7 / 27
第7話 買い付け
しおりを挟む
翌日、本来は休みだったが、クレアの希望した生地を買い付けにいくことにした。最高級ラインの生地であることと、特殊な色味だったため在庫がなかった。合わせて在庫が少なかった生地を持って帰るため、アリアナと一緒に町外れの生地屋までやってきた。
生地屋に入るといつもワクワクと気持ちが高揚する。色んなインスピレーションが湧いて、色んな物を作りたくなる。仕事柄、下着ばかり作っているが、久しぶりに服を縫おうか。いくつも新作の生地を見せてもらっては触らせてもらう。無事に希望していた生地を購入できると、重い荷物を抱えていることから寄り道をせずに帰ることにした。
町外れから王都の大通りまで街馬車で揺られる。馬車から降りて歩き出すと声を掛けられた。
「お嬢さん、お荷物手伝いましょうか」
「いえ、結構......あ!」
「ん?昨日逃げられた女!」
王宮の裏門で手を捕まれた騎士だ。なぜこんな所で遭遇するのかと、サラが反射的に逃げようとした所を、アリアナが間に入ってくれた。
「いかがされました?」
「おっと、先日この子に一目惚れをしてね」
「まあ!......でも仕事中ですし、可能性は無いようなので、諦めていただけると助かります」
にっこりと微笑むアリアナに得体の知れない圧力を感じる。
「それは、俺のことを知ってもらえれば覆すことができるよ」
騎士も中々、手強い。
「俺は、第二騎士団に所属しているダニエル。これでも子爵家の嫡男だよ」
だからなんだというのだ。貴族だと言えば惚れるとでも思っていそうだ。
「昨日の今日でこれは運命だろう?……重そうな荷物を持っているじゃないか、家まで運んでやるよ」
「ちょ、やめてください!」
大切な生地が入った紙袋を勝手に触ろうとしたダニエルから身を引こうとすると、荷物の重さでバランスを崩す。体が傾きかけると背後から大きな腕と手に支えられた。
「っと。大丈夫ですか?サラさん」
「え?……フィリップ様!なぜここに......」
「見回り中です。……何してるんですか、ダニエルさん。勤務中にナンパは良くないですよ」
フィリップを見上げると肩に置かれた手はそのままに、落ち着いた口ぶりとは裏腹に、ダニエルを睨み付けている。フィリップの手が肩に。そこに神経が集まったかのように緊張が走る。
「な、お前こそ邪魔すんじゃねーよ。こんな街中で想い人に会ったんだ。運命だろ?」
「想い人......?聞き捨てなりませんね。嫌がらせをしていただけじゃないですか」
「嫌がらせじゃねーよ!荷物を持ってやろうとしただけだっつの」
二人のやりとりにサラとアリアナは顔を見合わせる。
「サラさん、俺が持ちますよ」
いまにも落ちそうな袋を持ち直そうとすると、フィリップが危なげなく抱えてくれた。サラは肩に置かれていた手が離れたことにほっとする。
「いい格好すんじゃねーよ」
「姉の大切な友人なんです。みすみすナンパ野郎の毒牙にかからせる訳にはいきませんね」
「お前、先輩になんて言い草だよ」
「そういえば、師団長が呼んでいましたよ」
「お前、それを早く言えっ!」
ダニエルが駆け出すと、フィリップの自然な誘導で歩きだす。
「大丈夫ですか?サラさん。お連れの方も」
「あ、アリアナさん。ナターシャ様の弟様です。フィリップ様、こちら一緒に働いているアリアナさんです」
「いつもお世話になっております」
「こちらこそ、姉がいつもお世話になっています」
フィリップとアリアナが挨拶をすると、サラはフィリップにお礼を伝える。
「助けてくださりありがとうございます。とっても助かりました」
「運命とかほざいていましたけど、会ったことがあるのですか?」
口の悪いフィリップは新鮮だ。
「昨日、王宮で少し話しかけられて......」
「王宮でもこんなことが?」
フィリップの美しい顔が歪む。
「手を捕まれて逃げたんですけど、まさか街中で会うとは思いませんでした」
「手を捕まれた?国を守る騎士として、あるまじき行為ですね」
「でも今日、フィリップ様が助けてくださったので、大丈夫です」
「俺からも言っておきますが......またなにかあれば教えてください。サラさんになにかあっては姉も悲しみます」
大通りから逸れるタイミングで、荷物を受けとると、フィリップと別れた。仕事に支障がでていないか心配すると、女性を助けることも立派な仕事のひとつなのでとフォローしてくれた。女性嫌いのフィリップから出てくる言葉とは思えないが、純粋に助けてくれたことが嬉しかった。
肩に触れたことで、嫌悪感を感じていないか心配だったが、大丈夫そうだ。姉の友人として助けてくれたのだろうけど、不意にサラに触れてしまい、嫌な気持ちになっていないか心配だった。
サラは来た道を戻るフィリップを無意識に見つめたが、はっと我に返ると先を歩くアリアナを追いかけた。
生地屋に入るといつもワクワクと気持ちが高揚する。色んなインスピレーションが湧いて、色んな物を作りたくなる。仕事柄、下着ばかり作っているが、久しぶりに服を縫おうか。いくつも新作の生地を見せてもらっては触らせてもらう。無事に希望していた生地を購入できると、重い荷物を抱えていることから寄り道をせずに帰ることにした。
