人生初の友達ができたので一緒に世界救ってきます (せかます)

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章1

幕間 【転生腐女子、異世界でもネサフする~攻撃は最大の防御~】 (2)

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「……え? 男二人の絡みが見たいだけなんだよね? 貴族に転生して、あっちで男の奴隷二人用意して交尾させるんじゃ駄目なの?」

「ナマモノには萌えないクチなんで。……てか神様にとっては交尾扱いなのか」
「うん、ナマ……? なんだって?」

「……えっと、現実の男に興味はないんです。嫌ってわけじゃないけど、私、ジャンル長続きするタイプで。推し変しにくいので、今のところナマモノジャンルに移行する予定はないっていうか」

「はあ、そんなもんなの?」
「はい。そんなわけで、私にはネットが必要です。厳密には二次元ジャンルでの二次創作による萌が必要です」

「ほんとにいいんだね? 奴隷になっちゃうけど」
「構いません。記憶を持ったままの転生で推しCPが見れないことこそが地獄です」

「そ、そう……」
「ところで、課金系はやっぱり無理ですかね? 有料サイト登録で公式の漫画連載追えたりしないです?」

「無理だねえ。もうちょっとポイント貯めてくれれば、後日アップグレードは可能だよ」
「分かりました。それはこっちで考えます」

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 神とのやりとりを思い出しながら、ふと考える。
 奴隷の件こそ最重要項目ではあるが、原作を追うためにはポイント集めも必要になりそうだ。
 ああ、もう完結したかなあ。

 農民身分なんて、借金をはじめとして奴隷狩りに口減らし、人攫いに戦争など、奴隷落ちフラグはいつでもどこでもいくらでも転がっているものだ。

 いつ奴隷落ちするか分かったものじゃない。
 その緊迫感は、締め切り前の「尻に火が付いた状態」とよく似ていた。

 記憶を取り戻してから五年、八歳になった詩絵里は死に物狂いで魔法の習得に力を注いだ。

 この世界では魔法を使うには冒険者登録が必要とされるが、有用なスーパースキルを所持する転生者に限ってはその限りではない。
 村の人間に気付かれないよう、幼馴染――クレアという、幼いながらに某歌劇で男役を張りそうなイケメン女児だ――の目すらも盗んでの訓練である。

 幸い、村には珍しいものを収集するセインダン爺さんという人が住んでいた。

 八歳にもなれば、両親は頼み込めば台所を使わせてくれるようになる。

 日本知識で作った料理と引き換えに、魔術書やスクロールを少し見せてもらって解析。
 そして自分で再現する、という手法で魔法を学んでいく。

 詩絵里のステータスは、はっきり言って子供には異常だ。
 親にも打ち明けられていないため、魔物狩りにはまず行けない。
 レベルは上げられないまでも、使える魔法の数と魔法知識は増やしておくべきなのだ。

 次に、呪術について。
 聞けば、奴隷契約印というのは呪術士によって開発されたものであるとのこと。
 ならば呪術に手を出し、奴隷契約印を解析した際に自力で解除できるようになれば脱走の助けになるだろう。

 それから、最低限の資金だ。
 資金さえあれば装備が買える。
 どうやら詩絵里は完全攻撃特化の魔法使いステータスのようなので、いっそ防御を捨てて攻撃極振りのほうがいいだろう。
 攻撃は最大の防御、というやつである。

 ……そう、個人サイトというのはとても自由な城だ。
 サーバー元の規約はあれど、それらは非常にゆるやかなものばかり。
 管理人の趣味の結晶、それが個人サイト。つまり、だ。

 マヨネーズの作り方から爆弾の作り方まで、個人サイトで調べ放題、なのである。

 まあさすがにこの世界に存在しない調味料は自力で再現できるようになるまで使えないけど。

 そうやってネットでおもしろげなものを見つけては作成、を繰り返して小銭を稼ぎ、さらに数年が経過した。


 15歳。
 女騎士を目指すというクレアの訓練に付き合う、という名目で、一緒に狩りに出かけることが増えた。

 レベルは14になった。

 経験値倍増系スキルがあればもうちょっと伸びたんだろうけど、そればっかりは仕方ない。

 それにしても、奴隷化イベント来ないな。
 ひょっとして奴隷化のこと神様忘れてるんじゃないか。
 自分のせいじゃないし、連絡手段もないし、それならそれで構わないんだけれども。

