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プロローグ

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「お前には失望したよ。実妹を虐め貶め挙句の果てに殺そうとするとはな」
「……わ、わたしは……」

やってない、そう言ったところで信じてもらえるはずもない……

「貴様のような女には、死がふさわしい」

その言葉に、床に這いつくばされた彼女は顔を上げた。男は、そんな彼女を見下ろし短剣を放り投げた……

それは、彼女の家の家宝とも言える短剣……
父親である公爵が大事に持っていたもの…

「な、ぜ……?」

これが、ここにあるというのだろう。

「お父様が、お前みたいなのはもう娘じゃないって!」

妹はくすくす笑いながら、「残念ね、お姉様は愛されてないのよ」と言った。

「……」

短剣を手に取り、鞘から抜いて刀身を見た。青い宝石の付いた綺麗な短剣……これを、自分の血で汚すのは申し訳ないと彼女は思っていた。

(もう、疲れたわ……)

彼女は、短剣の切っ先を首元に持って行く。
どこを刺せば一瞬で死ねるのか…彼女は知らない。心臓は骨が邪魔すると考えた彼女は、首元に剣を突き刺した……! 

周囲から起こる悲鳴……と、唖然とする目の前の男……本当に刺すとは思ってなかったのだろう………妹は笑っている。

(あぁ……わたしも……)

「わたしも……あい、され……」

彼女が自分の首を刺した瞬間、会場に入ってくる3人の男性……

「ジュリアっ!」
「姉様っ!」
「お嬢様っ!!」


彼女は…、噂のせいで婚約を破棄された。
両親には愛されず、弟にも嫌われ……護衛騎士もまた、彼女を嫌っていると。

幼い頃から、無関心だった父親……
妹のケイナにベッタリだった弟……
妹のケイナに心酔していた騎士……


彼女は、死ぬ直前までそう思っていた……

だが……実際は…………
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