39 / 193
章1
幕間 【RPG推奨の異世界に乙女ゲー要素を持ち込んでしまった件~戦わなくても生き残れそう~】 (2)
しおりを挟む
さて、今日は父の仕入れについていくことになっている。
ウチはさほど力を持たない弱小の商人なので、積極的に仕入先に出向いて良い物を自力で取り揃えないと成り立たない。
目を肥やすという意味でも、重要な工程だ。
ちなみに、今のところウチの子供は私一人。
兄や弟がいれば、跡取りは必然的に兄弟に任されて私は嫁に出ることになるのだけれど、結婚の遅かった両親にはもうこれ以上子供が望めない。
嫁に行くか、家業を継ぐかの二択。
もちろん家業を継いで、婿を取るつもり。
まだ先の話だけれど、今のうちから父の仕事内容はしっかり勉強しなきゃならない。
これも平凡かつ平和で幸せな人生を送るためである。
乙女ゲームみたいな争いの起こりにくい舞台がいいなら、大陸中央のラークロクト国に移住するといいよ……と神様からアドバイスを貰っているのだが、家族を置いて自分一人他国へ移るのは気が引ける。
父の跡を継いだら、店舗をその国に移してしまうのもいいかも、くらいには考えているが。
父の雇った冒険者が四人。
父と御者を含めて、荷馬車には七人が同乗している。
荷物はほとんど乗せていない。
行きがけにも何か持って行って行商でもしたほうがいいだろうって?
もちろんそのつもりだ。
馬車には乗せていないが、運ぶべき荷物はすべて私が持っている。
この半年でクローゼット――ラノベ的にはアイテムボックスと言うべきか、乙女ゲームで言うところの収納機能をステータスのシステムメニュー画面に発見したからである。
収納魔法を使えるとなれば、どこの商人の家も欲しがる人材間違いなし。
私にチート戦力がなくとも、実家に必要な技能を持った異性を探すことができるだろう。
この機能を発見してからと言うもの、父は私が商人として家を継ぐことに諸手を挙げて賛成するようになった。
ステータス画面を見ることの出来ない父には「クローゼット」は収納魔法系のスキルとして理解されているようだが、冒険者になるわけではないのでまあ大差ない、と思う。
知識チートはしたくないけれど、馬車、とにかくお尻が痛い。
この揺れどうにかならないんだろうか。
そんなことを考えながらの道中、「気配察知」スキル持ちの冒険者さんが突然顔を上げた。
「盗賊だ! 十……十五は居る」
「おいおい、ちょっと多すぎるぜ」
「まだ襲撃体勢には入っていない。ガリア、魔法で数を減らせないか」
「私のMPだと、広範囲魔法は2発が限界だ。それ以降の戦いに一切参加できなくなる」
どうやらこれから盗賊の襲撃があるらしい。
冒険者を雇っているから必ず安全が保証されているってわけじゃない。
「すまない、ギルネルさん。応戦するから一度馬車を止めてくれるか。御者のおっちゃんもお嬢ちゃんも、馬車から出てきて一カ所に固まってくれていたほうが守りやすい」
雇っていた冒険者パーティーのリーダーが父に告げる。
大丈夫なのかなあ。
言われるまま全員で馬車を降りると、既に周囲には盗賊たちが待ちかまえていた。
剣を鞘ごと外して、リーダーが盗賊たちの前に立つ。
そして、非情な台詞が続けられた。
「俺たちは冒険者だ。護衛を放棄する」
「えっ!?」
車内での会話から、苦戦を覚悟のうえで応戦してくれるものと考えていたらしい気の良い父が、驚愕の声を上げた。
うーん、なんかそんな感じはしてた。
装備をその場に残して、冒険者四人組はそのまま撤退してしまった。
盗賊たちも、わざわざ戦闘のプロと戦って手勢を損なうよりは見逃して荷だけを狙った方が実入りが大きいと考えたのだろう。
特に背中から攻撃するということはなく、馬車と私たちの方へじりじりと詰め寄ってくる。
「ルイーザ! 逃げなさい!」
父が悲壮感をあらわにした表情で、私を突き飛ばした。
突き飛ばした……というにはちょっと力が入っていなかったようだから、押した、というのが表現的には正しいかもしれない。
「父さん……」
私のRank――レベルは6。
一人で逃げるなら、どうにかいけるか?
でも、父や巻き込まれただけの御者のおじさんを見捨てるのは、ちょっと。
何か役立つものはなかっただろうか。
私のスキル、お化粧とお勉強とダンスだもんなあ。
転生者の単独襲撃ばかり気にして、こういう「日常に潜む危険」について特に対策をしてこなかった私が悪いのかもしれない。
「女か。処女なら高く売れるぞ」
「お頭が手ぇ出さなきゃな!」
「違えねえ」
考え込んでいると、盗賊の一人が私に目をつけて腕を掴んできた。
「いやっ」
「る、ルイーザ!」
とっさに。
そりゃもう、ごく普通に日本人女性が少々強引なナンパ男に手を取られた時の抵抗、ってくらいのささやかさで。
「離して!」
男を突き放した、……つもりだった。
私の抵抗の手に払われた盗賊は、まるでバッティングセンターで打ち返された野球ボールのように、空高くへとうち上げられた。
「……あ?」
「へ?」
「……はい?」
沈黙が、あたりを包み込む。
しばらくして、高層ビルからの転落事故かと思ってしまうほどのスピードで男が地面に落ちてくる。
う、うええ、即死だよこれ。
じゃなくて。
なにこれ?
「……え?」
何が起こったのか。
少女のか弱い抵抗が、高レベル冒険者の全力の拳よりも強かった、としか言いようがない。
そんなわけがあるか、と判断した盗賊たちは、私がひそかに魔法を使って不意打ちしたのだと判断したらしい。
女一人に明らかなオーバーキルだろう手斧を振りかざしてくる。
カキン!
No damage!
私の肩から胸までを切り裂こうとした斧は、綺麗に弾かれた。
……今、なんかすごい音とポップアップの書き文字が見えた気がする。カキン?
「……うら若き乙女の柔肌からしてはいけない音が聞こえた気がする……」
ていうかうら若き乙女の柔肌は斧を弾かないよ!
弾くのは水だけにしようよ!
「私」の異常さに、盗賊たちが凍りつく。
「おい」
「アレだ」
「全身甲冑の男……」
「まさか、アレは、男じゃなくて――」
「……お、俺はもう逃げるぞ! あんな化け物に関わっていられるか!」
盗賊のうち一人が、そう言い放って脱兎のごとく駆け出した。
恐慌状態に陥った男たちも、一斉にほうぼうへ駆け出していく。
た、助かったのか……。
「ルイーザ、……あの力は?」
父が、私に声を掛ける。
命の危機だったのだ、御者のおじさんは腰を抜かしていても仕方ない。
「力? いや、別に普通だよ。えっと、ラン……レベルが6、みりょ、攻撃が120、防御が285、なんだけど……」
普通、だよね。
普通だよね。
神様にも普通にしてくれって言ったもの。
確かにレッスンでレベルが上がるから、同い年の少女の中ではきっと一番強いだろうっていう自覚くらいはあるけど、たかがレベル6だよ。
ダンジョンに潜っているレベル20の冒険者とかは、単純計算でも私の3倍は強いはずだし。
私の言葉に、父は目頭を押さえた。
「天才だ。うちの娘は、商才や収納魔法だけでなく、冒険者としての才能まであったのか……!」
あ、ああ、まあ、一度も魔物退治に行ったことのない娘がレベル6相当のステータスを持っていれば確かにびっくりするか。
驚かせちゃったかな。
「ルイーザ。落ち着いて聞いてくれ」
「うん」
「まず、一般冒険者のレベル帯は10、初心者は2や3だ。さっき逃げた冒険者のやつらも、リーダーのレベルは8だったと聞いている」
衝撃の事実でした。
……じゃあ私、「レッスン」だけで一般冒険者に近いRankに到達しちゃっていたの?
え?
いや、確かに地道にコツコツやるのは大好きだし、毎日欠かさずやってきてはいたけど、正直化粧して本読んでリズムゲームで踊ってただけだよ?
「レベル6になっていたなんて……毎晩部屋に篭って何をしているのかと思ったら、素振りでもしていたんだろう。夜抜け出して魔物を狩ったりもしていたんじゃないか?」
してないです。
光る床の上で踊ってました。
「父親としては、どうして夜中にそんな危険なことを、と咎めたいところだが……それはおまえの努力の証拠でもある。それよりも、攻撃と防御がどちらも三桁超えはすごいことだ!」
「へ」
「ステータス三桁超えなんて、上級冒険者でもようやく到達できる域だぞ」
血の気が引いた。
私、そういえば、一般人の平均ステータス値なんて、ここ半年、調べたっけ?
