あなたと観たい景色

如月 りん

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二章 近づく

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「琥珀くん」
私が声をかけたら階段を
登っていってしまった。
「どうかされましたか?」
「いえ、大丈夫です。
ではまた、明日」

「ただいま、母さん」
「おかえり~、どうだった?」
「まぁ・・・琥珀くんとまだ距離はあるよ、
そう簡単に近づけないのはわかってる
でも私、彼と友達になりたい」 
「今度はあなたがその琥珀くん?って子を
助けて、導いてあげられたらいいね」
「あの人みたいになれるかな?
5年前、私を救ってくれた
諒さんみたいに」
次の日から私は
琥珀くんの部屋の前で色々話をした。
好きなこと、嫌いなこと、修学旅行、
大学の友達のことなど、最初は、
相槌もなかったが、10日ほどしたら、
それで?どうなったの?と私の話に興味を示してくれるようになった。
その日いつものように帰ろうとすると
凛花さんから茶封筒を渡された。
中を見るとお金が入っていた
「あの、これは?」
「奥様からです。
 こちらの願いを、
 聞いてくださっているので、
 相応の金額でないと失礼だとおっしゃって
 おりました。」
「でも、私お金目的のために来ているわけで
  はないので」
「承知の上です。でもこちらにも責任というものがあります。あなたの時間を割いていることには変わりないのです。」
なんだか受け取らないと失礼な気がしてきた
「ありがとうございます。」
その日の帰り私は砂糖、
バターなどを買って帰った
次の日
今日もいつも通り、談笑をして帰る時
「今日はクッキーを持ってきたんだ。
徹夜して作ったんだけど、
よかったら食べて」
私はその夜から熱を出してしまった。
慣れないことをしたからだろうか?
私は次の日に凛花さんに連絡をした。
数日後、体調が回復した私は再び琥珀くんの家へ訪れた。
部屋の前には、クッキーの入っていた箱と
ありがとうございました。
美味しかったです。
というメモがついていた。
心の距離は少しは縮まったかと
思い嬉しくなった。
「琥珀くん、こんにちは」
中でカタンと音がした
「しばらく来れなくてごめんね。
 具合良くなったから
今日は報告だけきたの。」
振り返り、帰ろうとすると、
凄い勢いで扉が開き、腕を掴まれた。
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