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章1
幕間 【恋人の後を追ったら一緒に転生してしまったので、帰宅チートで今度こそ幸せになります】 (1)
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※ほんの少しですが、火事の描写があります。
プロットでは火事のシーンから詳細に書いていたのですが、
例の事件もあり、少々改変いたしました。
お話の都合上、放火をしたという設定自体は変更が難しく、
その点に関してはそのまま掲載しております。
**********
やあ、気分はどうかな。
深くに沈んでいた意識が、知らない男の声によって浮上する。
「……ここは」
目を開けるが、何も見えない。
外灯の一切ない夜道のような、闇の広がる世界だった。
「ああ、地獄か。和仁は来なかったか? ……来ないかもしれないな」
声を掛けてきた男の姿は見えない。
閻魔大王だか仏様だか知らないが、死者を導く、または罰を与える……そんな類の存在なのだろう。
俺は自らの意思で死んだ。
そんなに大それた話じゃない。
恋人が不慮の事故で先に死んでしまったので、一人で生きていくのが嫌になって自殺したというだけのことだ。
あの日は、あいつの誕生日だった。
それなのにあいつは自分ですっかり忘れてシフト入れたもんだから、新居で朝から喧嘩して……そのまま、二度と会えなくなった。
和仁がバイト中に通り魔に遭い、即死したという話を聞いた、翌日のこと。
俺は、和仁と二人で購入した家に火をつけた。
そしてその中で睡眠薬を飲んだ。
家を道連れにした自殺だ。
庭付きの一軒家でお隣さんも居ない田舎だ。
周辺に被害が及ぶ可能性は低いと踏んでいたが、念のため火の手が回りきってから119番通報できるように携帯を設定しておいた。
流石に俺も、色恋沙汰の果ての自害に他人を巻き込むほど馬鹿じゃない。
「あんたは神様か何かだろ? 俺はこれからどこに行って、どんな罰を受けるんだ?」
「罰を与えるつもりはないんだけど、ちょっと頼みごとがあってね」
男は、自分が神であることを否定しなかった。
何を頼まれるのか知らないが、俺に拒否権なんてないんだろう。
少しだけ身構えていると、神は頼みごとの内容をさらっと説明した。
俺をこれから異世界に転生させ、他の日本人転生者たちと戦ってくれとのことだ。
「もちろん、スキルは与えるし相応のステータスにもしてあげられるよ。転生ポイントの許す限りだけど、願い事も聞いてあげられる」
願い事、ね。
俺の願いなんて、ひとつしかない。
「和仁を――少し前に死んだ俺の恋人を、よみがえらせることはできねえかな?」
できれば、和仁だけでも日本で生き返らせてやりたい。
難しければ一緒に異世界に転生してスローライフを送るのでもいい。
少なくとも、今から俺を転生させることができるのだから、後者くらいはどうにかなるだろう。
「うーん……そのまんま生き返らせるのは無理だよ。君を転生させるためのリソースの余剰分で願いを叶えてるんだもん。ああでも、完全復活じゃなくていいなら……」
「どういうことだ?」
「君に与える……いわゆる「チートスキル」は、「住宅」に関係するものなんだ。だから君は今から、あの家と一緒に転生することになる」
「よくわかんねえんだけど」
「つまりね、君が燃やしたあの家が、そっくりそのままコピーされて異世界の森の中に立地することになる。君は転生直後、その家の中で目覚めるんだよ」
転生後の状況については分かった。
それなりにラノベは読んできた方だし、お決まりの展開、テンプレ、というのはあらかた理解している。
どういう状況から転生させられようと、別に構わない。
だが、それと和仁の転生とどう関係があるというんだろう。
「早く説明しろって顔だね。君の恋人は現状、そのまま転生させるのは無理なんだ。でも、「君の家」に住む「守護精霊」という形でなら、恋人を復活させてあげられるよ。ちょうど君のスキルには、ナビの人格が必要だしね」
そういうことか。
人として転生させてやることができない、だから「完全復活とは言えない」ということらしい。
「この場合、君の恋人は「住宅」の敷地内から出ることが出来ない。庭くらいなら、スキルレベルが上がれば出られるけど」
家に縛られて自由が全くない状態。
そして精霊という立場で復活するのだから、おそらく人間の俺とは寿命も違ってくるだろう。
この条件で進めてもらっていいものか、少しばかり逡巡する。
「ああ、あくまで、君の恋人を完全復活させてあげられないのは「リソースが足りないから」だからね。増やせば、後天的にでも完全復活に持ち込めるよ」