震える声で、父に訊ねる。
「……ちなみに、上級冒険者の平均レベルは」
「多くは20だ。合同パーティーでワイバーン討伐なんかを行うのが主な指名依頼のはずだぞ」
ああ。
あああ。
アーーーーーーーーーーーッ!
アーーーーーーーーーーーッ!
やらかしたーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
「あ、あ……AP……HPやMPは、どうなの?」
「どちらも他のステータスとほとんど同じだ。上級冒険者でやっと三桁に到達する」
HPもMPも、言わなくてよかった。
HP2410とMP322の十二歳ガールは、ちょっと、化け物だ。
最前線でワイバーンを切り伏せる筋骨隆々の冒険者、レベル20台のステータスを、私が持っているのはヤバい。
そりゃ盗賊も吹っ飛ぶよ。
ゴリラだよ。
ゴリラじゃん。
Rank(レベル) :6
AP(HP) :●●●●●●●●●○(2169/2410)
LP(MP) :◆◆◆◇◇(194/322)
魅力(攻) :120
知力(防) :285
パフォーマンス(速) :109
「聞いてない……聞いてないよ……」
改めて考えてみても、メイクの練習で攻撃力、読書で防御力が上がるって、普通におかしいよね。
完璧にチート化を避けるつもりなら、違和感には徹底的に突っ込んでいくべきだった。
最初に記憶維持のまま転生というファンタジックな出来事を経験してしまったから、「たぶんそんなもんなんだろう」で済ませてしまっていたのだ。
避けてきたつもりだったけど、これもやっぱ、チートだったんだ。
20人ちょっといる異世界からの転生者、彼らに与えられる予定のチート能力の中で、もっとも無難で平凡で、「それなり」でいられるスキル。
「何が……何が「それなり」だバカヤローーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
突然叫び出した娘に父が何事かと目を白黒させたが、もうしょうがないの。
システムメッセージ:
<雄叫び>が習得可能になりました! 「魅力」を「5」消費して<雄叫び>を習得しますか?
「うるさいわ!」
【求】
ゴリラに婿入りしてくれる「普通の男性」。
【譲】
一日三度のメイクアップ講座でゴリラになるチートスキル。
泣きたい。
ウチはさほど力を持たない弱小の商人なので、積極的に仕入先に出向いて良い物を自力で取り揃えないと成り立たない。
目を肥やすという意味でも、重要な工程だ。
ちなみに、今のところウチの子供は私一人。
兄や弟がいれば、跡取りは必然的に兄弟に任されて私は嫁に出ることになるのだけれど、結婚の遅かった両親にはもうこれ以上子供が望めない。
嫁に行くか、家業を継ぐかの二択。
もちろん家業を継いで、婿を取るつもり。
まだ先の話だけれど、今のうちから父の仕事内容はしっかり勉強しなきゃならない。
これも平凡かつ平和で幸せな人生を送るためである。
乙女ゲームみたいな争いの起こりにくい舞台がいいなら、大陸中央のラークロクト国に移住するといいよ……と神様からアドバイスを貰っているのだが、家族を置いて自分一人他国へ移るのは気が引ける。
父の跡を継いだら、店舗をその国に移してしまうのもいいかも、くらいには考えているが。
父の雇った冒険者が四人。
父と御者を含めて、荷馬車には七人が同乗している。
荷物はほとんど乗せていない。
行きがけにも何か持って行って行商でもしたほうがいいだろうって?
