大人になったら母さんと結婚すると言っていた俺も大人になりました……だから母さん、結婚しよう

れん

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02、プロローグから現在

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 ーー高校時代ーー

『ねぇ、進路希望……何で就職にしたの? あなたの成績なら、良い大学を目指せるじゃない。学校の先生もあなたなら良いところを狙えるし、勿体ないって……進学費用くらい、お母さんもパートで働いて、きちんと積み立てしてるわよ?』

『それは母さんが離婚したときの生活費にとっておいてよ。俺には、大学進学なんかより、どうしてもやりたいことがあるから』

『り、離婚って……そういうのは、冗談でも言うものじゃないわよ! そんな簡単な問題じゃないし、あなただっているのに……そんなことより、あなた、バイトするからっておこづかいも受け取らないし、運動できるのに部活も入らず遊びにも行かず、ずーーっとバイトか家に居るばっかりじゃない。

 そりゃ、家のことも手伝ってくれるし、そのおかげで安心してパートに行けて、貯金もできているし、家で独りにならないから寂しくなくて、大助かりだけど……せっかくの高校を生活まったく楽しんでいるようにみえない……ストイックすぎて、親としては心配になるわよ。ねぇ、あなたは本当になにがしたいの?』

『離婚とか冗談で言ってるつもりは無いよ。長期間仮面夫婦なんだし、一緒にいる意味ないとか、1人の方が気楽とか、俺と居る方が楽しいとか、俺がいるから寂しくなんかない。いっそ離婚したほうが身軽になって好き勝手できて幸せなんじゃないかって言ってたじゃん』

『うぐっ!? そ、それは、たしかに言ったし、今もそう思うけど……だ、だからって、息子の青春時代を奪ってまでしたいことじゃないわよ! お母さんのことは大丈夫だから、もっと自分の人生を大事にしてよ!!』

『結婚生活続けるのは俺が成人するまでとか、独り立ちするまでって決めてるんでしょ? それなら少しでも早く俺が自立したら動きやすくなるんじゃない? 多少早まっても問題ないだろ。むしろ、苦しい時間は短い方がいい。

 俺としては、母さんの幸せを最優先したい。俺にとって母さんが幸せでいることは青春よりも大事な、人生をかけるくらい大事なことだよ。

 そもそも、学校は社会にでるのに必要なことを学ぶ場であって、遊ぶ場所じゃないし、遊び相手を探す場所じゃない。バイトは社会勉強。部活もしないで真面目に頑張ったおかげでそのまま正規雇用してもらえそうだし』

(最愛の女性を自分の手で幸せにすることの方が、興味がわかない有象無象のどうでも良い同級生との絡みよりも大切なんだよ。子供の頃から決めてたことなんだから、これは譲れない)

『それは、そうなんだけど……子供が変な気を使うもんじゃないの! 就職だって、急いでする必要もないじゃない。もっと良い条件で、働きがいがある場所だって探せばいっぱいあるのよ? 良い大学を出たら、もっと良い就職先があるかも知れないじゃない。

 それに、就職したら出会いなんて全くないわよ? 一番遊べる今の時期に相手を見つけておかないと、生涯独身よ?』

(結婚に失敗した私が言えた義理じゃないけど)
(結婚したい相手が実母とかに本人に言えない)

『……俺がしたいこと(母さんが有利に離婚できるようにクソ親父の身辺調査と、母さんのためにウェディングドレスと結婚指輪を用意して写真撮り簡単な挙式をするの)にはお金(とタイミングを計るために時間)がかかるから。

 今は大学に行って、高い学費を納めてまで学びたいことはないし、仕事しながらでも勉強はできる。進学費用を浮かして、そのぶん働いて、少しでも目標を早く達成するために稼ぎたいんだ』

『……はぁ、これは私がいくら言っても折れそうにないわね。仕方ない。あなたの将来に関わる話だから、一応お父さんを交えてちゃんと話をしましょう。大切な一人息子の将来のことなら、さすがにあの人も真剣に向き合ってくれるでしょ……』

『ああ、それならもう話したよ。勝手にしろって言質取ってるから』

『は、はぁ!? もう、あのクズ……どこまで家庭に無関心なのかしら……本気で今すぐにでも離婚しようかしら』

『そのときは、俺が母さんを養うよ。子供の頃からお小遣いとお年玉とバイト代まったく手を着けずに貯め込んでるから、結構貯まってるし。母さんと俺の生活費くらいならしばらく出せる。

 母さんと二人きりの生活のためなら、俺は24時間働ける……けど、できれば仕事が落ち着いて収入が安定するまで……二十歳になるまで待ってほしい』

『ちょっ、なにバカなこと言ってるの! ゆきのことだから、本当に貯金してて本気でそう言ってそうでめちゃくちゃ怖いんだけど!?

 いくらお母さんがおばさんと言っても、まだ子供の世話になるような歳じゃないから!! それに、お母さんは真剣にあなたの将来を心配しているんだからね!? 茶化すんじゃないわよ!!』

『それはちゃんとわかってるよ。俺だって、これでも色々考えてるんだから』

『あなたのことだから、しっかり考えて色々計画してるんだろうけど、お母さんとしてはそのやりたいことや、色々考えてきたことを今ここで聞きたいんだけど?』

『まだ秘密。まだその時じゃない。そのときがきたらちゃんと話すから』

『……絶対よ? 待つから、ちゃんと話しなさいよ? 約束だからね?』


 ーーそして現在 11月22日(金)ーー 


 高校を無事卒業した俺はそのままバイト先に正規社員として登用してもらい、早くも2年の時が過ぎて酒が飲める年齢になった……一度試してみたが、体が受け付けないことが判明して大変なことになったので、もう口にはしていないが、大人の仲間入りをしている。

「はぁ……眠い」

 疲れが溜まる休日前の金曜日。

 体を起こして時間を確認すれば、いつもの起床時間よりやや早いが二度寝するには遅過ぎる中途半端な時間。

 布団にくるまってダラダラしたいが、そんなことをしたら二度寝して遅刻確定だ。

「ふっ、くぅ……! はぁ」

 大きく伸びをして、強引に体を目覚めさせる。

 いくら気怠くても、今日は平日。気分を切り替えて動かないと……勤務態度はまじめで通しているのだから、遅刻は厳禁だ。

「まぁ、怠くても好きな人の顔をいつもより早く拝めると思えば、早く起きるのも悪くないか」

 好きな人……母のラフ過ぎな部屋着姿(ノーブラダボダボシャツに動きやすさ重視のゆるゆるジャージ。パンチラ付き)を思い浮かべると活力がわいてくる。

 一緒に情欲も湧いて、股間のエンジンが温まってしまうが、それをぐっとこらえて布団から這いだす。

 身支度を整えて自室を出ると、廊下には母が用意してくれた朝食のいい匂いが立ちこめていた。

「あら、おはよう。もうそんな時間?」

「おはよう、母さん。まぁ、いつもよりはちょい早いかな……親父は?」

 母に朝の挨拶をするが、父の姿が見あたらない。

「もうとっくに仕事に行ったわよ。私が起きて朝食の支度を始めるよりも前にね。休日は泊りで家に帰らないってメモがおいてあったわ」

 そう言って紙を見せてくるが、汚く歪な字で読みにくい……よくこれで昇進できたなと毎度思う。

「ふーん、そっか。毎度思うけど、出勤するの早くない? しかも休日に泊まり込みって……そんな忙しい職場じゃないでしょ、あそこ」

「さぁね。仕事の話どころか、日常会話ですら皆無なんだもの……どうでも良いわよ、あんな人。どうせ私の顔を見たくないだけよ。顔を合わせれば小言ばっかり言われるのが嫌で逃げてるんじゃない?

 あんなのでも、一応部下はいるわけだし。会社では大きな顔で居られるし。若くて可愛い女の社員もいるだろうしね」

 父は基本家に居ない。

 朝は早くに出勤し、夜は遅くまで仕事。泊まり込みで帰ってこない日もある……というか、泊まりの回数めっちゃ多いし、出張とか言って出たきり帰ってこない。

 忙しいんだといっているが、実際のところは違うだろう。忙しいかどうかなんて、父の会社を調べればすぐに解ること……残業しているかどうかなんて、通帳に記入される手取りの少なさですぐ解るというのに……隠す気なさそうだな。

 俺としては好都合だが、本当にバカだな。
 ばれていないと思っているのは本人だけだ。

「仕事って言うのもどこまで本当なのかしらね~。まぁ、家にお金を入れてくれているし、家に居ても正直不機嫌な顔されるだけだから居ない方が気楽で良いわよ。

 いっそのこと、浮気でもしてくれたら証拠揃えて慰謝料ふんだくって、さっさと離婚して若くて優しい旦那様を捕まえるために女磨きでもするところなんだけどね~。お前が捨てた女はこんなにイイ女なんだぞって、見せつけたらスカッとしそう」

