捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅

文字の大きさ
29 / 57

29 黒幕の存在

しおりを挟む
 食事を終えると父上はさっさと食堂を出ていった。

 僕は少し遅れてバトラーに先導されて父上の部屋に向かった。

 バトラーが扉をノックするとすぐに入室を許可する返事が返ってきた。

 バトラーは扉を開けて僕を部屋に入れると、扉を閉めて出ていった。

 ここはアーサー達が壁にかかっている部屋だ。

 今はアーサーは僕の懐にいるので壁にかかっているのはグィネヴィアだけだ。

 父上は自分が座っているソファーの向かいに僕に座るように促した。

 僕が腰掛けると父上はおもむろに口を開いた。

「それで話とはなんだ? 今日、クリス王子が伝えてきた娼館の事なら既に手は回してあるぞ」

 流石はこの国の宰相様だ。仕事が早いな。
 だけど僕が聞きたいのはその事じゃない。

「ありがとうございます、父上。だけどそれとは別にお聞きしたい事があります。王都に来る前の街で僕を攫おうとした男達はどうなりましたか?」

 父上は眉をピクリと動かすと少しムスッとした顔になった。

「あの二人か。私としては処刑しても構わなかったのだがな。今は強制労働者として何処かに働きに行かされているぞ」

 僕の場合は未遂で終わったけれど、他の人達を攫っているなら強制労働をさせられても仕方がないだろう。

「実は僕がいた孤児院から誰か別の子供を攫った可能性があるんですが、その攫った子が何処にいるか知りたいんです」

 僕が必死に訴えるのに父上は何も考えていないような無表情を僕に向ける。

「その子の行方を知ってどうするつもりだ? まさか引き取って面倒を見るつもりか? それとも今日の娼館の娘のように何処かに養子先を探すつもりか? いい機会だから言っておこう。これ以上、他の貴族に隙を見せるような行動はするな」

 父上に言われて僕は返す言葉がなかった。。

 そこまでは考えていなかった。

 とりあえずカインを見つけなければと焦っただけだ。

 それに僕の行動が他の貴族に隙を見せるなんて思ってもみなかった事だ。

「僕のやろうとしている事は他の貴族に隙を見せる事なんですか?」

 父上は僕の質問には答えずにこんな事を言ってきた。

「ジェレミー。ジュリアが家を出たのは自らの意志だと思っているか?」

 思いもかけない言葉に僕はすぐには質問の意味が理解出来なかった。

 そんな僕よりも先に言葉を発したのは懐から飛び出したアーサーだった。

「ちょっと待て、アルフレッド! ジュリアは確かに自分で金目の物を持ち出して家を出たんだぞ。だから私が付いて行ったんじゃないか」

 アーサーの言う事も最もだ。しかし、父上の言葉の意味を考えるとそれではまるで母上は誰かに操られていた事になる。

「父上。それでは母上は誰かに操られていたと言う事ですか?」

 父上は相変わらず表情を崩さずに淡々と告げる。

「エレインを尋問した際に口にした事だからどこまで信頼出来る話かはわからないが、ジュリアがランスロットと再会したお茶会の時に催眠剤の入ったお茶を飲ませたそうだ」

 催眠剤ってつまり催眠術をかけた時のような効果が出るような薬って事だろうか? そんな薬を妊婦に飲ませても大丈夫だったのか?

「父上。その薬を飲ませて母上を操ったというのですか?」

「いや、操ったと言うよりは暗示をかけたと言った方がいいかもしれないな。それを飲ませてジュリアが学院時代にランスロットを好きだったと思わせてまた会いたいと思わせるように仕向けたようだ」

 そうやって何度も逢瀬を重ねさせて母上が自ら家を出るように仕向けたらしい。しかし次の父上の言葉に僕はもっと驚愕した。

「だが、そのエレインとランスロットも誰かに指示をされたようだ」

 誰かに指示って、どうしてそんな事がわかるんだろう。

「考えてもみたまえ。エレインもランスロットも生粋の貴族だ。その二人がいくら私やジュリアが好きだとは言え、既に結婚していて、しかも高位の貴族にちょっかいを出すなど、そんな考え無しな行動をすると思うか?」

 そう言われて僕は考え込んだ。僕は前世では庶民だったから、貴族社会の事なんて何もわからない。だけど誰かが不祥事を起こして連帯責任を取らされたという話は良く聞いた事がある。それと同じ事だと考えたら、自分の一族に害が及ぶと判り切っているのに、公爵家に手を出すなんて考えられないだろう。

「それではエレインとランスロットを操っていた誰かがいると言う事ですか?」

 僕が尋ねると父上は軽く頷いた。

「そう考えるのが自然だろう。エレインを尋問したがランスロットの名前しか出さなかった。それでランスロットを捕まえて白状させようと思ったんだが、アンデッドになっていてはもうどうしようも無い。結局誰が黒幕かは判らずじまいだ。だからお前が孤児院の子供を助けようとして動くと、その子供を手駒にされる可能性があるって事だ」

 それを聞いて僕は身震いをした。

 カインを助けるつもりが却ってカインを窮地に追い込んでしまう可能性もある。そしてカインを使って公爵家に何かを仕掛けられる事だってあるのかもしれない。

 すっかり落胆した僕を父上が慰めてくれる。

「それとなく聞いてみてもらう事にしよう。すまないが今はこれしか出来ない」

 淡々とした口調の父上にアーサーが噛みつく。

「全く、それで慰めているつもりか? もうちょっと言い様があるだろうに」

 そんなアーサーの側にスッと現れたのはグィネヴィアだった。

「アーサー。もう少し静かに出来ないの?」

 何となく、グィネヴィアに耳を引っ張られているアーサーの姿が浮かび上がるのは気の所為だろう。



 
 


 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

魔法学校の落ちこぼれ

梨香
ファンタジー
昔、偉大な魔法使いがいた。シラス王国の危機に突然現れて、強力な魔法で国を救った。アシュレイという青年は国王の懇願で十数年を首都で過ごしたが、忽然と姿を消した。数人の弟子が、残された魔法書を基にアシュレイ魔法学校を創立した。それから300年後、貧しい農村の少年フィンは、税金が払えず家を追い出されそうになる。フィンはアシュレイ魔法学校の入学試験の巡回が来るのを知る。「魔法学校に入学できたら、家族は家を追い出されない」魔法使いの素質のある子供を発掘しようと、マキシム王は魔法学校に入学した生徒の家族には免税特権を与えていたのだ。フィンは一か八かで受験する。ギリギリの成績で合格したフィンは「落ちこぼれ」と一部の貴族から馬鹿にされる。  しかし、何人か友人もできて、頑張って魔法学校で勉強に励む。 『落ちこぼれ』と馬鹿にされていたフィンの成長物語です。  

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...