もちろんそのつもりだ。
馬車には乗せていないが、運ぶべき荷物はすべて私が持っている。
この半年でクローゼット――ラノベ的にはアイテムボックスと言うべきか、乙女ゲームで言うところの収納機能をステータスのシステムメニュー画面に発見したからである。
収納魔法を使えるとなれば、どこの商人の家も欲しがる人材間違いなし。
私にチート戦力がなくとも、実家に必要な技能を持った異性を探すことができるだろう。
この機能を発見してからと言うもの、父は私が商人として家を継ぐことに諸手を挙げて賛成するようになった。
ステータス画面を見ることの出来ない父には「クローゼット」は収納魔法系のスキルとして理解されているようだが、冒険者になるわけではないのでまあ大差ない、と思う。
知識チートはしたくないけれど、馬車、とにかくお尻が痛い。
この揺れどうにかならないんだろうか。
そんなことを考えながらの道中、「気配察知」スキル持ちの冒険者さんが突然顔を上げた。
「盗賊だ! 十……十五は居る」
「おいおい、ちょっと多すぎるぜ」
「まだ襲撃体勢には入っていない。ガリア、魔法で数を減らせないか」
「私のMPだと、広範囲魔法は2発が限界だ。それ以降の戦いに一切参加できなくなる」
どうやらこれから盗賊の襲撃があるらしい。
冒険者を雇っているから必ず安全が保証されているってわけじゃない。
「すまない、ギルネルさん。応戦するから一度馬車を止めてくれるか。御者のおっちゃんもお嬢ちゃんも、馬車から出てきて一カ所に固まってくれていたほうが守りやすい」
雇っていた冒険者パーティーのリーダーが父に告げる。
大丈夫なのかなあ。
言われるまま全員で馬車を降りると、既に周囲には盗賊たちが待ちかまえていた。
剣を鞘ごと外して、リーダーが盗賊たちの前に立つ。
そして、非情な台詞が続けられた。
「俺たちは冒険者だ。護衛を放棄する」
「えっ!?」
車内での会話から、苦戦を覚悟のうえで応戦してくれるものと考えていたらしい気の良い父が、驚愕の声を上げた。
うーん、なんかそんな感じはしてた。
装備をその場に残して、冒険者四人組はそのまま撤退してしまった。
盗賊たちも、わざわざ戦闘のプロと戦って手勢を損なうよりは見逃して荷だけを狙った方が実入りが大きいと考えたのだろう。
特に背中から攻撃するということはなく、馬車と私たちの方へじりじりと詰め寄ってくる。
「ルイーザ! 逃げなさい!」
父が悲壮感をあらわにした表情で、私を突き飛ばした。
突き飛ばした……というにはちょっと力が入っていなかったようだから、押した、というのが表現的には正しいかもしれない。
「父さん……」
私のRank――レベルは6。
一人で逃げるなら、どうにかいけるか?
でも、父や巻き込まれただけの御者のおじさんを見捨てるのは、ちょっと。
何か役立つものはなかっただろうか。
私のスキル、お化粧とお勉強とダンスだもんなあ。
転生者の単独襲撃ばかり気にして、こういう「日常に潜む危険」について特に対策をしてこなかった私が悪いのかもしれない。
「女か。処女なら高く売れるぞ」
「お頭が手ぇ出さなきゃな!」
「違えねえ」
考え込んでいると、盗賊の一人が私に目をつけて腕を掴んできた。
「いやっ」
「る、ルイーザ!」
とっさに。
そりゃもう、ごく普通に日本人女性が少々強引なナンパ男に手を取られた時の抵抗、ってくらいのささやかさで。
「離して!」
男を突き放した、……つもりだった。
私の抵抗の手に払われた盗賊は、まるでバッティングセンターで打ち返された野球ボールのように、空高くへとうち上げられた。
「……あ?」
「へ?」
「……はい?」
沈黙が、あたりを包み込む。
しばらくして、高層ビルからの転落事故かと思ってしまうほどのスピードで男が地面に落ちてくる。
う、うええ、即死だよこれ。
じゃなくて。
なにこれ?
「……え?」
何が起こったのか。
少女のか弱い抵抗が、高レベル冒険者の全力の拳よりも強かった、としか言いようがない。
そんなわけがあるか、と判断した盗賊たちは、私がひそかに魔法を使って不意打ちしたのだと判断したらしい。
女一人に明らかなオーバーキルだろう手斧を振りかざしてくる。
カキン!
No damage!
私の肩から胸までを切り裂こうとした斧は、綺麗に弾かれた。
……今、なんかすごい音とポップアップの書き文字が見えた気がする。カキン?
「……うら若き乙女の柔肌からしてはいけない音が聞こえた気がする……」
ていうかうら若き乙女の柔肌は斧を弾かないよ!
弾くのは水だけにしようよ!
