神木さんちのお兄ちゃん!

雪桜 あやめ

文字の大きさ
113 / 554
番外編 お兄ちゃんとお酒

お兄ちゃんとお酒②

しおりを挟む

「いらっしゃいませー!」

 隆臣に連れられ、やって来たのは、ごくごく普通のこじんまりときた居酒屋だった。

 店内にはテーブル席と座敷があり。
 中はすでに客で賑わい、陽気な雰囲気が漂っていた。

「え? 知り合いの店ってここ?」

「ああ。そうだ」

「居酒屋じゃん」

「まーたまにはな。 、せっかくだから……」

「……」

 隆臣は、空いているテーブル席を指さし、飛鳥に返事を返すと、さりげなくお酒を飲むようにすすめる。

 うん。実にさりげない。
 それでいて、不自然なところなど一切ない。

「ねぇ、隆ちゃん……」

「なんだ?」

「お前、?」

「…………」

 鋭い!!
 こいつホント鋭すぎる!!

 今、疑うようなところあったか!? てか、なんで、ピンポイントで当たるんだ!?

「なんだ、いきなり」

 だが、隆臣はあくまでも平静を装い、飛鳥に返事を返す。

「なんだ、じゃないだろ? なに? お前、俺のこと騙したの? おかしいと思ったんだよね、夜誘うとか。てか、いつから隆ちゃん、俺の親父の回し者になったの?」

「別に居酒屋でも食事はできるだろ。酒飲みながら食事して、なにが悪いんだ?」

「へー……しらばっくれるんだ?」

 すると、飛鳥はむすっとした顔をすると、スマホを取りだし、文字を打ち始めた。

「なにしてるんだ?」

「んー……昌樹さん(隆臣の父[警察官])に、お宅の息子が、俺に無理矢理、酒飲ませて、良からぬこと企んでるって報告する」

「あほか、お前は!!?」

 よりによって、警察官の父にとんでもないメールを送信しようとしている飛鳥。

「あーもう! 仕方なかったんだよ! 侑斗さんにあそこまで言われたら!」

「だからって、騙してまで連れてくる? 警察官の息子がそんなことしていいの?」

「文句があるなら、お前の親父に言え! 酔ったら 据え膳確定まで言われてたぞ! どんだけ弱いんだよ、お前!」

「はぁ!? あのアホな親父の言ったことは忘れろ!! それに、俺、お酒弱くないから!」

「は?」

「父さんの晩酌にも普通に付き合ってるし、ある程度飲めるようになったよ。だから、飲みたいなら、騙して連れてくるんじゃなくて、普通に誘え」

「…………」

 ──あれ?

 隆臣は、呆気にとられた。
 なんか、聞いていた話と……違う??

「え? お前、弱くない……のか?」

「だから、 弱くないって……とりあえず、席つけば? テーブル席でいいの?」

 そういうと飛鳥は、先程、隆臣が指差した席に移動する。

「いや、だってお前、飲みにいくの嫌がってたろ!?」

 隆臣は、そのあとに続き、飛鳥と向かい合わせに腰かけると、メニュー表を手にした飛鳥に問いかける。

「そんなの、 酔っぱらいに絡まれるのが嫌だからに、決まってるだろ?」

「……」

 なぜか、妙に納得してしまった。確かに飛鳥は、あえてからまれるような所にはいかない。

「マジかよ! 侑斗さん、どんだけ過保護なんだよ!?」

「うちの父さん、かなり大袈裟だからねー……次からは聞き流せよ」

 なぜか、すごく振り回された気がする。
 親バカって怖い。

「それより、隆ちゃん、この店よく来るの?」

「あー…ここ親父の行きつけの店だからな。子供の時から、よく来てる」

「へーそうなんだー」

「お前のうちは、あんまり居酒屋には行かなかったのか?」

「まぁ、うちは子供3人だからね。どちらかと言えば、ファミレスの方が多かったかなー。それに父さん、家で飲むタイプみたいだし」

「なるほどな……」

「はい。隆ちゃん! 詳しいならテキトーに頼んでよ♪ オススメなやつ」

 そういうと、飛鳥はニコリと笑って、隆臣にメニュー表を差し出してきた。

 この様子だと、普通にお酒も飲むつもりらしい。隆臣は、少し拍子抜けしたが、飛鳥に言われるまま、料理やお酒を注文すると、あまり時間をおかずにビールや料理が運ばれてきた。

