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参 付喪神

何故、こんなところにっ!

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 美味しかった。

 最近のビジネスホテルすごいな。

 あの値段でちょっとした朝食バイキングがついてるんだもんな。

 いいよなー、朝起きたら、あったかいご飯があるって。

 この間の茶粥も最高だった、と壱花はしみじみと思う。

 朝、倫太郎と食べるときもあるが。

 一緒にコンビニに行って、アパートに送ってもらって、買ってきたものを齧りながら、慌てて支度する、がいつものパターンだからだ。

 駅でお土産物のコーナーを眺め、百貨店に行き、

 よかった。
 最中もなかあったー、とか。

 あのマスカットのお菓子好きなんだけど、今、季節じゃないんだよなー、とか思いながら、壱花はまた幸せを感じていた。

 勤務時間にこんなことしてるなんて、天国っ!

 働いている木村さんたちに申し訳ないから、お土産、奮発しちゃおう、とせっせと選んでいると、こちらを見ているサラリーマンらしき男がいるのに気がついた。

 お店の人に領収書をもらっているようなので、仕事で使う手土産を買いに来たのだろう。

 こちらを見て、ぺこりと頭を下げてくる。

 下げ返して、そういえば、何処かで見たような、と思ったら、何度かあやかし駄菓子屋で見た生活に疲れた……と決めつけてはいけないが、ちょっと疲れたサラリーマンの方だった。

 なんであの駄菓子屋さんが岡山に? と思ってこちらを見ていたのだろう。

 出張なのかな?

 お疲れ様です、と思いながら、壱花はエスカレーターの方に行ってしまったサラリーマンさんに頭を下げた。
 


「びっくりしましたよー。
 こんなところでお客さんに会うなんて」

「そりゃ、向こうもビックリしたろ」
と仕事を終えて合流した倫太郎が電車で言ってくる。

「俺は人間の客には、あまり顔をさらさないようにしてるが、お前はまるきり、そういうことに無頓着だからな」

「私は一般社員ですからね。

 社長は顔出ししてて。
 取引先の人と顔を合わせたときに、
『はっ、駄菓子屋さんっ』
 ってなったらまずいですけど」
とまた横並びに座って話していると、冨樫が珍しく笑って言ってきた。

風花かざはなでも、副業かと思われてまずいですよね。
 でも、給料じゃ足らなくて、隠れてホステスやるとかいうのは聞いたことありますけど。

 駄菓子屋で働く、はあんまりないんじゃないですかね?

 でも、風花らしいですよね。

 ……ホステスは、ない」
とまた、なにを想像したのかおかしそうに笑い出す。

 ……珍しくご機嫌でなにを言ってくるのかと思ったら、ロクでもないですね、やはり、と思っていると、倫太郎も笑いながら言ってきた。

「壱花がホステスしてたら、絶対行かないぞ、その店。
 このホステス、100%気が利かないし」
と言って、はははは、と男二人で笑っている。

 ……二人にも差し入れのお菓子買ってきてたんですけどね。

 渡さないことにしましたよ、今。

 帰りの新幹線でひとり食べてやる……っ!
といじけながら、壱花は膝に抱えている土産物の詰まった袋をぎゅっと抱きしめた。



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