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第8章 遭遇
第110話 親と子
しおりを挟む「いつか子供もつなら、6人くらいいてもいいかな~」
「ろ、6人?!」
一方、あかりは、飛鳥が放ったその発言に、ひどく顔をひきつらせていた。
いくら子供が好きだからと言って、6人は、さすがに多くないだろうか?
てか、人を好きになれないなんて、いっておきながら、子供は6人もほしいって、それってかなり矛盾してる気がする!!
「6人って、さすがにそれは、将来奥さんになる人がビックリしますよ? せめて4人じゃないですか?」
「え? 4人も6人もそんなに変わらないでしょ?」
「いや、変わるでしょ!」
のちに、この人の奥さんになる人が現れるのかと思うと、あかりは少しだけ可哀想な気がした。
だが、これだけの美男子だ。もしかしたら本当に6人産みたいという女が現れても、おかしくなくなさそうで、なんだかちょっと複雑だ。
「……でも、まさか、そこまで"子供好き"だとは思いませんでした」
「そう? だって子育てって、大変だけど楽しいよ~♪」
(なに、この人、隠し子でもいるの? いや、いてもおかしくないけど……)
子育て経験豊富そうな発言に、あかりはちょっと困惑する。
すると、まるで異星人でも見るようなあかりに「そんなにおかしいか?」と首を傾げた飛鳥は、再度あかりに話をふってきた。
「じゃぁ、あかりだったら、何人欲しい?」
「え? 子供ですか?」
「うん。参考までに♪」
「そうですね。私は……」
欲しい子供の人数を聞かれ、あかりはふむと考え込む。
「いりません」
「え?」
だが、予想外の返答に、今度は飛鳥が瞠目する。
「は? いらないって何が?」
「え? だから子供が」
「え? その見た目で?」
「見た目? どういう意味ですか。見た目で子供産む産まないが決まるんですか?」
にっこりと笑顔で反論され、今度は飛鳥が複雑な心境になる。
意外だった。こんな「母性の塊」みたいな顔して、まさか子供嫌いだったとは、人は見かけによらないとは、まさにこの事だ。
だが、子供嫌いなら、なぜエレナにあんなに親身になれるのだろうか?
それに、あかりが目指しているのは司書。図書室の先生になるなら、どうしたって子供と関わるわけで……
「そういえば……あかりは、なんで司書目指してるの?」
「え?」
「本が好きなのはわかるけどさ、図書室の先生って、子供と関わる仕事だし。それに進路決めるのギリギリだっとか言ってたよね? 地元にはなかったの、行きたい大学?」
飛鳥からの突然の質問。あかりは、それを聞いて、僅かに視線を泳がせると
「あ、いえ……本当は、地元の大学を受けるつもりだったんですけど……色々考えて、家を出ることにして……」
「……」
「それに、私は……神木さんみたいに『誰かの役にたちたい』とか、そんな立派な目標があるわけではなくて……ただ、一人で生きていくために必要な学歴とか資格を、とっておきたかっただけなんです」
「……え?」
一人で──?
「なんで……」
「お母さん、痛い!!」
「「!?」」
瞬間、どこからか切羽詰まるような声が聞こえた。
聞き覚えのある声だった。
飛鳥とあかりが、咄嗟に声がした方に目をむければ、公園の外の歩道で、強引に腕を引かれながら叫ぶ子供の姿があった。
「お母さん、ごめん! ごめんなさい……っ!」
「エレナ、言ったはずよ。学校から戻った後は、もう家からでちゃダメだって」
「あ……っ、それは……」
母親らしき女性に叱られているエレナ姿。
だが、涙を流しながら必死に謝るエレナの姿が目に入った瞬間、あかりは、顔を青くしベンチから立ち上がった。
(あれって……エレナちゃん……っ)
そして、その腕を掴むのが、エレナの母親である「紺野ミサ」だということがわかった瞬間、あかりは思わず身を強ばらせた。
直接、目にするのは初めてだった。だが、エレナから母親の話はよく聞いていた。
本来なら、口を挟むべきではないのかもしれない。でも……
ガシッ──!!
「!?」
だが、あかりがベンチから離れようとした瞬間、隣にいた飛鳥が、突如あかりの腕を掴んだ。
突然、腕を捕まれ、あかりは瞠目する。
「あ……あの、神木さん、離してください、エレナちゃんが……!」
「──ダメだ」
「え?」
それは、聞き取れないくらい、小さな声だった。
だけど、ハッキリと聞こえたその言葉に、あかりは困惑する。
それはまるで「行くな」とでも言うかのようで……
「神木、さん……?」
なぜ引き止めるのかが分からず、あかりが飛鳥を見つめる。
だが、飛鳥の瞳は、ただまっずぐエレナたちにむけられていた。
(っ……なんで)
なんで、あの人が
ここにいるんだ────?
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