「そりゃ、どういうことだ?」
「転生者を倒してもらう、って言っただろう? このゲーム、転生者を倒すと、君の手持ちポイントが貯まるようになってるんだ。ポイントそのものが、僕の言う「リソース」だと思ってくれれば良い」
「……つまり、一旦守護精霊として復活しても、俺が勝ち進めばそのうち人間になれるってことか?」
天界だか地獄だか、肉体を持たない状態のはずなのに動悸がしてくる。
俺の理解が正しければ、もう一度、あいつに会えるかもしれないのだ。
「そうだね。異世界の方で復活してもらうことになるけども」
「構わない。それで頼む」
生前、プロゲーマーとして稼いでいた俺の腕の見せどころ。
対人戦闘系のゲームは、その中でも得意中の得意だ。
必ず、復活のリソース分を稼ぐまで勝ち進んでみせる。
それから俺は転生前に、自分で選べないメインスキルの方は仕様だけ聞き、自分で選べるサブスキルの方を厳選していくことにした。
メインとなる俺のスキルは<ホーム>。
「日本での住まいを再現した自宅」を任意の場所にて設置・収納・再設置が可能。
自宅は電気・水道なども日本のものが再現されており、毎月水道・光熱費代わりのMPを支払うことでいつでも使用可能。
家具はどれだけ粉々に破壊されても、毎月のMP消費の際に「自宅を作成した段階での状態」まで自動修復されるようになっている。
ここまでは、おおよそ戦闘向けとはいえないスキルのように見えるが、最後のこの一文で戦闘スタイルがひらめいた。
――”世界のどこにいても、自宅を設置した場所に任意で転移帰還できる”。
そう。暗殺者だ。
そして、転生後。
ステータス欄からは、勝利条件もおあつらえ向きのものになっていることが確認できた。
<勝利条件>
ポイント対象者の「暗殺」。
自分の正体や殺意を相手に知られずに倒すこと。
例として、「寝ているものを殺す」「毒物を使う」「遠くからの狙撃」など。
「……健? 俺は、なぜ家に……」
不自然ではあるが、異世界の森の中に再現された「日本の自宅」。
ステータス画面から初月分のMPを支払うと、リビングに一人の男が姿を現した。
和仁だ。
「おかえり、和仁」
記憶は、仕事中のあの日から止まった状態で仮復活すると聞いている。
まずはおまえの誕生日パーティーな。
俺は料理はできないから和仁に作ってもらうことになるけど。
やり直そう、俺たちの全部が終わったあの日を。
そして今度こそ、この家で暮らすんだ。
せっかく建てた夢のマイホーム、日本ではほとんど満喫できなかったしな。
プロットでは火事のシーンから詳細に書いていたのですが、
例の事件もあり、少々改変いたしました。
お話の都合上、放火をしたという設定自体は変更が難しく、
その点に関してはそのまま掲載しております。
**********
やあ、気分はどうかな。
深くに沈んでいた意識が、知らない男の声によって浮上する。
「……ここは」
目を開けるが、何も見えない。
外灯の一切ない夜道のような、闇の広がる世界だった。
「ああ、地獄か。和仁は来なかったか? ……来ないかもしれないな」
声を掛けてきた男の姿は見えない。
閻魔大王だか仏様だか知らないが、死者を導く、または罰を与える……そんな類の存在なのだろう。
俺は自らの意思で死んだ。
そんなに大それた話じゃない。
恋人が不慮の事故で先に死んでしまったので、一人で生きていくのが嫌になって自殺したというだけのことだ。
あの日は、あいつの誕生日だった。
それなのにあいつは自分ですっかり忘れてシフト入れたもんだから、新居で朝から喧嘩して……そのまま、二度と会えなくなった。
和仁がバイト中に通り魔に遭い、即死したという話を聞いた、翌日のこと。
俺は、和仁と二人で購入した家に火をつけた。
そしてその中で睡眠薬を飲んだ。
家を道連れにした自殺だ。
庭付きの一軒家でお隣さんも居ない田舎だ。
周辺に被害が及ぶ可能性は低いと踏んでいたが、念のため火の手が回りきってから119番通報できるように携帯を設定しておいた。
流石に俺も、色恋沙汰の果ての自害に他人を巻き込むほど馬鹿じゃない。
「あんたは神様か何かだろ? 俺はこれからどこに行って、どんな罰を受けるんだ?」
「罰を与えるつもりはないんだけど、ちょっと頼みごとがあってね」
男は、自分が神であることを否定しなかった。
何を頼まれるのか知らないが、俺に拒否権なんてないんだろう。
少しだけ身構えていると、神は頼みごとの内容をさらっと説明した。
俺をこれから異世界に転生させ、他の日本人転生者たちと戦ってくれとのことだ。
「もちろん、スキルは与えるし相応のステータスにもしてあげられるよ。転生ポイントの許す限りだけど、願い事も聞いてあげられる」