「私」の異常さに、盗賊たちが凍りつく。
「おい」
「アレだ」
「全身甲冑の男……」
「まさか、アレは、男じゃなくて――」
「……お、俺はもう逃げるぞ! あんな化け物に関わっていられるか!」
盗賊のうち一人が、そう言い放って脱兎のごとく駆け出した。
恐慌状態に陥った男たちも、一斉にほうぼうへ駆け出していく。
た、助かったのか……。
「ルイーザ、……あの力は?」
父が、私に声を掛ける。
命の危機だったのだ、御者のおじさんは腰を抜かしていても仕方ない。
「力? いや、別に普通だよ。えっと、ラン……レベルが6、みりょ、攻撃が120、防御が285、なんだけど……」
普通、だよね。
普通だよね。
神様にも普通にしてくれって言ったもの。
確かにレッスンでレベルが上がるから、同い年の少女の中ではきっと一番強いだろうっていう自覚くらいはあるけど、たかがレベル6だよ。
ダンジョンに潜っているレベル20の冒険者とかは、単純計算でも私の3倍は強いはずだし。
私の言葉に、父は目頭を押さえた。
「天才だ。うちの娘は、商才や収納魔法だけでなく、冒険者としての才能まであったのか……!」
あ、ああ、まあ、一度も魔物退治に行ったことのない娘がレベル6相当のステータスを持っていれば確かにびっくりするか。
驚かせちゃったかな。
「ルイーザ。落ち着いて聞いてくれ」
「うん」
「まず、一般冒険者のレベル帯は10、初心者は2や3だ。さっき逃げた冒険者のやつらも、リーダーのレベルは8だったと聞いている」
衝撃の事実でした。
……じゃあ私、「レッスン」だけで一般冒険者に近いRankに到達しちゃっていたの?
え?
いや、確かに地道にコツコツやるのは大好きだし、毎日欠かさずやってきてはいたけど、正直化粧して本読んでリズムゲームで踊ってただけだよ?
「レベル6になっていたなんて……毎晩部屋に篭って何をしているのかと思ったら、素振りでもしていたんだろう。夜抜け出して魔物を狩ったりもしていたんじゃないか?」
してないです。
光る床の上で踊ってました。
「父親としては、どうして夜中にそんな危険なことを、と咎めたいところだが……それはおまえの努力の証拠でもある。それよりも、攻撃と防御がどちらも三桁超えはすごいことだ!」
「へ」
「ステータス三桁超えなんて、上級冒険者でもようやく到達できる域だぞ」
血の気が引いた。
私、そういえば、一般人の平均ステータス値なんて、ここ半年、調べたっけ?
震える声で、父に訊ねる。
「……ちなみに、上級冒険者の平均レベルは」
「多くは20だ。合同パーティーでワイバーン討伐なんかを行うのが主な指名依頼のはずだぞ」
ああ。
あああ。
アーーーーーーーーーーーッ!
アーーーーーーーーーーーッ!
やらかしたーーーーーーーーーーーーーーーーッ!
「あ、あ……AP……HPやMPは、どうなの?」
「どちらも他のステータスとほとんど同じだ。上級冒険者でやっと三桁に到達する」
HPもMPも、言わなくてよかった。
HP2410とMP322の十二歳ガールは、ちょっと、化け物だ。
最前線でワイバーンを切り伏せる筋骨隆々の冒険者、レベル20台のステータスを、私が持っているのはヤバい。
そりゃ盗賊も吹っ飛ぶよ。
ゴリラだよ。
ゴリラじゃん。
Rank(レベル) :6
AP(HP) :●●●●●●●●●○(2169/2410)
LP(MP) :◆◆◆◇◇(194/322)
魅力(攻) :120
知力(防) :285
パフォーマンス(速) :109
「聞いてない……聞いてないよ……」
改めて考えてみても、メイクの練習で攻撃力、読書で防御力が上がるって、普通におかしいよね。
完璧にチート化を避けるつもりなら、違和感には徹底的に突っ込んでいくべきだった。
最初に記憶維持のまま転生というファンタジックな出来事を経験してしまったから、「たぶんそんなもんなんだろう」で済ませてしまっていたのだ。
避けてきたつもりだったけど、これもやっぱ、チートだったんだ。
20人ちょっといる異世界からの転生者、彼らに与えられる予定のチート能力の中で、もっとも無難で平凡で、「それなり」でいられるスキル。
「何が……何が「それなり」だバカヤローーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
突然叫び出した娘に父が何事かと目を白黒させたが、もうしょうがないの。
システムメッセージ:
<雄叫び>が習得可能になりました! 「魅力」を「5」消費して<雄叫び>を習得しますか?
「うるさいわ!」
【求】
ゴリラに婿入りしてくれる「普通の男性」。
【譲】
一日三度のメイクアップ講座でゴリラになるチートスキル。
泣きたい。
0
あなたにおすすめの小説
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる