2 / 8
2 側妃
しおりを挟む
ガヴェニャック王国の王太子アロイスが結婚して三年経っても、ルイーズとの間に子供が出来る気配はなかった。
これには王国の重鎮や貴族達は大いに焦った。
何故ならアロイスが結婚して一年も経たないうちに国王が流行り病で呆気なく死んでしまっていたからだ。
元々体の弱い国王ではあったが、大きな病気もなく過ごしていた。
それが流行り病にかかった途端、どんなに手を尽くしても回復する事はなかった。
回復魔法の使い手を呼んでも一時的に症状が落ち着くだけで快方に向かうことはなかった。
アロイスが王座を継いだが、未だにルイーズには妊娠の兆候はみられなかった。
このままでは万が一アロイスに何かがあった場合、跡を継ぐ者がいなくなってしまう。
傍系王族はいるが下手をすれば玉座の取り合いで内乱が起こりかねなかった。
何としてでもアロイスには早急に跡継ぎを作って貰う必要があった。
貴族達が集まって話し合いを始めたところ、デュルフェ公爵が自分の娘のリリアーナを側妃にさせると発言した。
その発言に反対する者もいたが、結局は賛成派の貴族に押し切られてしまった。
実際に跡継ぎに恵まれない以上、対策は必要である。
内乱が起こりかねない傍系王族を担ぎ上げるよりは、側妃をあてがった方がマシだと思われたからだ。
貴族達の決定にアロイスは必死に抵抗していたが、ルイーズに子供が出来ない以上受け入れるしかなかった。
リリアーナが自宅で寛いでいると、登城したはずの父親が上機嫌で戻ってきた。
「リリアーナ! 早く出かける支度をするんだ! アロイス樣の側妃に決まったんだからな!」
思いもかけない父親の言葉にリリアーナはすぐには理解出来なかった。
「お父様。帰るなり何をおっしゃいますの?」
だが、リリアーナの戸惑いをよそに公爵は使用人に命じてリリアーナの登城の準備をさせた。
このまま押し切らないとアロイスが側妃を拒否してしまう可能性もあるからだ。
リリアーナが突然の事に戸惑っているうちに準備が整えられ、馬車に押し込められて王宮へと向かった。
馬車が王宮に近付くにつれ、リリアーナの胸に徐々に喜びが溢れてくる。
側妃という立場ではあってもアロイスと結ばれるのが嬉しくて堪らなかった。
一度は諦めたアロイスだったけれど、結局は自分と結ばれる運命だったのかもしれない。
これからアロイスと結ばれて自分が先に身籠って王子を産めば、ルイーズなんかより自分を寵愛してくれるに決まっている。
そしてルイーズとは離婚して自分を正妃にしてくれるかも…。
リリアーナは馬車の中でそんな想像をしながら前方に見えてきた王宮を眺めていた。
王宮に入るとリリアーナは側妃がすむ西の宮へと案内された。
急な決定だったため、すべての準備が整っておらず寝室と浴室のみが使えるようにされていた。
王宮の使用人がリリアーナの荷物をバタバタと運び込んでいる。
寝室のベッドの脇に備えられたソファーに座って、リリアーナはただじっと待っている事しか出来なかった。
ルイーズは婚約発表のパーティーを開いてもらって、豪華な結婚式まで執り行ったのに…。
リリアーナは側妃になるため、何のお披露目もされず、誰からのお祝いの言葉ももらえない…。
いくらアロイスと結ばれるからといっても、本当にこれで良かったのだろうか?
リリアーナの胸にそんな疑問が浮かんできたが、父親の決定に逆らえるはずもなかった。
国王となったアロイスが側妃を娶ると決めた以上、リリアーナに拒否は出来ない。
やがて入浴の支度が整ったと告げられ、リリアーナは浴室へと連れて行かれた。
侍女達に体を磨かれ、夜着を身に着けられた。
寝室に戻り一人、アロイスが訪れるのを待っていた。
…いよいよ、アロイスと結ばれる…。
その喜びに胸を震わせながら…。
これには王国の重鎮や貴族達は大いに焦った。
何故ならアロイスが結婚して一年も経たないうちに国王が流行り病で呆気なく死んでしまっていたからだ。
元々体の弱い国王ではあったが、大きな病気もなく過ごしていた。
それが流行り病にかかった途端、どんなに手を尽くしても回復する事はなかった。
回復魔法の使い手を呼んでも一時的に症状が落ち着くだけで快方に向かうことはなかった。
アロイスが王座を継いだが、未だにルイーズには妊娠の兆候はみられなかった。
このままでは万が一アロイスに何かがあった場合、跡を継ぐ者がいなくなってしまう。
傍系王族はいるが下手をすれば玉座の取り合いで内乱が起こりかねなかった。
何としてでもアロイスには早急に跡継ぎを作って貰う必要があった。
貴族達が集まって話し合いを始めたところ、デュルフェ公爵が自分の娘のリリアーナを側妃にさせると発言した。
その発言に反対する者もいたが、結局は賛成派の貴族に押し切られてしまった。
実際に跡継ぎに恵まれない以上、対策は必要である。
内乱が起こりかねない傍系王族を担ぎ上げるよりは、側妃をあてがった方がマシだと思われたからだ。
貴族達の決定にアロイスは必死に抵抗していたが、ルイーズに子供が出来ない以上受け入れるしかなかった。
リリアーナが自宅で寛いでいると、登城したはずの父親が上機嫌で戻ってきた。
「リリアーナ! 早く出かける支度をするんだ! アロイス樣の側妃に決まったんだからな!」
思いもかけない父親の言葉にリリアーナはすぐには理解出来なかった。
「お父様。帰るなり何をおっしゃいますの?」
だが、リリアーナの戸惑いをよそに公爵は使用人に命じてリリアーナの登城の準備をさせた。
このまま押し切らないとアロイスが側妃を拒否してしまう可能性もあるからだ。
リリアーナが突然の事に戸惑っているうちに準備が整えられ、馬車に押し込められて王宮へと向かった。
馬車が王宮に近付くにつれ、リリアーナの胸に徐々に喜びが溢れてくる。
側妃という立場ではあってもアロイスと結ばれるのが嬉しくて堪らなかった。
一度は諦めたアロイスだったけれど、結局は自分と結ばれる運命だったのかもしれない。
これからアロイスと結ばれて自分が先に身籠って王子を産めば、ルイーズなんかより自分を寵愛してくれるに決まっている。
そしてルイーズとは離婚して自分を正妃にしてくれるかも…。
リリアーナは馬車の中でそんな想像をしながら前方に見えてきた王宮を眺めていた。
王宮に入るとリリアーナは側妃がすむ西の宮へと案内された。
急な決定だったため、すべての準備が整っておらず寝室と浴室のみが使えるようにされていた。
王宮の使用人がリリアーナの荷物をバタバタと運び込んでいる。
寝室のベッドの脇に備えられたソファーに座って、リリアーナはただじっと待っている事しか出来なかった。
ルイーズは婚約発表のパーティーを開いてもらって、豪華な結婚式まで執り行ったのに…。
リリアーナは側妃になるため、何のお披露目もされず、誰からのお祝いの言葉ももらえない…。
いくらアロイスと結ばれるからといっても、本当にこれで良かったのだろうか?
リリアーナの胸にそんな疑問が浮かんできたが、父親の決定に逆らえるはずもなかった。
国王となったアロイスが側妃を娶ると決めた以上、リリアーナに拒否は出来ない。
やがて入浴の支度が整ったと告げられ、リリアーナは浴室へと連れて行かれた。
侍女達に体を磨かれ、夜着を身に着けられた。
寝室に戻り一人、アロイスが訪れるのを待っていた。
…いよいよ、アロイスと結ばれる…。
その喜びに胸を震わせながら…。
12
あなたにおすすめの小説
夫の不倫劇・危ぶまれる正妻の地位
岡暁舟
恋愛
とある公爵家の嫡男チャールズと正妻アンナの物語。チャールズの愛を受けながらも、夜の営みが段々減っていくアンナは悶々としていた。そんなアンナの前に名も知らぬ女が現れて…?
大きな騎士は小さな私を小鳥として可愛がる
月下 雪華
恋愛
大きな魔獣戦を終えたベアトリスの夫が所属している戦闘部隊は王都へと無事帰還した。そうして忙しない日々が終わった彼女は思い出す。夫であるウォルターは自分を小動物のように可愛がること、弱いものとして扱うことを。
小動物扱いをやめて欲しい商家出身で小柄な娘ベアトリス・マードックと恋愛が上手くない騎士で大柄な男のウォルター・マードックの愛の話。
【完結】愛する人はあの人の代わりに私を抱く
紬あおい
恋愛
年上の優しい婚約者は、叶わなかった過去の恋人の代わりに私を抱く。気付かない振りが我慢の限界を超えた時、私は………そして、愛する婚約者や家族達は………悔いのない人生を送れましたか?
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
【10話完結】 忘れ薬 〜忘れた筈のあの人は全身全霊をかけて私を取り戻しにきた〜
紬あおい
恋愛
愛する人のことを忘れられる薬。
絶望の中、それを口にしたセナ。
セナが目が覚めた時、愛する皇太子テオベルトのことだけを忘れていた。
記憶は失っても、心はあなたを忘れない、離したくない。
そして、あなたも私を求めていた。
淡泊早漏王子と嫁き遅れ姫
梅乃なごみ
恋愛
小国の姫・リリィは婚約者の王子が超淡泊で早漏であることに悩んでいた。
それは好きでもない自分を義務感から抱いているからだと気付いたリリィは『超強力な精力剤』を王子に飲ませることに。
飲ませることには成功したものの、思っていたより効果がでてしまって……!?
※この作品は『すなもり共通プロット企画』参加作品であり、提供されたプロットで創作した作品です。
★他サイトからの転載てす★
義兄様と庭の秘密
結城鹿島
恋愛
もうすぐ親の決めた相手と結婚しなければならない千代子。けれど、心を占めるのは美しい義理の兄のこと。ある日、「いっそ、どこかへ逃げてしまいたい……」と零した千代子に対し、返ってきた言葉は「……そうしたいなら、そうする?」だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる