人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

す!ず!は!

文字の大きさ
33 / 193
章1

商売敵と恋敵(4)

しおりを挟む
『誰だそいつ?』

 帰ってきたウィルの開口一番がそれだった。
 開口、といっても彼の姿は見た目ちょっと大きなロウソクの火、口がどこなのか分からないが。

(哲司さん。ショップスキル持ちの転生者なんだって)

 こちらの説明に一瞬警戒した気配のウィルだったが、すぐにその雰囲気は薄れて『ふーん』と返される。
 何かあっても転移で逃げればいいと考えているのだろう。

(勝宏たちは?)

『おう、なんか随分離れた森の中にいたぜ。特に目立った怪我はなさそうだった。こっちに戻るつもりだったみたいだから、町の方角教えて誘導しといたが』

(そっか、ありがとう。無事ならいいんだ)

 しかし、他人には姿の見えないはずのウィルがどうやって勝宏たちを誘導したのだろう。
 石を投げるとか木の枝で地面にメッセージを書くとか、考えてみると怪奇現象である。
 勝宏たちが驚いていなければいいが。

『こいつと何してたんだ?』
(あ、こっちの事情を話したら、哲司さん、勝宏たちを探すのを手伝ってくれて――)

 そうだ。彼らの無事は確認できたのだから、これ以上哲司の手を煩わせる必要はない。

「あ、あの、哲司さん」
「うん?」

「もう、大丈夫です。探していただかなくて」
「え、いいの? どうした、急に」

 唐突な捜索中断に哲司が面食らった様子を見せる。
 言ってしまってから、彼を納得させられるだけの理由を考えていなかったことを後悔した。

 まさか身内の悪魔、精霊……に様子を見に行ってもらっていたなんて打ち明けて信じてもらえるとは思えない。
 この異世界、勝宏いわく精霊の存在が一般的でない世界である。
 ウィルが他人に見えるならまだ希望はあっただろうが。

「え、ええと、その」
「……ひょっとして、俺のとこに来てくれる気になったか?」

 空から降りてくるドローンの機体をアイテムボックスに収納しつつ、哲司がこちらを伺いみる。
 そうだ、ウィルが帰ってきたことですっかり頭から抜け落ちていたが、勝宏が見つからなければ哲司のところに厄介になるという話をしている途中だったのだ。

「いえ、それは……」

 結局その誘いは保留状態だが、自分の不用意な一言で蒸し返してしまった。
 それも、言い訳のし辛い方向に。

「そいつとは別に、なんでもないんだろ?」

 哲司が肩を抱いてくる。
 その手がするりとおりてきて、腰を撫でた。

「んっ……あ、あの」
「あー、初っぱなから男が好きだなんて言ったのはまずかったかなー」

 気のせいかな、今、言葉の途中で尻を揉まれたような。
 身体を強ばらせていると、手は継続して不埒な動きを見せる。

「やめて、ください」
「透くんのことそういう目で見てるのは確かだけどね、うちに連れ込んだって俺もいきなり襲いかかったりはしないから」

「ご、ごめんなさい……」

 ああ、じゃあ気のせいか。
 哲司はここまで勝宏たちを一緒に探してくれた良い人だ。他意はないんだろう。
 どうしよう、と内心途方に暮れているところ、尻のあたりを撫で回していた手が突然離れた。

「透に触るな」

 振り返る。
 そこにいたのは、すごい形相で哲司の手を掴んでいる勝宏と、何故か両手で顔面を覆っている詩絵里だった。

「勝宏、詩絵里さん。よかった、無事で……」
「それより透、こいつ何。なんで透にセクハラしてんの」

 勝宏が哲司の手を離し、透との間に割り込んできた。
 先ほどのウィル以上に警戒心むき出しである。

「で、でも、さっきのはたぶん、偶然当たってただけだから……」
「思いっきり触ってたじゃん。透も抵抗しないし」

 不機嫌そうな勝宏と、痴漢扱いされたからか似たような表情で勝宏を睨みつける哲司に目を遣る。
 何か誤解があるようだから状況を説明したいところだが、どう切り出せばいいか分からない。

 取り持ってくれないかな、と意識した視界の端には、顔を押さえっぱなしの詩絵里が見える。
 ここに来る途中でどこかにぶつけたんだろうか。助けは期待できそうにない。

 哲司が先に口を開いた。

「何か用かな、少年」
「あ、あの、哲司さん、俺の探してた人が」

「ああ君か。待ち合わせに遅れて透くんを不安にさせてた男っていうのは」

 いやに刺々しい。
 半泣きになっていると、復活した詩絵里が会話に入ってきた。

「哲司? あら、元ご主人様の商売敵さんじゃない」
「商売敵?」

 また地味に不穏なワードが追加されてしまった。

「元ご主人様――ザンドーズは、まあ悪党ではあるんだけど、商売に関してだけはわりかしまっとうにやってきたのよ。んでも所詮中世レベルの文明、現代日本商品を無限に輸入できちゃう転生者には敵わないわ。だいぶ顧客持ってかれて、焦ってたみたい」

 だからジュエリット族がどうこうなんて話に飛び付いたのよね。
 詩絵里が奴隷契約印のカムフラージュを解きながら、話を続ける。

「商売敵――ショップスキル持ちの転生商人さんが、どうして透くんと一緒なのかしら?」

 転生者、と聞いた勝宏に、軽く体を押しのけられた。
 詩絵里の方へ後退させられ、詩絵里にまで腕で庇われる。
 実際弱いのは分かっているが、あからさまに女性にまで守られると自分が情けなくなってくる。

「詩絵里さん、哲司さんはその、詩絵里さんたちを一緒に探してくれてて」
「そうだったの。それはありがとう商売敵さん、わざわざ私たちを迷いの森ガトプラナまでトラップで飛ばしてくれて」

 トラップ? 迷いの森?
 二人が森にいたという話はウィルからも聞いていたが、まさか人間を遠くへ飛ばすトラップに遭遇していたとは思わなかった。

 話からすると、それを仕掛けたのが哲司だということらしいが、何かの間違いじゃないだろうか。

「なるほど、お連れは両方転生者か」

 大きく息を吐き出して、哲司が肩を竦めた。

「……哲司さん?」
「悪かった。彼女の言うことはほぼ事実なんだ」

 否定してくれるものと思っていたのに、放り出された言葉は真逆の内容だった。

「一目惚れだったんだよ。君を町で見かけた時。一緒にいるそこの少年と笑い合っていた君に、どうしようもなく惹かれた」




****************************************

再び作者コメント失礼します。

水森なつる(@minanatu)さんにまたいただいてしまいました……^///^



詩絵里がめちゃめちゃ美少女になっている……!
なつるさんの描く女の子はおっぱいが綺麗で可愛いのでいただいた時ウオーーーーキターーーーっと叫んでしまいました。

実は他にもいただいているので更新のたびにちょくちょく自慢していこうと思いますうふふ……へへへ……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。 ----------------------------------------- 0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新! Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜

春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、 癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!? トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。 彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!? 
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて―― 運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない! 恋愛感情もまだわからない! 
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。 個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!? 
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする 愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ! 毎日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新) 基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!

魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。 「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」 現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません? 魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。 BL大賞エントリー中です。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

処理中です...