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豪宴客船編
幕間 電話連絡
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「い~や~、怖かったぁ~」
自室に帰った多珂倉稔丸は、ジャケットとネクタイ、そして仮面を外しながら、腹の底から大きく息を吐いた。
「無茶をし過ぎダ、稔丸。『君子、危うきに近寄らず』というのニ」
シトローネはベッドに脱ぎ捨てられたジャケットとネクタイを拾い上げると、ひどく深刻な様子で眉根を寄せた。
「……これ、すごく凶悪な呪いがかけられてル」
「ああ。あの座敷童子と戦女神のせいだろうね。服に呪い避けのルーンをかけといてもらわなかったら危なかったよ」
備え付けの冷蔵庫から炭酸水の瓶を取り出し、蓋を開けた稔丸はソファに座るなり、一気に中身を煽った。
「これはもう着れなイ」
「もったいないな~。オーダーメイドで三桁したんでしょ?」
シトローネの肩越しに覗いてきたグリムも、ジャケットの値段を知っているだけに残念がっていた。
「それを着てたら八桁くらいは損することになるよ、たぶん。帰ったら雛祈ちゃんあたりにでも頼んで処分してもらお。……で、グリム。もしかしてまだ足りなかったとか?」
空になった炭酸水の瓶をテーブルに置いた稔丸は、グリムの格好を見て辟易した。
癖の強い黒髪をかきあげたグリムは、稔丸がオークションに赴くために部屋を後にした時と同様、何も纏っていなかった。
「まだお預けくらってるし、稔丸も出かけちゃったんだから、一人でするしかないでしょ」
稔丸に対して非難めいた目を向けながら、グリムは右手の人差し指と中指をべろりと舐めた。
「なら一人遊びはここまで。早く服着て準備して」
その一言を聞いて、グリムは頭頂の獣耳をぴんと立てた。
「ようやく? ようやく?」
「ああ。小林結城が動いたから、ボクらもそれに合わせて動く。シトローネも準備してね」
「分かっタ」
ジャケットを袋に入れてルーンをかけ終わったシトローネは、即座に自分のスーツケースを開けて装備を整え始める。
「んっんっん~♪ んっんっん~♪」
やっと荒事に出向くことができるとなったグリムも、鼻歌を交えて下着を身に付けていく。
「……グリム、念のために言っとくけど、手当たり次第に殺っていいわけじゃないからね。ボクが指示出した相手だけ殺ってね」
「大丈夫。最初の頃みたいな真似はしないから……稔丸、どこに連絡してるの?」
「ん? ちょっとね」
稔丸は常用しているスマートフォンとは別の携帯電話を耳に当てていた。
主流となっている携帯電話と比べれば二回り以上の大きさのそれは、たとえ大海原の真ん中からであろうと通信可能な、衛星回線を使った特殊な電話だった。
「状況が動いたら連絡入れる約束だったし、それに……もう一つ聞いときたいこともできたしね」
電話から発せられるコール音を聞きながら、稔丸は目を刃物のように細めた。
自室に帰った多珂倉稔丸は、ジャケットとネクタイ、そして仮面を外しながら、腹の底から大きく息を吐いた。
「無茶をし過ぎダ、稔丸。『君子、危うきに近寄らず』というのニ」
シトローネはベッドに脱ぎ捨てられたジャケットとネクタイを拾い上げると、ひどく深刻な様子で眉根を寄せた。
「……これ、すごく凶悪な呪いがかけられてル」
「ああ。あの座敷童子と戦女神のせいだろうね。服に呪い避けのルーンをかけといてもらわなかったら危なかったよ」
備え付けの冷蔵庫から炭酸水の瓶を取り出し、蓋を開けた稔丸はソファに座るなり、一気に中身を煽った。
「これはもう着れなイ」
「もったいないな~。オーダーメイドで三桁したんでしょ?」
シトローネの肩越しに覗いてきたグリムも、ジャケットの値段を知っているだけに残念がっていた。
「それを着てたら八桁くらいは損することになるよ、たぶん。帰ったら雛祈ちゃんあたりにでも頼んで処分してもらお。……で、グリム。もしかしてまだ足りなかったとか?」
空になった炭酸水の瓶をテーブルに置いた稔丸は、グリムの格好を見て辟易した。
癖の強い黒髪をかきあげたグリムは、稔丸がオークションに赴くために部屋を後にした時と同様、何も纏っていなかった。
「まだお預けくらってるし、稔丸も出かけちゃったんだから、一人でするしかないでしょ」
稔丸に対して非難めいた目を向けながら、グリムは右手の人差し指と中指をべろりと舐めた。
「なら一人遊びはここまで。早く服着て準備して」
その一言を聞いて、グリムは頭頂の獣耳をぴんと立てた。
「ようやく? ようやく?」
「ああ。小林結城が動いたから、ボクらもそれに合わせて動く。シトローネも準備してね」
「分かっタ」
ジャケットを袋に入れてルーンをかけ終わったシトローネは、即座に自分のスーツケースを開けて装備を整え始める。
「んっんっん~♪ んっんっん~♪」
やっと荒事に出向くことができるとなったグリムも、鼻歌を交えて下着を身に付けていく。
「……グリム、念のために言っとくけど、手当たり次第に殺っていいわけじゃないからね。ボクが指示出した相手だけ殺ってね」
「大丈夫。最初の頃みたいな真似はしないから……稔丸、どこに連絡してるの?」
「ん? ちょっとね」
稔丸は常用しているスマートフォンとは別の携帯電話を耳に当てていた。
主流となっている携帯電話と比べれば二回り以上の大きさのそれは、たとえ大海原の真ん中からであろうと通信可能な、衛星回線を使った特殊な電話だった。
「状況が動いたら連絡入れる約束だったし、それに……もう一つ聞いときたいこともできたしね」
電話から発せられるコール音を聞きながら、稔丸は目を刃物のように細めた。
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