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玖 安倍晴明の恩返し

目的がすりかわっていましたっ

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「いや~、やっと見つけましたっ。
 感動の再会でしたよっ」
と言いながら、壱花は二枚のヒトガタを抱いて、倫太郎とともに、あやかし駄菓子屋に戻った。

「そうか、よかったな」
とビールでいい気分の斑目は言ったが、高尾が、

「ん?
 見つけて、感動の再会果たしたいのって、ヒトガタだっけ?」
とスルメをひっくり返しながら言う。

 そうだっ。
 冨樫さんのお父さんを探してたんだったっ!

 衝撃のあまり、床に手をつきそうになる壱花の肩と頭に乗った式神は、次の指令を待つようにウロウロしていた。

「なんか目的、いつの間にかすり替わっちゃってましたね……」
とうなだれる壱花に斑目がプラスチックカップに注いだビールを差し出してくる。

「まあ呑め、壱花。
 ビラ探してきたことで、少なくとも進展してるだろ」

「あ、ありがとうございます」
と壱花はよく冷えたそれを一気にあおった。

「ぐはっ。
 ビール最高ですねっ。

 どんな悩みも悲しみも吹き飛びますよっ」

「……お前の悩みと悲しみ、どんだけ軽いんだ」
と倫太郎に言われたが。

 美味そうにビールをあおって、晴れやかに笑う壱花を見た生活に疲れたサラリーマンたちがビールを求め、レジに並んだ。

「壱花ちゃん、ビールの広告塔になれるよ」
と高尾が笑う。

「よし、景気付けに、俺がこれをおごってやろう」
と斑目が奥の方にあったクジの箱をとってきた。

「一箱、俺が買い占めよう。
 さあ、みんなで引いてみろ」

「またライオンとか、オウムとか、銃とか、陰陽師とか現れませんかね~?」

 そう言ったとき、あれっ? と思ったことが壱花にはあったのだが、

「陰陽師は京都で拾ってきたんだろうが」
と倫太郎に言われて、話しているうちに忘れていた。
 
「大丈夫みたいだぞ。
 ちょっとした菓子が当たるのと運勢が書いてあるだけみたいだから、このクジ。

 よし、お前最初に引かせてやるっ」
と斑目は例の部下の人に気を使って、箱を渡した。

 赤い三角のクジをおそるおそるその人は引く。

「開けてみろ」
と斑目に言われ、ペリッと開けてみていた。

 中には六等の文字と運勢。

「中吉 なにかが起こる」

 なにがっ!?
と全員がそのクジを覗き込んだ。


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