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章1
幕間 【RPG推奨の異世界に乙女ゲー要素を持ち込んでしまった件~戦わなくても生き残れそう~】 (1)
しおりを挟むこりゃまたクセのある人を引いたな、と、その時神は思った。
普段日常生活でゲームを熱心にやっている女性のようだったから、彼女の死に際に声をかけたのだ。
異世界転生はいかがですか、と。
日本人はその宗教観や文化の関係上、超常現象への適応力や理解度が高い。
特に、ゲームやアニメ、ライトノベルを好む層は解説の手間が省けるため、この手の人材選びにはうってつけだったのだ。
しかしこれは、横着したのがまずかったかな。
転生特典を授ける段階になって、候補の彼女が「そんなものいらない」と拒絶し始めたのだ。
異世界転生の提案、転生者ゲームへの参加協力。
どちらも、「既に日本で死んでしまったのなら私はどうでもいいです」、「来世での身の振り方を考えられるぶんありがたいです」と比較的感触は良好であった。
それなのに、だ。
「……えっと、なんで?」
「チートは大嫌いなんです!」
話を聞く限りでは、どうも彼女はもともと努力で成り上がる――いわゆるスポ根系――作品を好んでいたらしい。
ここ最近の異世界転生、チート持ち……という、テンプレートが一周回って最早古典な展開のライトノベルを毛嫌いしていたのだそうだ。
まあ、日本はいまチート作品に溢れてるからね。
だが、どうしたものか。
能力を与えずにゲームに参加させることもできないわけではないが、能力無しでは簡単にゲームが終わってしまう。
「でも、君が今から参加するのはバトルロワイヤルだよ? そこまでキツいゲームじゃないし、戦いたくないならそれでも構わないけど、ある程度戦うすべは持っておかないと」
まず、説得を試みる。
彼女も一切聞く耳持たずという態度ではないため、考えるそぶりを見せた。
譲歩できる妥協点を探っているようだ。
「チートが溢れてるってことですか? 大人も子供もおねーさんも周囲が全員チートなら、多少変な能力持ってても目立たないかな……」
「溢れるってほどでもないけど……僕が把握してる限りでは、転生者は今んとこ二十人ちょっとかなあ」
さすがに、異世界生まれ異世界育ちの一般人にまで全員に能力を付与するわけにはいかない。
「では、その二十人のチートスペックの、ちょうどど真ん中……くらいの能力をください。他の参加者に襲われた時に追い払えるだけの力があればそれで大丈夫です。「それなり」の人生が送れる程度で。自分の幸せは自分で掴みますから」
こちらの情報に、彼女はようやく妥協点を見つけれくれた。
「なるほど、そういうのもアリだね。確認だけど、じゃあ君はあんまり戦わない方向でいきたいのかな?」
「はい。現代知識なんて絶対持ち込みませんし、それなりにお金をかせいでそれなりの異性を捕まえて、それなりの結婚生活を送る予定です」
彼女の希望がそれなら、まあ大丈夫だろう。
ステータス欄や転生先の設定を、希望に沿うように弄っていく。
「ふんふん、お金を稼いで異性を捕まえて普通に結婚……オッケー。ポイントの割り振りとかはこっちで決めちゃっていいの?」
「他の転生者たちから身を守る以外に使うことはないと思うので、お任せします」
「分かった。それじゃあ、努力次第でお金を稼げそうな身分、普通に生活していれば異性との出会いがありそうな環境、っていうのを重視して転生先を決めるね」
ちょっと予想外だったけども、こういう人もいていいでしょう。
たぶん。
他はどうなるか知らないけどね。
----------
はあ、本当にやってきてしまいましたよ異世界。
私の今生の名前は、ルイーザ。
現在十二歳だ。
転生前のスペック調整は神様に全部お任せしてしまったおかげで、私は
「食うには困らないが贅沢はできない財力」の、
「しがない商人の娘」、
「職業適性はジョブ:「商人」」、
という、まあいわゆる「それなりの地位でそれなりの幸せが約束された家庭」に生まれた。
でもこれ、中世風のファンタジー異世界だと結構恵まれた生まれな方だと思う。