願い事、ね。
俺の願いなんて、ひとつしかない。
「和仁を――少し前に死んだ俺の恋人を、よみがえらせることはできねえかな?」
できれば、和仁だけでも日本で生き返らせてやりたい。
難しければ一緒に異世界に転生してスローライフを送るのでもいい。
少なくとも、今から俺を転生させることができるのだから、後者くらいはどうにかなるだろう。
「うーん……そのまんま生き返らせるのは無理だよ。君を転生させるためのリソースの余剰分で願いを叶えてるんだもん。ああでも、完全復活じゃなくていいなら……」
「どういうことだ?」
「君に与える……いわゆる「チートスキル」は、「住宅」に関係するものなんだ。だから君は今から、あの家と一緒に転生することになる」
「よくわかんねえんだけど」
「つまりね、君が燃やしたあの家が、そっくりそのままコピーされて異世界の森の中に立地することになる。君は転生直後、その家の中で目覚めるんだよ」
転生後の状況については分かった。
それなりにラノベは読んできた方だし、お決まりの展開、テンプレ、というのはあらかた理解している。
どういう状況から転生させられようと、別に構わない。
だが、それと和仁の転生とどう関係があるというんだろう。
「早く説明しろって顔だね。君の恋人は現状、そのまま転生させるのは無理なんだ。でも、「君の家」に住む「守護精霊」という形でなら、恋人を復活させてあげられるよ。ちょうど君のスキルには、ナビの人格が必要だしね」
そういうことか。
人として転生させてやることができない、だから「完全復活とは言えない」ということらしい。
「この場合、君の恋人は「住宅」の敷地内から出ることが出来ない。庭くらいなら、スキルレベルが上がれば出られるけど」
家に縛られて自由が全くない状態。
そして精霊という立場で復活するのだから、おそらく人間の俺とは寿命も違ってくるだろう。
この条件で進めてもらっていいものか、少しばかり逡巡する。
「ああ、あくまで、君の恋人を完全復活させてあげられないのは「リソースが足りないから」だからね。増やせば、後天的にでも完全復活に持ち込めるよ」
「そりゃ、どういうことだ?」
「転生者を倒してもらう、って言っただろう? このゲーム、転生者を倒すと、君の手持ちポイントが貯まるようになってるんだ。ポイントそのものが、僕の言う「リソース」だと思ってくれれば良い」
「……つまり、一旦守護精霊として復活しても、俺が勝ち進めばそのうち人間になれるってことか?」
天界だか地獄だか、肉体を持たない状態のはずなのに動悸がしてくる。
俺の理解が正しければ、もう一度、あいつに会えるかもしれないのだ。
「そうだね。異世界の方で復活してもらうことになるけども」
「構わない。それで頼む」
生前、プロゲーマーとして稼いでいた俺の腕の見せどころ。
対人戦闘系のゲームは、その中でも得意中の得意だ。
必ず、復活のリソース分を稼ぐまで勝ち進んでみせる。
それから俺は転生前に、自分で選べないメインスキルの方は仕様だけ聞き、自分で選べるサブスキルの方を厳選していくことにした。
メインとなる俺のスキルは<ホーム>。
「日本での住まいを再現した自宅」を任意の場所にて設置・収納・再設置が可能。
自宅は電気・水道なども日本のものが再現されており、毎月水道・光熱費代わりのMPを支払うことでいつでも使用可能。
家具はどれだけ粉々に破壊されても、毎月のMP消費の際に「自宅を作成した段階での状態」まで自動修復されるようになっている。
ここまでは、おおよそ戦闘向けとはいえないスキルのように見えるが、最後のこの一文で戦闘スタイルがひらめいた。
――”世界のどこにいても、自宅を設置した場所に任意で転移帰還できる”。
そう。暗殺者だ。
そして、転生後。
ステータス欄からは、勝利条件もおあつらえ向きのものになっていることが確認できた。
<勝利条件>
ポイント対象者の「暗殺」。
自分の正体や殺意を相手に知られずに倒すこと。
例として、「寝ているものを殺す」「毒物を使う」「遠くからの狙撃」など。
「……健? 俺は、なぜ家に……」
不自然ではあるが、異世界の森の中に再現された「日本の自宅」。
ステータス画面から初月分のMPを支払うと、リビングに一人の男が姿を現した。
和仁だ。
「おかえり、和仁」
記憶は、仕事中のあの日から止まった状態で仮復活すると聞いている。
まずはおまえの誕生日パーティーな。
俺は料理はできないから和仁に作ってもらうことになるけど。
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