町外れから王都の大通りまで街馬車で揺られる。馬車から降りて歩き出すと声を掛けられた。
「お嬢さん、お荷物手伝いましょうか」
「いえ、結構......あ!」
「ん?昨日逃げられた女!」
王宮の裏門で手を捕まれた騎士だ。なぜこんな所で遭遇するのかと、サラが反射的に逃げようとした所を、アリアナが間に入ってくれた。
「いかがされました?」
「おっと、先日この子に一目惚れをしてね」
「まあ!......でも仕事中ですし、可能性は無いようなので、諦めていただけると助かります」
にっこりと微笑むアリアナに得体の知れない圧力を感じる。
「それは、俺のことを知ってもらえれば覆すことができるよ」
騎士も中々、手強い。
「俺は、第二騎士団に所属しているダニエル。これでも子爵家の嫡男だよ」
だからなんだというのだ。貴族だと言えば惚れるとでも思っていそうだ。
「昨日の今日でこれは運命だろう?……重そうな荷物を持っているじゃないか、家まで運んでやるよ」
「ちょ、やめてください!」
大切な生地が入った紙袋を勝手に触ろうとしたダニエルから身を引こうとすると、荷物の重さでバランスを崩す。体が傾きかけると背後から大きな腕と手に支えられた。
「っと。大丈夫ですか?サラさん」
「え?……フィリップ様!なぜここに......」
「見回り中です。……何してるんですか、ダニエルさん。勤務中にナンパは良くないですよ」
フィリップを見上げると肩に置かれた手はそのままに、落ち着いた口ぶりとは裏腹に、ダニエルを睨み付けている。フィリップの手が肩に。そこに神経が集まったかのように緊張が走る。
「な、お前こそ邪魔すんじゃねーよ。こんな街中で想い人に会ったんだ。運命だろ?」
「想い人......?聞き捨てなりませんね。嫌がらせをしていただけじゃないですか」
「嫌がらせじゃねーよ!荷物を持ってやろうとしただけだっつの」
二人のやりとりにサラとアリアナは顔を見合わせる。
「サラさん、俺が持ちますよ」
いまにも落ちそうな袋を持ち直そうとすると、フィリップが危なげなく抱えてくれた。サラは肩に置かれていた手が離れたことにほっとする。
「いい格好すんじゃねーよ」
「姉の大切な友人なんです。みすみすナンパ野郎の毒牙にかからせる訳にはいきませんね」
「お前、先輩になんて言い草だよ」
「そういえば、師団長が呼んでいましたよ」
「お前、それを早く言えっ!」
ダニエルが駆け出すと、フィリップの自然な誘導で歩きだす。
「大丈夫ですか?サラさん。お連れの方も」
「あ、アリアナさん。ナターシャ様の弟様です。フィリップ様、こちら一緒に働いているアリアナさんです」
「いつもお世話になっております」
「こちらこそ、姉がいつもお世話になっています」
フィリップとアリアナが挨拶をすると、サラはフィリップにお礼を伝える。
「助けてくださりありがとうございます。とっても助かりました」
「運命とかほざいていましたけど、会ったことがあるのですか?」
口の悪いフィリップは新鮮だ。
「昨日、王宮で少し話しかけられて......」
「王宮でもこんなことが?」
フィリップの美しい顔が歪む。
「手を捕まれて逃げたんですけど、まさか街中で会うとは思いませんでした」
「手を捕まれた?国を守る騎士として、あるまじき行為ですね」
「でも今日、フィリップ様が助けてくださったので、大丈夫です」
「俺からも言っておきますが......またなにかあれば教えてください。サラさんになにかあっては姉も悲しみます」
大通りから逸れるタイミングで、荷物を受けとると、フィリップと別れた。仕事に支障がでていないか心配すると、女性を助けることも立派な仕事のひとつなのでとフォローしてくれた。女性嫌いのフィリップから出てくる言葉とは思えないが、純粋に助けてくれたことが嬉しかった。
肩に触れたことで、嫌悪感を感じていないか心配だったが、大丈夫そうだ。姉の友人として助けてくれたのだろうけど、不意にサラに触れてしまい、嫌な気持ちになっていないか心配だった。
サラは来た道を戻るフィリップを無意識に見つめたが、はっと我に返ると先を歩くアリアナを追いかけた。
41
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。
すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。
だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。
イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。
変わり果てた現実を前に、
夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。
深い後悔と悲しみに苛まれながら、
失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。
しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。
贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。
