星降る国の恋と愛

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運命の舵輪編

青年と少女2

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 蒼太は生活力が皆無と言う訳では無かったモノの、だからと言ってそれほど高いわけでも無かった。

 例えば洗濯やアイロン掛け等は普通に熟せるモノの、その腕前はあくまで普通、それも生きていく上での必要最低限レベルだ。

 料理に付いても同様であり、自炊を始めとしての、ある程度のレパートリーは熟す事が出来るモノの、プロ顔負けの味とか、そう言ったモノまでは出せない。

 ただ一般人が普通に食べられる程度の味付けはマスターしており、そのお陰もあってメリーニもお腹を満たす事が出来たのだが、この不思議な少女と同居を始めてからと言うもの、そう言った生活力の至らない部分を良く良く突っ込まれるようになった。

「蒼太、油モノは浸け置きしてから洗ってね?その方が汚れも綺麗に取れるし食器も傷まないから」

「あと洗濯物は干し方に注意してね?でないと乾き方に偏りが出来ちゃうの」

「ベッドメイキング、真ん中はキチッとなっていたけど、端っこの方がシワだらけだったわよ?ちゃんとしてって言ったじゃない!!」

 と、中々に厳しい指摘を受ける時が、それも度々あったが蒼太は黙って従うしか無かった、元々がよく言えば優しくてあまり波風を立てない性分の彼は、しかし悪く言えば内向的で偏屈な所を持っていた、だからやる気がそれほど無い家事関連に関して言えば“自分が黙ってさえいれば良いんだ”、と考えてその場その場を済ませていたのだがもう一つ、このメリーニと言う少女は口だけでは無くて、言った事はキチンと実行して見せてくれてもいたために、ぐうの音も出なかったのである。

 ただ時折。

「ごめんごめん、気を付けるよ。あれ?でもおかしいな、そんな事言われたっけ?」

「えっ!?あの、その。ごめんなさい・・・」

 と蒼太が怪訝そうに尋ねるとメリーニが俯いてしまう場面もあったが蒼太は確かに、彼女の言葉と同じ事を過去に言われた事があった。

 あったがしかし、それはメリーニではなく、今よりうんと子供の時分に年上幼馴染みの少女に言われた言葉だったのである。

(なんだろう、この感じ。まるでメリーが直ぐ側にいてくれるみたいな安心感と言うか、心強さを感じる。だけどなんでなんだろうな、どうしてもこの娘とメリーの感覚がもう少しの所でぶれて、完全に一致しないんだ・・・)

 蒼太には、それがちょっぴり不可解だった。

 それにもう一つ、メリーニが自分から蒼太に何かを話し掛けようとして、だけど結局はしどろもどろになってしまい、申し訳なさそうに俯いてしまう、と言うことが度々あった。

 そこも彼としては気になる所だった。

 だが。

 それよりも何よりも。

(メリーニから、魔法の匂いがする・・・)

 と流石に退魔士を生業にしているだけの事はあって、目敏くそこまで見抜いていたのだが、それも深くは突っ込まなかった。

 “いずれ本人が話してくれるようになるだろう、その時に聞けばいいや”。

 そんな考えで毎日毎日を本人なりに懸命に、それでも何処か怠そうに過ごしていたのだがよくよく考えてみればこれは、驚くべき脳天気さとしか言いようが無かった、特に彼の場合、波動戦士と言う裏家業を生業にしている存在である事を考慮すれば、その呑気さは人によっては舌を巻いてしまうレベルの話だっただろう。

 しかし。

 元来蒼太は戦闘がそれほど好きでは無く、また得意でも無かった、ただ持って生まれた高い生命力と精神力とをある場所で見いだされ、徹底的に鍛え上げられてこの過酷な世界に放り込まれたに過ぎなかった(要するに、本来は生きる為の力、能力を戦闘に応用させてこれまでを生き抜いて来た訳である)。

 それにこの世界のような、ビリビリ、キリキリとした中で四六時中、過ごすことも正直言って嫌だったのだが、けれども他に効率よく稼げる手段も持てなかった彼は、仕方なしにこの世界にお邪魔し続ける事になって。

 それが縁で謎のババアである“斉藤さん”と出会い、更に言えばそれが元でこのメリーニ・カッセと言う少女と運命の出会いと言うか再会を果たした訳である。

 要するに裏家業をしていながらその実、心や性質と言ったメンタルは一般人に近かった、と言って良かったが、だけれども彼の場合は決してそれだけではなかった、ちょっとパラノイア気質で面倒臭がりな所もあったけれども、本当の蒼太はとても暖かくて心根の強い人であることを、このメリーニと言う少女だけは良く知っていたのである。

 裏を返せばそうで無ければこの過酷な世界でこんな脳天気さと言うか呑気な性格をしていながら、自我を保つことなど決して出来はしなかったであろう。
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