 記憶を取り戻してから12年も経つと、緊迫感はだいぶ薄れていた。

 貯蓄も結構な額が貯まっている。
 町に出ればそれなりの装備は買えるだろう。

 幼馴染のクレアは、騎士の養成学校へ行った。
 彼女に直接渡しても受け取ってもらえる気がしなかったから、入学資金は親経由で彼女の両親に手渡してある。

 さらば、イケメン顔の幼馴染よ。
 立派な騎士になって、存分に男装の麗人ロードを突き進んでくれたまえ。



 都会へ出る幼馴染を見送って、しばらくした頃。
 突然、村に兵隊さんたちがやってきた。


 彼らは隣国リコートの兵を名乗って、略奪を始めた。
 この村が所属している本国、レシーンズへ進軍するための補給、なのだそうだ。

 村人たちはそれを鵜呑みにして、無抵抗で嵐が去るのを待っていた。

 だが、詩絵里の解析には彼らの装備品が「レシーンズ産」であることが記載されている。

 無抵抗のままでも、もみ消すためにどのみち村には火をかけられるに違いない。
 そして、女性のほとんどが尊厳を踏みにじられることだろう。

 魔法を使って地下に穴を掘り、隣町までのトンネルを作り上げた詩絵里は、村人たちをこっそりそのトンネルで逃がすことに成功した。

 さて、村に残るは詩絵里自身だけ。

 信頼のおける前衛――クレアが、せめてこの場にいれば。
 そしたら村も、村人もここに留まらせたままで、奴らを撃退してみせたのに。

 レベルを上げても増加するのはMPと攻撃力だけで、HPがギリギリ三桁、防御と速度が二桁な自分では、この数相手の防衛戦は難しい。

 もしやこれ……これこそが、詩絵里に用意された奴隷化イベントなんじゃなかろうか。

 確証はない。一歩間違えれば、切り殺されるかもしれない。
 攻撃力はチートでも、HPと防御力はちょっとだけ鍛えた村娘程度でしかないのだ。

 だが、詩絵里にはなんとなく、確信があった。

 トンネルの入り口を魔法で隠蔽して、前に出る。

「村人はどうした」
「失礼。この機に、全員灰にしてやりました」

 言って、家のひとつに火属性魔法を放つ。
 極大魔法とされるそれは、輝きを放ったのち、家を一瞬で消滅させた。

「私の生まれ持ってのこの魔法、村人にとっては異質なものだったのでしょう。受け入れられることなく、私はこれまで虐げられて生きてきたのです」

 嘘八百の三文芝居だが、はたしてどこまで通用するか。
 無理くさかったらこの場で爆発魔法でも唱えて一掃するしかあるまい。
 ものすごく痛いだろうけど。

「復讐の機会を与えてくださった皆様には感謝しております」

 頭からつま先まで、リーダー格らしき男が詩絵里を確認する。
 もう一声。詩絵里はその場で膝をついた。

「この力、いかようにも。私はあなたがたの軍門へ下りましょう」

 ――賭けには、勝った。

 詩絵里はその場で殺されることなく、奴隷契約印を刻まれて連れて行かれることになった。

 行き先はやはり、本国レシーンズ。
 奴隷契約印さえ先に刻んでしまえば所属が隣国でなかろうと騙されたと騒がれようと問題ないと踏んだのだろう。
 まあ最初から知ってましたが。

 しかし、奴隷契約印。解除には意外と時間かかりそうだな。
 聞いていた奴隷契約印はもっと単純なものだったが、印を施した呪術者が詩絵里の魔法を直接目の当たりにしていたせいでその力を恐れ、でたらめに印を継ぎ足しまくったのだと思われる。

 ダンボールに封をしたガムテープの上から、さらにガムテをべたべた貼りまくって強固にしようとするのと同じ感覚だ。

 これを一本ずつ順に解いてくのめんどくさいぞ。
 解析をもってしても、1~2年はかかりそうだ。急ぐもんでもないけど。

 軍で使われたり、商人に引き渡されたりしながら、詩絵里はのんびり印を解除していくのであった。
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