前世の記憶を持ったままの転生だったけれど、幼少期を大人の意識のままで過ごすのは苦痛だろうということで、記憶を取り戻すのは十二歳段階だった。
つまり、私の記憶が蘇ってからまだ半年しか経過していない。
神様の話では、他の転生者は三歳とか五歳とかで記憶を取り戻すことを希望する人が多いらしい。
私は遅めなのだけれど、まあ一般人として生きていく予定であることを神様に宣言していたので、これは神様の配慮でしょう。
幼い頃から大人の思考力や知識量を持っていて、神童なんて言われても困るしね。
一応、現状の確認をするとこんな感じ。
<ステータス>
【マイプロフィール】
ルイーザ 12歳
称号(職業) :商人の娘
Rank(レベル) :6
AP(HP) :●●●●●●●●●○(2169/2410)
LP(MP) :◆◆◆◇◇(194/322)
魅力(攻) :120
知力(防) :285
パフォーマンス(速) :109
レッスン :0/3 *あと23:12:04
ステータス画面に関しては、RPGをまったくやらない私のために神様が考慮してくれたらしい。
私がやってきたゲームは、戦闘要素のないものばかり。
乙女ゲーム、アイドル育成ゲーム、ひたすら同じステージを繰り返すだけのパズルゲーム。
そんな状態なので、とりあえず最後にやった乙女ゲームと同じ「マイプロフィール」というUIに寄せてくれたようだ。
この世界における各ステータスの正式な表記までカッコ書きで補足してくれているという親切設計。
カッコ書きがない部分については独自ステータスのような気がする。
「レッスン」とかいう項目ね。
この世界、どうも一部の転生者によって日本の商品が持ち込まれているらしく、かなり高価で魔道具扱いになっているとはいえ、時計や懐中電灯などが手に入る。
でも、うちはごく小さな商人の家。
そこまで裕福というわけでもないので、この世界の道具だけで生活している。
時計というか、時間を計る意味合いではこのステータス欄の「レッスン」を毎日決まった時間に消費すればいいだけなので、ここだけはいつも使わせてもらっている。
APやLPが単純な時間経過で回復するのではなく睡眠や食事、療養の時間で回復する……というのもなんだか違和感があるが、そこは現実世界なのだから仕方ない。
ちなみに、Rank――レベルが6になっているが、別に魔物と戦ったり武者修行をしたりしたわけではない。
記憶を取り戻して、ステータス欄がこの仕様になったのだってつい半年前だ。
これは、「レッスン」によるものである。
一日あたり3回行える、乙女ゲームにおける修行のようなもので、「レッスン」を使うと「化粧」「読書」「リズムゲーム」のいずれかがランダムで始まる。
化粧については日本製の化粧品がどこからともなく降ってきて、「システムメッセージ:BGMが鳴り終わるまでにメイクアップ!」とアオリが出てくるのだ。
「読書」については課題図書よろしく空中から本が現れるので読むだけで済む。
「リズムゲーム」は……ほら、アレ、ゲーセンで光る床の上で足踏みしなきゃいけないやつあるじゃない。
アレがね、地面でいきなり光り出す。
何気なくやっていた乙女ゲーム内のミニゲーム、ヒロインちゃんはこんなたいへんなことを毎度行っていたんだろうか。
なんか申し訳ない。
なのでどうしても自宅、自室にひとりでこもっていられる時間――真夜中に行うことになるのだけれど。
提示された条件をクリアすると、戦っていなくてもステータスが上がっていく。
そしてステータスが一定値まで上がると、「システムメッセージ:プリンセスパワーの試練が始まります!」とアオリが出てきて、再びミニゲーム。
クリアでレベルが上がるというわけだ。
おそらく、神様のいう「スーパースキル」というのが「レッスン」なのだろう。
戦わなくても日課のミニゲームを地道にこなせば、最低限身を守る力が身に付いていく。
チートを嫌がり、戦うのにも乗り気でなかった私のためにこのスキルを選んでくれたのかもしれない。
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