 軽口を言う母だが、どこか寂しそうに感じる。
 本音はきっと、浮気なんてされたくないだろう。

 浮気をされるということは、女としての価値を否定されているようなものなのだ。気分がいいものじゃないはず。

 まぁ、残念なことに、既に浮気は確定で、証拠もしっかり揃えているんだけど、まだ早い。

「母さんは今でも十分魅力的な女性だよ。優しいし、いつも家事をしてくれて助かってるし、飯は美味いし。

 いつも元気で笑顔が可愛いし、おっぱい大きいし。昔より太ったとか言うけど程良い肉付きで抱き心地最高で、俺は良いと思う。ハグしたときに気持ち良いし、甘くていい匂いがして落ち着くし、マジで最高。いつまでもギュッとしていたい。

 服装とか見た目が黒髪短髪で地味メガネで派手さが無い陰キャっぽいとか気にしてるけど、俺は派手でケバケバしくて騒がしいのとか嫌いだから、むしろ俺好み。そのままでいてほしい。メガネは萌えポイントだから外さないで。それから……」

 だから今は、母を大事に思う男が傍にいることを意識させる。父を捨てた後、再婚なんか考えられないくらい、俺がいればそれで良いと思えるくらい。

「ちょっ、ちょっと、ストップ! ストップ!! あ、あなた、なに朝から母親を口説いてるのよ!! お、お世辞なんて言われても……息子にそんなこと言われたって、べ、べつに、嬉しくなんて、ないし……いくらお世辞を並べられたって、嬉しくないんだから! お世辞言ったところで、夜のおかずが一品増えるだけなんだからね!?」

 めっちゃテンプレなツンデレで慌ててる。可愛いポイントなんだけど、夜のおかずが増えるとかツン成分少な目だな。

「俺は母さんに嘘は言わない。全部本音だから、お世辞じゃないよ。こんなイイ女と結婚しといて不満があるとか顔も見たくないとか言う発想が理解できない」

 嘘は言わないが、言わない事がある。

 夕飯のおかずを増やすより、自慰のオカズを提供してほしいと言ったら、どんなリアクションをするのだろうか……照れながら写真くれると最高に嬉しいが、さすがに引かれるだけだろうから今はやめておこう。

「あ、あぅ……もう、母子だからあなたが本気で言ってるのが解っちゃうから、リアクションに困るのよね……息子がマザコン過ぎて困っちゃうわ」

「嫌われるよりは良いんじゃない? お互い褒めあって、ありがとうって言い合えるの、夫婦円満って感じで良くない?」

「そこは夫婦じゃなくて、家庭でしょ?」

「良いじゃん。親父を除いたら俺と母さんしかこの家に居ないだろ? 男と女の組み合わせなら夫婦だって」

「どんな理屈よ……母子じゃ結婚できないってことくらい知ってるでしょ? あなたは私がお腹を痛めて産んだ実子だし。仮に義理の親子であっても親子は結婚できないんだから、夫婦にはなれないの。

 そりゃ、あなたみたいな若くて優しくてしっかりした子に好かれるのは悪い気はしないし、むしろ嬉しいことだし、息子じゃなくて夫だったらどれだけ幸せだったかって、思うけど……って、何言ってるのかしらね。朝からあなたが変なこと言うから、調子が狂っちゃったわ。ほら、ご飯食べちゃいなさい。遅刻するわよ?」

「はーい……いただきます」

「いっぱい食べて、今日も一日頑張ってきなさい。今日を乗り越えたら明日はお休みでしょ? 定時であがれそう? 休みの予定は何かあるの?」

「んーー、残業なんてしたら母さんと一緒にいられる時間が減っちゃうから意地でも業務時間ないに全部片づけてすぐに帰ってくるつもり。休みの予定は母さんの用事次第。無ければ家でひたすら休養かな」

 本当は大事な予定が入っているが、母を驚かせるために仕込んでいることなので言えない。

「母親との時間って……嬉しいけど。休養とか言いつつ、いつも家事を手伝ってくれたりお母さんを外に連れ出してくれるわよね。生活費も渡してくれるし、出かけたときのお金も全部だしてくれるし……でも、たまには友人や同僚と飲みに行ったり、遊んできても良いのよ? お母さんのことなんか、気にしなくて良いんだから」

 そう言って微笑む母だが、本音は『一緒にいてほしい』『一人は寂しい』『かまって』『誰かに甘えたい』と言うのを俺は知っている。

 そう言うときはこっちから『一緒に寝て良い?』『まだ母さんに甘えたいんだ』というと『しょうがないわねぇ』『大きくなっても子供なんだから』と言いながらめっちゃ嬉しそうにするのだ。

 母は寝ると抱きつき癖があるし、一度寝入るとなかなか起きないので体をいじれるという役得もあるので俺としては毎日でもかまわないのだが、さすがに頻繁すぎると怪しまれる+俺の理性が保たないので数は調節しながら。

 結ばれるなら、母からも俺を求めてほしい。
 そして俺無しでは生きていけないくらいにしたい。

「そう言えば言ってなかったけど、俺って、アルコールまったく飲めないんだよ。会社の健康診断で採血するとき、アルコール消毒でかぶれちゃって、体質的に無理なのが判明しちゃったから」

「え、そうなの!?」

「そうなの。だから、飲む飲まないじゃなくて、飲めない。お菓子の洋酒でも赤くなっちゃうから、うっかりで飲んだら救急車騒ぎになる可能性があるわけ。だから無理。同僚や上司に迷惑かけるだけだし、そんなのと飲みに行ったってつまらないでしょ? それくらいなら、母さんに時間を使いたい。一緒にいる間は親孝行させてよ」

 母はきっと、俺がそんなことを考えているなんて気づいていない。
 なので、今は普通(?)の母子の会話を続ける。

「もう十分してもらってるわよ……でも、そうね。それじゃあ、お母さんがお酒を飲みたいから、今夜はお母さんに付き合いなさい! そして素面でもお酒の席は楽しいものなんだって、教えてあげるわ!!」

 母が気合いを入れて宣言するが、母さんって酒、弱かったんじゃなかったっけ。それで俺を身ごもってクソ親父と結婚したわけだし……大丈夫だろうか。

 というか、そもそも我が家には料理に使う調味料の酒しか置いていないはずなんだが?

「まぁ、母さんとなら苦手な酒も楽しめそうだから良いけど。うちに飲む用の酒はないでしょ? 帰りに買ってきた方が良い?」

「そう言えばそうね……それじゃあ、お母さんに合うようなお酒を選んできてもらおうかしら?」

 母に合う酒か。これはまた、難しい課題だ。

 1本といわず、何種類か買ってみるか……それとも、材料になる酒を数種類買ってきて、目の前でカクテルにしてみるか。混ぜずにそのまま飲んでも良いし、混ぜるだけならそれほど難しくはないだろう。

「了解。母さんの好みに合うもの、頑張って探してみるよ」

「よろしくね~。お母さんはあなたの好きなものをおつまみ風にして、あなたの帰りを待っているわ」

 俺の帰りを待つとか。

「あなたの帰りを待つとか……夫婦の会話みたいだな」

「そのネタ、引っ張りすぎよ。まったく……バカなこと言ってないで、早く食べちゃいなさい。本当に遅刻するわよ?」

「大丈夫。ちゃんと時間は把握してるから。こうして早く起きた分、母さんとしゃべるくらいの余裕はあるよ。そもそも、会社も自転車であっという間に着く距離だし。母さんといる時間が俺にとっては一番大事な時間だし、これから仕事にいって長時間会えなくなる寂しさを、こうして埋めているんだから付き合ってよ」

「はぁ……重症ね。どうしてこんなマザコンに育っちゃったのかしら。それに、こんなオバチャンのどこが良いのよ。髪の手入れが面倒だからで短くしてて、メガネで、くびれもない地味なオバチャンよ? おっぱいは他の人より大きいけど、そのぶん全体が大きかったら意味がないし」

「母さんの魅力を語っても良いの? 長くなるよ?」

「あー、なしなし。あなたのことだから本当に長々語り出しそうだし。女の魅力を息子に言われても、複雑な心境になるだけだから言わなくて良いわ」

「残念」

 そんな会話をしながらも箸と口は動かして食事を進めていく。
 食後の一杯も堪能したら、名残惜しいが出勤時間。

「はい、お弁当。毎回洗って返してくれるのは助かるけど、無理しなくて良いからね? 残さず食べてくれるだけで十分だから」

「母さんの弁当は米の一粒も残すわけ無いだろ。洗うのは日々感謝してキレイにして返そうってマイルールなだけ。それじゃあ、行ってきます。買い物してから帰るから、いつもよりは遅くなるからね?」

「はいはい、行ってらっしゃい。店を出るときに一報いれてちょうだい。帰りとどんなお酒を用意してくれるのか、楽しみに待ってるわ」

 母に見送られながら家を出る。

 会社に着いたら、始業前に母に合う酒をピックアップしないといけない。

 残業しないためにも、一日のスケジュールの確認と段取りも確認しないといけないな。

 今日も忙しくなりそうだが、これも母と休日を過ごすため。晩酌を楽しむため。俺の野望を叶えるため。

「今日も一日、気合いを入れるぞ」
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