「では、またひとつオジサンに近づいた、隆ちゃんを祝して~♪」

「普通に祝えねーのか。悪意しか感じねーよ」

「そりゃ、普通に祝ってもつまらないし。はい! とりあえず、乾杯♪」

 何だかんだと、始まりは怪しかったが、どうやら当初の目的は達成できそうで、隆臣はさっきまでの自分を思いだし苦笑する。

 だが、二人のグラスが気持ちのよい音をたてれば、なんだか急に、お互いの幼い頃を思い出した。

 転校してきて、初めて話した相手が飛鳥だった。あの時は、こいつとこんなに長い付き合いになるなんて、夢にも思っていなかったが

(まさか、飛鳥と一緒に、酒飲む日が来るなんてなー……)

 そう思うと、不思議と大人になったような気がして、妙にしんみりしてしまうのは……やはり、お酒のせいなのか?


「隆臣~! 今日は父ちゃんは一緒じゃないのか!?」

「!?」

 するとそこに、一人の男が隆臣にむけて親しげに声をかけてきた。

 店の奥からでてきたその男は、この店の店主であり、時おり両親とこの店に訪れていた隆臣にとっては、顔馴染みのおじさんでもあった。

「あー、どーも。今日は親父はきてねーよ」

「そっか、残念だなーまた、宜しく言っといてくれ!」

 店主は隆臣に向け豪快な笑みをみせると、向かいに座る相手に気づいたのか、飛鳥のほうに視線を向けてきた。

「なんだ、隆臣! お前いつの間に彼女できたんだよ!!」

 だが、隆臣と飛鳥はその瞬間、思考を止めた。

「また、えらく美人な彼女だな~こんな美人連れて夜遊びとは、隆臣も大人になったなー」

 美人な彼女といいながら、店主が視線を向けているのは、どうみても飛鳥だった。

 そう、これは店主。明らかに勘違いをしている。

「いや、違……こいつは──」

「まったくお前は~彼女、酔わせてなにする気だ~! いきなり変なこと連れていくなよー!」

 といって、店主は隆臣の背中を叩くと、高らかな笑い声を響かせて、また再び厨房の奥へと消えていった。

 そして残された二人は、店主が入っていった厨房を呆然と見つめると

「飛鳥……」

「なに?」

「お前、今すぐその 髪、切るか、剃るか、抜くかしろ!!」

「剃るか、抜くかってなに!? おかしいだろ、その選択肢!? てか、なんで俺が怒られるの? 悪いのは、話聞かない、あのオジサンだろ?」

「いや、どうみても、お前が悪いだろ! 大体、なんで髪下ろしてきたんだ! てか、その見た目、マジでなんとかしろ!! 男に戻るか、女に生まれ変わるか、どっちかにしろ!」

「はぁ? お前、何言ってんの?俺、心も体もしっかり『男』なんだけど!?」

「いや、もう『実は、女でした』って言われても、驚かない自信がある」

「いや、驚けよ。お前、修学旅行のとき、一緒に風呂入っただろ? 俺、なんの迷いもなく男湯入ったよね?」

「あーそれな。 今だから言うけど、一部の男子から苦情がきてたぞ」

「どーいうこと!? なんで、苦情がくるの!? 意味わからないんだけど!?」

 女顔の飛鳥は髪を下ろすと、更に女性に間違えられやすくなる。

 だが、正直こういう勘違いをされるのだけは、本当に勘弁してほしい。隆臣は、長い付き合いを振り返り、切にそう思うのだった。



 ③につづく……
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ずっとヤモリだと思ってた俺の相棒は実は最強の竜らしい

空色蜻蛉
ファンタジー
選ばれし竜の痣(竜紋)を持つ竜騎士が国の威信を掛けて戦う世界。 孤児の少年アサヒは、同じ孤児の仲間を集めて窃盗を繰り返して貧しい生活をしていた。 竜騎士なんて貧民の自分には関係の無いことだと思っていたアサヒに、ある日、転機が訪れる。 火傷の跡だと思っていたものが竜紋で、壁に住んでたヤモリが俺の竜? いやいや、ないでしょ……。 【お知らせ】2018/2/27 完結しました。 ◇空色蜻蛉の作品一覧はhttps://kakuyomu.jp/users/25tonbo/news/1177354054882823862をご覧ください。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...