに夢に出てくるって結構やばいと思う。あれはおれのランキングに不動の殿堂入りをした。未だに更新されないほどに、エロかった。

 意外と腰回りはむちむちしているのか、食い込む紐。尻の綺麗な膨らみが強調されて、ぷりんぷりんでさ。白いババロアかと思ったさ。左右に脚が大きく広げられていたから、ケツをもう少し、ほんの少し上げてくれれば、可愛い(に違いない)穴が見れたのに。

 形の良い細い脚は、蜘蛛に捕まった蝶のように幾何学的な縛られ方で、背徳感を煽るような色気があった。振り返った時の涙目もたまんなかったし、ぽちっと小さな乳首も縄で強調されて、思わず舐めたくなったよな。

 腰も折れそうなほど細いのにまん丸なおちりが可愛くて、縄は解かずにそのまま挿れたかった。たぶん、抵抗できないロロ相手に、無茶苦茶に腰を振りたくることだろう。と、そう思うおれは、かなりの人でなしなのかもしれない。


そしてその後、ああいうエロく縛る専門家がいることを知った。マジか。世界は広い。


 とにかくあれを見る限り、ロロの体は柔らかそうで綺麗で、どこもかしこも美味しそうな体だったものだから、おれはロロとヤりたかった。本当に本当に、ちんこ擦り切れるかってくらい想像して抜いた。

 でも満たされることは無かった。多分、おれの手が硬くゴツく、ロロとは程遠いことが原因だと思う。

 普段のロロは色気なんか無く、しょっちゅう転ぶようなうっかりさんだ。でも体はエロいなんて、どう考えたってそそるよな?

 まじでヤリてぇヤリてぇばっか言ってたら、ジキルに真剣に怒られた。



『まずその気軽に“ヤらせろ”って言うのやめなさい。君が食らおうとしているのはクッキーやちょっとしたおやつではなくて、ロロくんの尊厳そんげん。君のそんなしょうもない一過性の欲のために、ホイホイあげるわけないでしょ?』

『……いや、いるだろ。乗るやつは乗るはずだ』

『それはその人も君と似たタイプか、自分の価値を見誤っているかだ。ロロくんは違う。無自覚でもちゃんと自分を大事にしている子だし、だからこそちゃんと大事にしてくれる人と幸せになって欲しい。そう思わないか?』

『……それは、そう思う。ロロはダチだし……おれ、もしかしてロロを傷付けてたのか?』

『そうだと思うよ。なぜなら、“軽いと見られている”と勘違いしてしまうだろう?そして君は、自分の性欲を他人でどうにかしようとしすぎだ。まず運動、その次も終わりまでずっと運動!最近負荷が足りてないから、余計なことを考えるんだ。気絶するくらい疲れてくること、いいね?でないと本当に性犯罪者になるよ?ぼく、嫌だからね、友人が焼印押されるのなんて。まぁともだち辞めるけど』


 などとクソみそに言われ、反省した。結構ヤバいなと自覚もあったから、意識して紳士面するようにしているうち、ロロはグレイリヒトのもんになっちまった。


 “いや、ヤりたいとは思うけど、婚約したいかと言われれば、別だから。”そう思っているうちにな。


 
 後に、おれは目先の性欲に気を取られすぎていたことに気付く。ロロみてぇなやつはそうそう居ないし、居てもグレイリヒトみてぇなアルファに、早々に囲い込まれて売れ切れている。そんなこと、10代のうちに誰か教えてくれよな!と、数年後悔しがることになるとは、今のおれはまだ知らない。







 グレイリヒトは、おれから見てもいい男だ。本当に同い年なのか疑問に思うくらい落ち着いている。奴ならロロを幸せに出来ると思ったし、実際にそうだった。それはもう、仕方のないことなのだから、代わりを探すしかない。


 ロロに似た、男性オメガで、身体の綺麗なやつを。あれほどまででなくていい、近ければいい。


 何人かセックスをしてみたーーーーもちろん合意の上でーーーーけど、結構面倒だと気付いた。セックスに持ち込むために色々リップサービスをすれば見事に勘違いをされるし、かといってしなければセックス出来ない。だから、初めから『それ』だけの相手なら気楽に付き合えるかと思っていた。

 ユーストスもその一人だった。スポーツのように勢いよくガッと抱いて、ピュッとスッキリして、パッと解散。それでいいと言ってくれる奴。

 ところが蓋を開けてみれば、アレだ。幸せそうなロロを逆恨みして、根も葉もない噂をばら撒き、それに怒ったアレキウスとマリーベル姫が根も葉もある噂をばら撒き返していた。『ユーストスは複数のセフレがいる』『ユーストスは仲間と詐欺をやっている』という。

 旦那からも離縁されて実家に出戻っているらしい。大人しくしておけばよかったのにな。

 今回ユーストスの件で、おれはセフレも良く知らなければ、リスクが高いことを知った。


「やっぱり、ロロみてーな奴は、いねぇよな……」

「ロロくんがどうかしたのかい?」


 鍛錬後、汗を拭いているとジキルが通りかかった。年上だからとよく面倒を見ている……つもりらしい。


「別に。人生上手くいかねーなぁって思ってただけ」

「ははっ、聞いたよ、ショーンくん。なかなかな失敗をしたってね。性欲に振り回されてるよねぇ、君ってば」


 ピキ、と青筋を立てる。こいつは、柔和な顔をしているくせに、人の神経を逆撫でするのが上手い。


「はっきり言って、ダサい。ダサいよ、君。男としてのパワー?魅力?見せつけてやりたかったの?ロロくんに」

「はっ?い、いや……」

「グレイリヒトよりすげーんだぞって?いやいや、ありえないね。あれだけ愛されてる子を横取りしたいなら、さらに上回る愛を見せないと。アハッ、無理だと思うけど」

「…………分かってる」

「君に必要なのは、人と向き合うことだ。どうせちょっと齧ってポイ、ちょっと齧ってポイだったんだろう?それじゃあ、目先の欲は解消しても虚しくなるだけだよ」

「……ハハッ、経験談か?説得力がある」

「……ふふふ、どうだろうね」


 ほんの少しジキルの目が細くなり、図星だったのだろう。少しでも反撃できた気がしてニヤつく。ジキルもモテる男だし、よくデートをしている所は見るが、特定の相手はいない。

 だが、してやったりな気になれたのは一瞬だけだった。ジキルは、すうっと感情を抑えた表情に戻る。


「考えてみて。アレキウスだって、婚約して幸せそうだろう?政略結婚でも、ちゃんと誠実に向き合えば、幸せになれる。君も、まずは目の前の人に……」

「セイジツに……?向き合う……?」

「……君にはまだ早かったか……」

「そういうお前はどうなんだよ、婚約者。まだいねーんだろ?」

「ぼくのことは放っておいて。ぼくはにゃんこと結婚するんだ」


 ジキルは本気なのか冗談なのかよく分からない、不気味な顔で笑った。そして話題を逸そうとしたおれの頭を小突く。


「とにかく、人の体を借りて自慰行為をするのはやめたほうがいい。いつか後悔する。例えば、ロロくんくらい素敵な子が現れた時、とかね」

「んなやついねーし」




 いつか現れてくれる……のか?むりじゃね?

 だったら、それまで遊んでいようっと!

 そうして経験を積んで、おれはようやく、ロロのような“体”のやつを抱きたかったのではなく、ロロのような性格で、ロロのように可愛くて、ロロのような体を抱きたかったのと気付く。
 それって、ロロのことを好きだった、ということなのか?

 頭の悪いおれには、良く分からなかった。



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