あなたと観たい景色

如月 りん

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三章 変化

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「あの・・・その・・・明日も、
来てくれる?」
怯えるような、縋るような目で琥珀くんは
私を見た。掴んだ腕は微かに震えていた。
「もちろん」
私がそう微笑みながら答えると、琥珀くんは
安心したのか、目を細めた。
背を向け帰ろうとしたら
「また明日・・・綾音さん」
微かな声だが確かに聞こえた。
きっと彼は頬を染めているだろう。
口元が緩みそうになるのを耐え、
「また明日ね、琥珀くん」
私は琥珀くんにそう告げ、帰路に就く。
足取りは軽かった。

「琥珀くんと仲良くなれそうだよ、母さん」
「そっか、よかったね。
でも、明日土曜だよ?」
「え・・・、どうしよう」
「行ってもいいんじゃないの?
約束したんでしょ?」
「でも、ご迷惑じゃない?」
「あなたが、そうおもうなら、
いいんじゃない?
でも、琥珀くんと約束したんでしょ?」
「母さん、明日行ってみる。
もし、予定があったら帰ってくればいいだけだし」
「後悔はなるべくしないようにしなさい。
人間、いつ一生会えなくなるか分からないんだから。」
「うん、わかってる」
次の日
「こんにちは、凛花さん」
「こんにちは。
あの、今日は土曜日ですよ?」
「あ、そうなんですけど、
琥珀くんと明日も来ると約束をしたので
・・・だめでしたか?」
「いえ、大丈夫ですよ。
琥珀様は部屋にいます。」
「ありがとうございます」
私はお礼を言い、琥珀くんの部屋へ向かった
「こんにちは、琥珀くん」
私が声をかけると、扉が開き、
「入って来てください。」
琥珀くんに、言われるがまま部屋に入った。
「昨日、綾音さんが帰ってからカレンダー見たら、今日土曜日だったから来てくれないかと思ってた」
「私もどうしようか迷ったけど、約束したからね」
「来てくれて・・・嬉しかった、です」
琥珀くんは私の目を見て、
微笑みながら言ってくれた。
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