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月末までに、お前を払ってもらおう
ドバイに着きました
しおりを挟む桔平は一応、真珠を座席まで送ってくれた。
「早く閉めろ。物騒だから」
と桔平は言うが、閉めたところで、上は空いているので、どのみち、完全な個室にはならない。
だが、ずっと監視するようにこちらを見ている桔平の視線から逃れたく。
では失礼致します、と頭を下げたあと、真珠は慌てて扉を閉めるボタンを押した。
しかし、電動の扉はゆっくり動いて、なかなか閉まらない。
その間、無表情な桔平と向き合うことになる。
は、早く閉まってください~っ。
またも笑顔を引きつらせながら真珠は耐えた。
ようやく扉は閉まり、桔平が通路を挟んで隣の席に戻っていく足音がした。
真珠は、やれやれ、と座席に腰を下ろす。
バーラウンジに行く前に頼んでいたので、座席は倒され、ベッドメイキングができていた。
パジャマに着替えて横になり、星空が映し出された天井を見る。
結構リアルで、いい雰囲気。
でも、本物の星空が見たいな。
いつか見たみたいな、満天の星空。
眠れなかったら映画でも見ようかと思っていたのだが。
何処でも眠れる真珠は、あっという間に眠りに落ちていた。
ドバイへの直行便は深夜に出て、早朝に着く。
普段ならこんな時間には起きないという時間に起きた真珠は、お腹が空いておらず、食べられないかもと思ったが。
ボリュームのある朝食を結構ガッツリ食べてしまった。
窓の向こうにドバイの街が見えてきたが、まだ外は暗く。
濃い霧の中に林立する近未来的なビル群には明かりが灯っていた。
……ほんとうにここ、現実なのかな? と不安になってくる。
霧の中に突っ込む感じに飛行機は到着したが、最後まで安定したフライトだった。
ドバイだ……。
初めてきたな、と真珠は空港内を見回した。
ドバイの人口の八割が外国人だと言うが、インドの人が多いらしい。
異国って感じだな~と思い、ちょっと心細くなっていたが、何処からかノリのいい関西弁が聞こえてきた。
聞き慣れた言葉に、ホッとしてしまう。
ドバイの公用語はアラビア語だが英語でも通じるところが多いようなので、そう不自由はないかもしれない、と真珠は思った。
「少し空港でゆっくりされますか?
すぐホテルに戻られますか?」
合流した侑李がそう訊いてくる。
桔平はドバイではホテル住まいのようだった。
空港でゆっくりか、と真珠は広い空港内を見回してみた。
ドバイの空港といえば、空港内のあちこちに立ち並ぶヤシの木と宝くじ。
空港で売られているミレニアム・ミリオネアという宝くじは、なんと、5000人に一人という高確率で、100万ドルが当たるのだ。
まあ、その宝くじ自体が高いのだが。
そのくじより安い、高級車や高級バイクが当たるくじもあったが、普段、車もバイクも乗らないので。
ここはやはり、100万ドルかっ、と真珠はミレニアム・ミリオネアを奮発して一枚買ってみた。
「これ、あとでメールで連絡来るんですよね?
億万長者になったらどうしましょうかっ」
たった一枚の宝くじを手に、もう当たった気で震える真珠に桔平が、
「お前はもともと億万長者だろ」
と言う。
「え?」
「だって、俺の妻なんだから」
いや、形だけの妻ですから、関係ないですよね……と真珠は思っていた。
この人の財産は私には関係ないし。
普段の生活に、とか身だしなみを整えるのに、とか言われてもらったお金の入った口座も触ってはいない。
私は古い日本家屋の家賃を払うお金と、日々、谷中で惣菜を買うお金と、たまに友だちと呑みに行くお金だけあればいいんだが……と、
「だけとか言いながら多いな」
と言われそうなことを思う。
そのとき、桔平がスマホを見て、ふうん、という顔をしているのに気がついた。
「なに見てるんですか?」
と訊いてみる。
プライベートなことに首突っ込むなと言われるだろうかと思いながらも。
だが、妻として人前に出る前に、少しは親しげな雰囲気を醸し出せるようになっておきたかったので、もう少し会話した方がいいかなと思ったからだ。
桔平はあっさりスマホで見ていたメールの内容を教えてくれた。
「いや、高校時代の後輩からだ。
大学の後輩が好きだったらしいんだが。
その子がいつの間にか、結婚してたらしい。
彼女の真意を確かめるために彼女を追いかけて鳥羽に行くと言っている」
「へえ、情熱的な方ですね」
それにしても、また鳥羽か……と思った真珠は、
「鳥羽、今、人気なんですかね?」
と呟いて、
「何処で人気なんだ……?」
と訊き返されてしまった。
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