205 / 554
第14章 家族の思い出
第189話 友達と蒼一郎
しおりを挟む「なんだ、家に呼べる友達いるんじゃん!誰とやったの?」
「え!?」
瞬間、あかりは自分の失言に気づき、顔を蒼白させた。
しまった! まさか、ゲームをした相手が「男性」だなんて、口が裂けても言えない!
もし、そんなことを言ったら、弟から、すぐさま父や母に伝わるだろうし、そして、伝われば──
(絶対、実家に連れ戻される……!)
あの日、恋人と偽り大野を追い払ってくれた飛鳥と、その後、暫くゲームをして時間をつぶすことになった、あかり。
だが、はっきりいって、お互いに恋愛感情など一切ないし、彼はただの友人で、やましいことなど一つもない。
だが、さすがに一人暮らしの娘が、家に男を入れたとなると、今晩にでも、緊急家族会議が開かれそうだ。
「う、うん……たまたまね、女友達が遊びに来たの」
「そうなんだ。大学の人?」
「うん、大学の人」
「へー、どんな人? 可愛い?」
「え? か、可愛い? えーと、可愛いよりは、美人って感じかな? よく本読むみたいで、本を貸してくれて」
「へーそうなんだ。なんだ、それなりに楽しくやってんじゃん!」
「そ……そーね」
理久から視線をそらし、あかりは目を泳がせる。
だが、嘘をついたことに多少の罪悪感を感じたが、まぁ、良しとしよう。
それに、あながち間違ってない。
実際に美人だし、大学の人だし!
(それに、神木さんて、本当に女友達って感じだし)
あの見た目のせいか、彼にはあまり危機感を感じない。しかも、彼は自分と同じで「人を好きになれない」らしい。
それを、わかっているからか、あかりとしても、何とも気が楽なことだった。
「あ、そうだ! 姉ちゃん、一応言っとくけど、友達だとしても、男は絶対家に入れちゃだめだからな!」
「え!?」
すると、まるで心を読んだかのように、理久がそう言って、あかりはびくっと肩を弾ませた。
「男女の友情は成立するタイプと、しないタイプがいるって、父さんが言ってた! 姉ちゃんは、絶対成立しないタイプだから、気をつけろって! 男友達だと安心させて部屋に上がった瞬間、豹変するやつもいるんだって、姉ちゃんなら、秒で襲われるって!」
「秒!? て、お父さん、小学生の息子に何教えてるの?!」
まだ、小学生にの弟に、そんな赤裸々な男女の事情を教えているのか!?
これは、あとで、母経由で、父に問いたださなくてなるまい。
「でも、ホント気をつけろよ。あっちじゃ、頼れる人、誰もいないんだから!」
「う、うん、わかってるよ。(まぁ、神木さんは大丈夫だよね? 実際、何もされてないし)」
冗談で「押し倒すよ」などと言われたが、自分の危機管理能力を説いていたから、その為だと思う。
「あ……」
「?」
すると、その雑談を区切るように、少し真面目な顔をした理久が、また声を上げた。
霊園から暫く歩き、あかりの実家の近くまで来た時、実家の前に、男性が一人立っているのが見えて、あかりは、その場にピタリと足を止めた。
「蒼一郎さん……」
理久が発したその名を聞いて、あかりは息をつめた。
自宅の前に立っているのは、背の高い30代半ばの男性。
髪をオールバックにした爽やかな雰囲気のその男性の名は「高梨 蒼一郎」
「母さん、もう帰ってきてんのかな?」
家の前に立つ、蒼一郎を観察しながら理久が再び声を発した。
どうやら、朝、用事があると出て行っていた母が、もう帰ってきているのだろう。
玄関先で軽く会釈をした蒼一郎が、あかりの実家の中に入っていくのが見えた。
「姉ちゃん……大丈夫?」
「……!」
その光景を見て、理久が、そっとあかりの手を握りしめた。
「やっぱり……まだ、忘れられない?」
「…………」
その言葉に、あかりはその瞳に小さく影を宿す。
忘れられない。
忘れられるはずがない。
あんなこと───
「もう少し……外、出とこうか? 蒼一郎さんが、帰ってからでも……」
そう言って、どこか心配そうにあかりを見つめる理久。
その姿が、あまりに優しくて、あかりは理久を見つめ、申し訳なさそうに苦笑する。
きっと、蒼一郎と鉢合わせしないように、気を使っているのだろう。
姉が、あの日のことを
また、思い出さないように──
「大丈夫よ、理久」
だが、あかりは、その後ふわりと微笑むと、理久の手をキュッと握り返した。
まだ、幼いはずの弟の手が、その瞬間だけ、やたらと逞しく感じた。
いつもこうして、家族に心配をかけている。
あの日から、ずっと──
でも、もう、あの頃のように、泣き崩れることも、笑えなくなることも──ない。
だって、一人で生きていくと決めた、あの時に
私はやっと
前に進めるようになれたんだから──
「本当に、大丈夫かよ」
だが、どこか疑うような視線を向ける理久に、あかりはまた、苦笑いを浮かべる。
「本当に、大丈夫!」
「それならいいけど……あ、そうだ」
「?」
「姉ちゃん、今日、お風呂どうする? 一緒に入る?」
「…………」
だが、その後、さも当たり前のように放たれた理久の言葉に
「ちょ、ちょっと理久! あんた今の発言、さすがにアウト!! とてつもなくシスコンこじらせてるように聞こえるから、ホントにやめなさい!!」
「はぁ!? こっちは心配してだけど!! てか、俺シスコンじゃねーし!!」
「シスコンでしょ!? 私の友達みんな言ってる!」
「嘘だろ!?」
「あの、ゴメンね……理久がそうなったの、やっぱり私のせいだよね!? ゴメン、本当にゴメン!」
「謝んな! なんか、すごく恥ずかしくなってきた!」
家族に心配をかけるあまり、どうやら弟を、超ド級のシスコンに変えてしまったらしい。
あかりは、目の前の優しすぎる弟の将来に、とてつもない不安を感じたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい
空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。
孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。
竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。
火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜?
いやいや、ないでしょ……。
【お知らせ】2018/2/27 完結しました。
◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる