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なんだかんだで閉店時間までいたユージーンとシアを見送り、店にはダイスとケンジロウの2人きりになる。
「ダイス、おいで」
ケンジロウが両手を広げて、ダイスをよんだ。
戸惑うことなく、ダイスはそのままケンジロウを抱きしめる。
抱きしめ返して、ケンジロウは自分よりひとまわり小さなその背中をぽんぽんと撫でた。
「見つからなかったんだね」
「ああ」
「悪いね。俺、ちょっとホッとしてしまった」
「…、俺もだ」
ユージーンが探し続けているそれ。ダイスも仕事で国外に出る時は必ず探しているそれ。
それは確かにユージーンにとっては悲願とも言える願いを叶えるものなのだが、同時に、それが見つかれば、ユージーンと今の関係を続けることはできなくなるそれ。
探すと言う約束は違えない。けれど、見つからなければそれはそれで安心してしまう。
「んっ」
どちらともなく口付けて、2人は苦笑を浮かべて見つめ合う。
2人の脳裏には、楽しそうに笑うユージーンとシアの姿があった。
「もうしばらく、見つからないといいね」
「そうだな」
「さて、シア君」
「なに?」
温め直したシチューを食べながら、ユージーンは言った。
「今日はどっちがいいですか?」
「ぶっ!!」
「わ、ちょっと、汚いですよシア君」
「うぇっほ、げほっげっほ。し、師匠が変なこと急に言うからだろ!?」
どっち、というのがセックスの上下のことだというのはすぐにわかった。わかったからこそ、それは飯時にするような話じゃねぇだろ、というのがシアの意見だった。
「そうですかね?」
「師匠はデリカシーっていうのをどっかに置いてきただろ、絶対」
「シア君の口からデリカシーなんて言葉が聞けるとは…」
「バカにしてんのかクソジジィ!!」
ったく、と言いながらシアは残りのシチューを口に運ぶ。
どっち、という問いは返事をするつもりはなかった。
今日は魔力コントロールの練習くらいにしか魔力を使っていない。補充しなければいけないほど魔力を消費はしていないから、今日はしなくてもいい、と思ったのだ。
シアの内心を読んだのか、ユージーンは苦笑して、「ばかになんてしてませんよ」という一言でこの会話を終わらせた。
その夜、シアが眠りについてから、ユージーンは静かに家を出た。
家出、などではなく、依頼をこなすためだ。
自分の留守中の万が一を考えてシアの魔力を補充しておこうかと思っていたのだが、夕飯時の反応で、年頃の男子だ、そりゃ魔力補充のためだけに抱いたり抱かれたりというのはいやだろうと思って、それ以上は突っ込めなかった。
(魔力云々がなくても、シア君としたい、なんて、…ああ、我ながら馬鹿げている)
ユージーンは、二百年以上の生のなかで、恋人がいたことはない。
誰かを好きになるには、事情が切羽詰まっていた。
人間として好きになる人はいても、それが恋愛には発展しなかった。
体の関係だけなら幾人もあるが、行きずりの関係の方が多かった。
こんな、1人と何度も深く肌を重ねた経験など、なかったのだ。
(当時と事情は変わっていないけれど、昔ほどの焦りがないからでしょうか?)
なぜ彼にここまで心を持っていかれそうになっているのかがユージーンには自分で自分が理解できなかったが、このままではいけないと、心の底で警鐘が鳴る。
(多分、このままでは)
自分は彼を、閉じ込めてしまう。
***
昨日は体調崩して更新できませんでした、すみませんっ。
だんだんシリアスというか、それぞれの事情が見えてきそうです。
「ダイス、おいで」
ケンジロウが両手を広げて、ダイスをよんだ。
戸惑うことなく、ダイスはそのままケンジロウを抱きしめる。
抱きしめ返して、ケンジロウは自分よりひとまわり小さなその背中をぽんぽんと撫でた。
「見つからなかったんだね」
「ああ」
「悪いね。俺、ちょっとホッとしてしまった」
「…、俺もだ」
ユージーンが探し続けているそれ。ダイスも仕事で国外に出る時は必ず探しているそれ。
それは確かにユージーンにとっては悲願とも言える願いを叶えるものなのだが、同時に、それが見つかれば、ユージーンと今の関係を続けることはできなくなるそれ。
探すと言う約束は違えない。けれど、見つからなければそれはそれで安心してしまう。
「んっ」
どちらともなく口付けて、2人は苦笑を浮かべて見つめ合う。
2人の脳裏には、楽しそうに笑うユージーンとシアの姿があった。
「もうしばらく、見つからないといいね」
「そうだな」
「さて、シア君」
「なに?」
温め直したシチューを食べながら、ユージーンは言った。
「今日はどっちがいいですか?」
「ぶっ!!」
「わ、ちょっと、汚いですよシア君」
「うぇっほ、げほっげっほ。し、師匠が変なこと急に言うからだろ!?」
どっち、というのがセックスの上下のことだというのはすぐにわかった。わかったからこそ、それは飯時にするような話じゃねぇだろ、というのがシアの意見だった。
「そうですかね?」
「師匠はデリカシーっていうのをどっかに置いてきただろ、絶対」
「シア君の口からデリカシーなんて言葉が聞けるとは…」
「バカにしてんのかクソジジィ!!」
ったく、と言いながらシアは残りのシチューを口に運ぶ。
どっち、という問いは返事をするつもりはなかった。
今日は魔力コントロールの練習くらいにしか魔力を使っていない。補充しなければいけないほど魔力を消費はしていないから、今日はしなくてもいい、と思ったのだ。
シアの内心を読んだのか、ユージーンは苦笑して、「ばかになんてしてませんよ」という一言でこの会話を終わらせた。
その夜、シアが眠りについてから、ユージーンは静かに家を出た。
家出、などではなく、依頼をこなすためだ。
自分の留守中の万が一を考えてシアの魔力を補充しておこうかと思っていたのだが、夕飯時の反応で、年頃の男子だ、そりゃ魔力補充のためだけに抱いたり抱かれたりというのはいやだろうと思って、それ以上は突っ込めなかった。
(魔力云々がなくても、シア君としたい、なんて、…ああ、我ながら馬鹿げている)
ユージーンは、二百年以上の生のなかで、恋人がいたことはない。
誰かを好きになるには、事情が切羽詰まっていた。
人間として好きになる人はいても、それが恋愛には発展しなかった。
体の関係だけなら幾人もあるが、行きずりの関係の方が多かった。
こんな、1人と何度も深く肌を重ねた経験など、なかったのだ。
(当時と事情は変わっていないけれど、昔ほどの焦りがないからでしょうか?)
なぜ彼にここまで心を持っていかれそうになっているのかがユージーンには自分で自分が理解できなかったが、このままではいけないと、心の底で警鐘が鳴る。
(多分、このままでは)
自分は彼を、閉じ込めてしまう。
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昨日は体調崩して更新できませんでした、すみませんっ。
だんだんシリアスというか、それぞれの事情が見えてきそうです。
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