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運命の舵輪編
青年と少女3
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蒼太は自身の仕事の事を、メリーニにはそれほど細かく話してはいなかった。
ただし“自営業を営んでおり、時折趣味で客さんの人生相談も 受けもっているんだ”とだけ言っていた(勿論、有料であり料金はその時々の状況により異なるのだが)。
メリーニはそれに対して「ふうぅん、そうなんだ?」とだけ返してくれた、どこか困ったような、それでいて面白いモノを見るような眼差しを向けて。
「・・・・・」
(もしかして気付いているのかな?)
蒼太も時々、この少女へと意識を向けてみるのだが表面上の事は探れるのに奥の奥、即ち心の内側にまでは入れないでいたのだった。
「・・・また私の中を見ているでしょう?」
「ごめんごめん、気になっちゃって」
と、うっかり探りを入れている事が見付かってしまう場面もあったがそれはやはり、この少女が魔法や呪術と言ったモノに対しての、ある程度の理解と心得があることを物語っていた。
「・・・・・」
(それにしても。見れば見るほど不思議な娘だよなぁ・・・)
蒼太は頬杖を付きながら、キッチンに立つメリーニの姿を眺めていたがその姿はどうしてもメリアリアの重なるのだ、・・・感覚が今一歩でどうしてもブレるというのに、直感では間違いなく目の前の少女がメリアリアであると告げていた。
「お待たせ~っ。イカとチーズのリゾット、出来たよ!!」
「ああ。有難うね、メリーニ!!」
そう言って蒼太は差し出されたリゾットを美味しそうに頬張り始めるモノの、彼女の言うところによると“自分も余り、料理が得意では無い”らしい。
それでも蒼太が作るモノよりは勝ること幾万倍であったから、蒼太は黙って台所を預け、任せていたのである。
実際に、彼女の腕前は中々に大したモノがあったが本人は謙遜しているのか、余り褒められても照れるより困ってしまう事の方が多いように見受けられた。
「でも良かったわ、蒼太が喜んでくれて。お陰で作る事が楽しくなって来たもの!!」
「メリーニの作るもの、なんでも美味しいよ?もっと自信持ちなよ!!」
「はいはい。煽てても、何にも出ませんからね!!」
「ちぇっ。なんかもう一品、作って欲しかったんだけどな~・・・」
「そっか、育ち盛りだもんね、蒼太は・・・」
「ちょっと待ってて」とメリーニは告げると、慌てて台所へと足を向ける。
そこで何やらあり合わせの材料を吟味してお鍋を掻き回し始めるモノの、するとやがて白い液体の、良い匂いのするスープが運ばれて来た。
「アサリとジャガイモがあったから。ホワイトソースであえて、クラムチャウダーを作ってみたの!!」
「・・・ねぇ、実は料理が得意でしょ?」
「そんな事、無いってば。それよりほら、早く食べちゃって!?冷めちゃうわよ?」
「いただきます・・・」
そう言ってクラムチャウダーをスプーンに掬って食べ始める蒼太を、メリーニは黙って見つめていた。
・・・ただし。
その瞳はとても満足そうで、幸せに満ちていた。
「・・・メリーニ」
「なぁに?蒼太・・・」
「明日、僕は仕事に行くから少し遅くなるよ?戸締まりをしっかりとして、先に寝ておくようにね・・・」
「・・・うん、解ったわ。先に休ませてもらうね」
「・・・ふぅ。ご馳走さま。後片付けはやっておくから」
「ううん、やらせて?助けてもらった挙げ句にお世話になりっ放しだもの!!」
「そんな事気にしなくて良いってば。それに最近、僕ずっと君に任せっ放しで台所に立ってないし・・・」
「そんな事は気にしなくて平気だから。ほら、明日も早いんでしょ?良いから休んで、後片付けもやっておくから・・・」
「・・・そっか。うん、ごめんね?なんだか悪いな」
「全然、平気だから。お布団も敷いてあるからね?今日は一日干しておいたの、お日様の良い匂いがするはずよ!!」
「うん、有難うね。それじゃあお休みなさい」
「お休みなさい、蒼太・・・」
そう言ってダイニングを後にする青年を見送ったあと、メリーニは慣れた手つきで手早く後片付けを終わらせると自身もお風呂に入るべく脱衣所へと向かった。
バスルームの扉を開けると蒼太に買ってもらった衣類ー漆黒のティアードワンピースをお揃いの、黒のショーツやスポーツブラ等と共に脱ぎ捨てて全裸となり、備え付けのバスミラーの前に立つがそこに写っていたのはー。
見慣れているはずの黒髪ウェーブの少女の姿では無くて、長い光沢のあるハチミツ色の金髪を頭の両端で結わいていた、妙齢の美しい、色白な女性の姿だった。
ただし“自営業を営んでおり、時折趣味で客さんの人生相談も 受けもっているんだ”とだけ言っていた(勿論、有料であり料金はその時々の状況により異なるのだが)。
メリーニはそれに対して「ふうぅん、そうなんだ?」とだけ返してくれた、どこか困ったような、それでいて面白いモノを見るような眼差しを向けて。
「・・・・・」
(もしかして気付いているのかな?)
蒼太も時々、この少女へと意識を向けてみるのだが表面上の事は探れるのに奥の奥、即ち心の内側にまでは入れないでいたのだった。
「・・・また私の中を見ているでしょう?」
「ごめんごめん、気になっちゃって」
と、うっかり探りを入れている事が見付かってしまう場面もあったがそれはやはり、この少女が魔法や呪術と言ったモノに対しての、ある程度の理解と心得があることを物語っていた。
「・・・・・」
(それにしても。見れば見るほど不思議な娘だよなぁ・・・)
蒼太は頬杖を付きながら、キッチンに立つメリーニの姿を眺めていたがその姿はどうしてもメリアリアの重なるのだ、・・・感覚が今一歩でどうしてもブレるというのに、直感では間違いなく目の前の少女がメリアリアであると告げていた。
「お待たせ~っ。イカとチーズのリゾット、出来たよ!!」
「ああ。有難うね、メリーニ!!」
そう言って蒼太は差し出されたリゾットを美味しそうに頬張り始めるモノの、彼女の言うところによると“自分も余り、料理が得意では無い”らしい。
それでも蒼太が作るモノよりは勝ること幾万倍であったから、蒼太は黙って台所を預け、任せていたのである。
実際に、彼女の腕前は中々に大したモノがあったが本人は謙遜しているのか、余り褒められても照れるより困ってしまう事の方が多いように見受けられた。
「でも良かったわ、蒼太が喜んでくれて。お陰で作る事が楽しくなって来たもの!!」
「メリーニの作るもの、なんでも美味しいよ?もっと自信持ちなよ!!」
「はいはい。煽てても、何にも出ませんからね!!」
「ちぇっ。なんかもう一品、作って欲しかったんだけどな~・・・」
「そっか、育ち盛りだもんね、蒼太は・・・」
「ちょっと待ってて」とメリーニは告げると、慌てて台所へと足を向ける。
そこで何やらあり合わせの材料を吟味してお鍋を掻き回し始めるモノの、するとやがて白い液体の、良い匂いのするスープが運ばれて来た。
「アサリとジャガイモがあったから。ホワイトソースであえて、クラムチャウダーを作ってみたの!!」
「・・・ねぇ、実は料理が得意でしょ?」
「そんな事、無いってば。それよりほら、早く食べちゃって!?冷めちゃうわよ?」
「いただきます・・・」
そう言ってクラムチャウダーをスプーンに掬って食べ始める蒼太を、メリーニは黙って見つめていた。
・・・ただし。
その瞳はとても満足そうで、幸せに満ちていた。
「・・・メリーニ」
「なぁに?蒼太・・・」
「明日、僕は仕事に行くから少し遅くなるよ?戸締まりをしっかりとして、先に寝ておくようにね・・・」
「・・・うん、解ったわ。先に休ませてもらうね」
「・・・ふぅ。ご馳走さま。後片付けはやっておくから」
「ううん、やらせて?助けてもらった挙げ句にお世話になりっ放しだもの!!」
「そんな事気にしなくて良いってば。それに最近、僕ずっと君に任せっ放しで台所に立ってないし・・・」
「そんな事は気にしなくて平気だから。ほら、明日も早いんでしょ?良いから休んで、後片付けもやっておくから・・・」
「・・・そっか。うん、ごめんね?なんだか悪いな」
「全然、平気だから。お布団も敷いてあるからね?今日は一日干しておいたの、お日様の良い匂いがするはずよ!!」
「うん、有難うね。それじゃあお休みなさい」
「お休みなさい、蒼太・・・」
そう言ってダイニングを後にする青年を見送ったあと、メリーニは慣れた手つきで手早く後片付けを終わらせると自身もお風呂に入るべく脱衣所へと向かった。
バスルームの扉を開けると蒼太に買ってもらった衣類ー漆黒のティアードワンピースをお揃いの、黒のショーツやスポーツブラ等と共に脱ぎ捨てて全裸となり、備え付けのバスミラーの前に立つがそこに写っていたのはー。
見慣れているはずの黒髪ウェーブの少女の姿では無くて、長い光沢のあるハチミツ色の金髪を頭の両端で結わいていた、妙齢の美しい、色白な女性の姿だった。
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