そして、母の心を知っていく子供たち。
イネスが求める愛とは、
そして、幸せとは――。
働かないつもりでしたのに、気づけば全部うまくいっていました ――自由に生きる貴族夫人と溺愛旦那様』
鷹 綾
恋愛
前世では、仕事に追われるだけの人生を送り、恋も自由も知らないまま終わった私。
だからこそ転生後に誓った――
「今度こそ、働かずに優雅に生きる!」 と。
気づけば貴族夫人、しかも結婚相手は冷静沈着な名門貴族リチャード様。
「君は何もしなくていい。自由に過ごしてくれ」
――理想的すぎる条件に、これは勝ち確人生だと思ったのに。
なぜか気づけば、
・屋敷の管理を改善して使用人の待遇が激変
・夫の仕事を手伝ったら経理改革が大成功
・興味本位で教えた簿記と珠算が商業界に革命を起こす
・商人ギルドの顧問にまで祭り上げられる始末
「あれ? 私、働かない予定でしたよね???」
自分から出世街道を爆走するつもりはなかったはずなのに、
“やりたいことをやっていただけ”で、世界のほうが勝手に変わっていく。
一方、そんな彼女を静かに見守り続けていた夫・リチャードは、
実は昔から彼女を想い続けていた溺愛系旦那様で――。
「君が選ぶなら、私はずっとそばにいる」
働かないつもりだった貴族夫人が、
自由・仕事・愛情のすべてを“自分で選ぶ”人生に辿り着く物語。
これは、
何もしないはずだったのに、幸せだけは全部手に入れてしまった女性の物語。
下賜されまして ~戦場の餓鬼と呼ばれた軍人との甘い日々~
星森
恋愛
王宮から突然嫁がされた18歳の少女・ソフィアは、冷たい風の吹く屋敷へと降り立つ。迎えたのは、無愛想で人嫌いな騎士爵グラッド・エルグレイム。金貨の袋を渡され「好きにしろ」と言われた彼女は、侍女も使用人もいない屋敷で孤独な生活を始める。
王宮での優雅な日々とは一転、自分の髪を切り、服を整え、料理を学びながら、ソフィアは少しずつ「夫人」としての自立を模索していく。だが、辻馬車での盗難事件や料理の失敗、そして過労による倒れ込みなど、試練は次々と彼女を襲う。
そんな中、無口なグラッドの態度にも少しずつ変化が現れ始める。謝罪とも言えない金貨の袋、静かな気遣い、そして彼女の倒れた姿に見せた焦り。距離のあった二人の間に、わずかな波紋が広がっていく。
これは、王宮の寵姫から孤独な夫人へと変わる少女が、自らの手で居場所を築いていく物語。冷たい屋敷に灯る、静かな希望の光。
⚠️本作はAIとの共同製作です。
氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁
瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。
彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」
魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。
鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。
(な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?)
実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。
レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。
「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」
冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。
一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。
「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」
これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。
『階段対策会議(※恋愛)――年上騎士団長の健康管理が過剰です』
星乃和花
恋愛
【完結済:全9話】
経理兼給仕のクラリスは、騎士団で働くただの事務員――のはずだった。
なのに、年上で情緒に欠ける騎士団長グラントにある日突然こう言われる。
「君は転倒する可能性がある。――健康管理対象にする」
階段対策会議、動線の変更、手をつなぐのは転倒防止、ストール支給は防寒対策。
全部合理的、全部正しい。……正しいはずなのに!
「頬が赤い。必要だ」
「君を、大事にしたい」
真顔で“強い言葉”を投下してくる団長に、乙女心を隠すクラリスの心拍数は業務超過。
さらに副団長ローレンは胃薬片手に「恋は会議にするな!!」と絶叫中!?
これは健康管理?それとも恋愛?
――答え合わせの前に、まず“階段(概念)“をご確認ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる