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須応さんと斑目くんの場合。
斑目くんの休日。
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斑目暁は、駅前の広場にあるベンチに座って、文字通り頭を抱えていた。彼の持つスマートホンの画面には、『今日用事入っちゃった! ごめんね!』というメッセージが浮かんでいる。
本日、斑目は、大学進学から会っていなかった幼馴染みと遊ぶ約束をしていた。地方創生の勉強をしている幼馴染みは、斑目の住んでいる地域の商店街に興味があったらしく、大学の話でもしながら見て回りたいと言っていた。斑目自身はあまり興味がなかったが、たまにはいいだろうと快諾し、そしてこれだ。
幼馴染みへの返事を打ち込んでいると、立て続けにメッセージが二つ届いた。
『ごめんだけど、どんなお店があったか教えてほしいな』
『課題で必要なの。このとーりm(_ _)m』
思わず、大きなため息を漏らしてしまう。
──自分で調べろって言えたら、楽なんだがな……。
しかし、相手は唯一の友人である。下手なことを言って友を失うのは避けたい。
仕方なく『了解』とだけ送信すると、斑目は重い足取りで商店街へと向かった。
斑目の住む琴原市は、国立大学のキャンパスが二つと県下一大きいショッピングセンターがあるだけで、それ以外は何もないような場所だ。ただし、地域の活性化のために「シャッター街」となっていた「琴原商店街」の再生が始まってからは、地元のローカルニュースで紹介されるほど注目され始めている。斑目の幼馴染みが来たがったのも、商店街の取り組みを実際に見てみたかったからだろう。
琴原商店街は駅のすぐそばにあり、最盛期はこのだだっ広いレンガの通りが人であふれかえっていたのだろうと想像できる。再生が始まった今では、週末ということもあって親子連れも何組か見ることができるのだが、それでもさびれているように思える。
新しく作り直したらしいアーケードをくぐって、友人にあとで説明できるようにゆっくりと歩いていく。
喫茶店、食堂、服屋、雑貨屋、古着屋、履物店、ケーキ屋──。
看板が古い店と、凝った店名の店が混ざりあって、その中にシャッターの降りた空き店舗が点在している。
新しそうな店と空き店舗の前を通るたびに、言葉に言い表せないような寂しさが心の中に沈んでいく。
まだ商店街の半分にすら到達していないが、歩く速度がだんだん速くなる。はやく抜け出したい気持ちが、身体の方にも表れ始めていた。
三店舗目の喫茶店を越えて、商店街の中でも一際古そうな本屋の前に差し掛かったとき、斑目の足がゆっくりと止まった。
近くから、子供の楽しそうな声が聞こえてきたのだ。鬼ごっこでもして、走り回っているかのような。
この声は、自分の前を歩く親子のものではない。と、すると──。
止まっていた足が、再び動き始める。「幸里書店」と木の看板が出ているその店舗の横。アスファルトで舗装された通路。ワクワクする心とともに進んでいくと、フェンスで囲まれた小さな公園があった。
フェンスの内側では、小さな子供たちが走り回っている。商店街で聞こえた子供の声は、彼らのだろう。何とも微笑ましい光景で、思わず笑みがこぼれる。
声の正体もわかった。さあ、商店街の散策に戻ろうか──と回れ右をすると、杖をつきながらこちらへと向かってくる老人男性の姿が目に入った。
「こんにちは」
すれ違う前に、男性がにこやかに挨拶する。斑目も会釈とともに挨拶を返し、商店街へと歩みを進めようとした。
しかし。
斑目の背後から、何かを落としたような音。振り返ると、先ほどの男性がしゃがみ込み、落としたものを拾い集めていた。
「大丈夫ですか?」
何と声をかけるのが正解なのかわからないまま、斑目も拾うのを手伝いに行く。どうやら、男性の持つ手提げかばんの持ち手が切れてしまい、そのはずみで中身が散らばってしまったようだ。
斑目は、上着のポケットに手を突っ込む。指に、ポリ袋が触れた感触。買い物したときのことを考えて、念のために準備しておいたものだ。
「これ、使ってください」
広げて大きさを確認し、男性に差し出す。彼は何度も頭を下げながら、拾ったものを全てポリ袋へと移していった。
「……重そうですね」
「いやいや、これぐらいならまだ大丈夫だ」
男性は、快活に笑いながら荷物を持ち上げる。しかし、重さで伸びたポリ袋の持ち手が、手に食い込んで痛そうである。
何か──と斑目は自身の両手を見つめて、そして思いついた。
「本当にいいのかい? 図書館まで運んでもらっても」
「特に用事もなかったんで、全然」
ポリ袋を抱えた斑目は、男性の後について歩きながら会話を続ける。
「琴原の図書館って、この先にあったんですね。初めて行きます」
「なに? 今まで行ったことがないとは……うちの孫は小学校の授業で行ったらしいが」
「俺、何年か前にこっちに引っ越してきたんです」
「ああ、それで……」
男性は納得したように頷く。
「ならば、ついでに利用者カードを作っていくといい。あそこは親切な人が多いから、カウンターで訊くとすぐに作ってもらえるだろう」
「あー、と……そうっすね」
歯切れの悪い返事になってしまった。申し訳なさでいっぱいになるが、斑目はあまり本が好きではないのだ。カードを作ったところで、利用しない自信がある。
それから、図書館の蔵書がいかに多いかという話や孫の友だちが司書として働いてる話を聞き、ようやく目的地についた。
ガラス製の扉を押して中に入ると、ピンと張りつめたような独特な空気に包まれる。
「図書館では静かにしないといけない」という、幼少期から刷り込み続けられた常識が、この異様な緊張感を形作っているのだろう。
先に歩いていく男性は、迷いのない足取りでロビーを一直線に突き進んでいき、「一般閲覧室」と書かれた札がかかった扉の前に立つ。
「ここまでで大丈夫だ。ありがとう」
「いえ……」
ボリュームを非常に小さくした声で会話したが、やってはいけないことをしているかのようで、背筋が冷えたように感じる。
男性に荷物を手渡し、扉を開ける。カウンターへと進んでいく彼の姿を見送りながら、斑目は一つ思い出したことがあった。
──たしか講義で、読んでおいた方がいいって紹介されていた本があったよな。
教授が黒板に書いたタイトルと筆者の名前と出版社名は、講義終わりにスマホで写真を撮ってある。せっかくだから、探してみよう。
スマホに保存していた画像を開き、とりあえず入ってすぐの本棚の前に立つ。
筆者の名前は伊藤卓正だから、五十音順だと前の方にあるはず。そう見当をつけて探してみたのだが、ア行の作者名の並ぶその本棚に、伊藤卓正の名前は見当たらない。
見逃してしまったのか、それとも、そもそも画像の筆者の名前を見間違えているのか──と、もう一度スマホの電源を入れ直して写真を確認しようとしたところで、「あのう──」とすぐ横から声をかけられた。
「何か、お探しでしょうか」
声の方へと視線を動かすと、そこには斑目と歳が近そうな若い男性が立っていた。
無駄に背の高い斑目と比べると、華奢で線の細い体躯。小さい顔は黒目がちな瞳と白い不織布マスクが大半を占め、ふわふわとしたくせ毛に彩られている。
「どうしましたか……?」
きゅっと彼の眉根が寄る。その様子にハッとした斑目は、慌てて消えかけていたスマホの画面を付け直し、その人へと差し出した。
「こ、この本。探しているんですけど……」
「少々お借りしてもよろしいでしょうか」
斑目からスマホを受け取った彼の胸元には、「琴原市立図書館司書 須応真人」と書かれたネームプレートが揺れている。須応はスマホを持ったままカウンターへと向かい、パソコンで何かを調べてすぐに斑目の元へ戻ってきた。
「お待たせしてすみませんでした。スマートホン、お返しします」
「あ、と、ありがとうございます」
「本の場所まで案内いたします」
「は、はい。お願いします」
斑目の目の前を、須応が歩いていく。定規を当てているかのように姿勢が良いが、硬い印象はない。歩く度に跳ねる後ろ髪で、むしろ柔らかく感じる。
須応は、閲覧室の真ん中付近にある本棚の前に立つと、一冊の本を抜き取る。
「こちらの本でお間違いないでしょうか」
そして差し出された本は、確かに斑目が探していたもので。礼を言いながら受け取ると、須応は目を細めて微笑んだ。
「また何かございましたら、気軽にお声がけください」
「あの」
では、と一礼しどこかへと移動しようとする須応を、思わず引き留めてしまう。
再びその瞳が自身に向けられるのを感じ、まとまらない思考から、何とか「言い訳」を見つけ出す。
「この本、借りて帰りたいんですけど……ここを利用するのは初めてで……」
「初めてのご利用なのですね。では、カードを作らせていただきますので、カウンターの方へとお進みください」
上手く言葉を導くことはできなかったが、相手にはしっかりと伝わったようだ。
カウンターへと移動し、そのまま須応の説明のもと名前などの情報を記入し、それをもとにカードを作ってもらって貸出の手続きもする。
その間の須応の動きにも目を奪われ、貸出期間の説明をする須応の声に心も奪われた。
「またのご利用、お待ちしております」
よし、また来よう。
放心状態で図書館を出た彼の頭の中には、幼馴染みとの約束はすっかりなくなっていた。
本日、斑目は、大学進学から会っていなかった幼馴染みと遊ぶ約束をしていた。地方創生の勉強をしている幼馴染みは、斑目の住んでいる地域の商店街に興味があったらしく、大学の話でもしながら見て回りたいと言っていた。斑目自身はあまり興味がなかったが、たまにはいいだろうと快諾し、そしてこれだ。
幼馴染みへの返事を打ち込んでいると、立て続けにメッセージが二つ届いた。
『ごめんだけど、どんなお店があったか教えてほしいな』
『課題で必要なの。このとーりm(_ _)m』
思わず、大きなため息を漏らしてしまう。
──自分で調べろって言えたら、楽なんだがな……。
しかし、相手は唯一の友人である。下手なことを言って友を失うのは避けたい。
仕方なく『了解』とだけ送信すると、斑目は重い足取りで商店街へと向かった。
斑目の住む琴原市は、国立大学のキャンパスが二つと県下一大きいショッピングセンターがあるだけで、それ以外は何もないような場所だ。ただし、地域の活性化のために「シャッター街」となっていた「琴原商店街」の再生が始まってからは、地元のローカルニュースで紹介されるほど注目され始めている。斑目の幼馴染みが来たがったのも、商店街の取り組みを実際に見てみたかったからだろう。
琴原商店街は駅のすぐそばにあり、最盛期はこのだだっ広いレンガの通りが人であふれかえっていたのだろうと想像できる。再生が始まった今では、週末ということもあって親子連れも何組か見ることができるのだが、それでもさびれているように思える。
新しく作り直したらしいアーケードをくぐって、友人にあとで説明できるようにゆっくりと歩いていく。
喫茶店、食堂、服屋、雑貨屋、古着屋、履物店、ケーキ屋──。
看板が古い店と、凝った店名の店が混ざりあって、その中にシャッターの降りた空き店舗が点在している。
新しそうな店と空き店舗の前を通るたびに、言葉に言い表せないような寂しさが心の中に沈んでいく。
まだ商店街の半分にすら到達していないが、歩く速度がだんだん速くなる。はやく抜け出したい気持ちが、身体の方にも表れ始めていた。
三店舗目の喫茶店を越えて、商店街の中でも一際古そうな本屋の前に差し掛かったとき、斑目の足がゆっくりと止まった。
近くから、子供の楽しそうな声が聞こえてきたのだ。鬼ごっこでもして、走り回っているかのような。
この声は、自分の前を歩く親子のものではない。と、すると──。
止まっていた足が、再び動き始める。「幸里書店」と木の看板が出ているその店舗の横。アスファルトで舗装された通路。ワクワクする心とともに進んでいくと、フェンスで囲まれた小さな公園があった。
フェンスの内側では、小さな子供たちが走り回っている。商店街で聞こえた子供の声は、彼らのだろう。何とも微笑ましい光景で、思わず笑みがこぼれる。
声の正体もわかった。さあ、商店街の散策に戻ろうか──と回れ右をすると、杖をつきながらこちらへと向かってくる老人男性の姿が目に入った。
「こんにちは」
すれ違う前に、男性がにこやかに挨拶する。斑目も会釈とともに挨拶を返し、商店街へと歩みを進めようとした。
しかし。
斑目の背後から、何かを落としたような音。振り返ると、先ほどの男性がしゃがみ込み、落としたものを拾い集めていた。
「大丈夫ですか?」
何と声をかけるのが正解なのかわからないまま、斑目も拾うのを手伝いに行く。どうやら、男性の持つ手提げかばんの持ち手が切れてしまい、そのはずみで中身が散らばってしまったようだ。
斑目は、上着のポケットに手を突っ込む。指に、ポリ袋が触れた感触。買い物したときのことを考えて、念のために準備しておいたものだ。
「これ、使ってください」
広げて大きさを確認し、男性に差し出す。彼は何度も頭を下げながら、拾ったものを全てポリ袋へと移していった。
「……重そうですね」
「いやいや、これぐらいならまだ大丈夫だ」
男性は、快活に笑いながら荷物を持ち上げる。しかし、重さで伸びたポリ袋の持ち手が、手に食い込んで痛そうである。
何か──と斑目は自身の両手を見つめて、そして思いついた。
「本当にいいのかい? 図書館まで運んでもらっても」
「特に用事もなかったんで、全然」
ポリ袋を抱えた斑目は、男性の後について歩きながら会話を続ける。
「琴原の図書館って、この先にあったんですね。初めて行きます」
「なに? 今まで行ったことがないとは……うちの孫は小学校の授業で行ったらしいが」
「俺、何年か前にこっちに引っ越してきたんです」
「ああ、それで……」
男性は納得したように頷く。
「ならば、ついでに利用者カードを作っていくといい。あそこは親切な人が多いから、カウンターで訊くとすぐに作ってもらえるだろう」
「あー、と……そうっすね」
歯切れの悪い返事になってしまった。申し訳なさでいっぱいになるが、斑目はあまり本が好きではないのだ。カードを作ったところで、利用しない自信がある。
それから、図書館の蔵書がいかに多いかという話や孫の友だちが司書として働いてる話を聞き、ようやく目的地についた。
ガラス製の扉を押して中に入ると、ピンと張りつめたような独特な空気に包まれる。
「図書館では静かにしないといけない」という、幼少期から刷り込み続けられた常識が、この異様な緊張感を形作っているのだろう。
先に歩いていく男性は、迷いのない足取りでロビーを一直線に突き進んでいき、「一般閲覧室」と書かれた札がかかった扉の前に立つ。
「ここまでで大丈夫だ。ありがとう」
「いえ……」
ボリュームを非常に小さくした声で会話したが、やってはいけないことをしているかのようで、背筋が冷えたように感じる。
男性に荷物を手渡し、扉を開ける。カウンターへと進んでいく彼の姿を見送りながら、斑目は一つ思い出したことがあった。
──たしか講義で、読んでおいた方がいいって紹介されていた本があったよな。
教授が黒板に書いたタイトルと筆者の名前と出版社名は、講義終わりにスマホで写真を撮ってある。せっかくだから、探してみよう。
スマホに保存していた画像を開き、とりあえず入ってすぐの本棚の前に立つ。
筆者の名前は伊藤卓正だから、五十音順だと前の方にあるはず。そう見当をつけて探してみたのだが、ア行の作者名の並ぶその本棚に、伊藤卓正の名前は見当たらない。
見逃してしまったのか、それとも、そもそも画像の筆者の名前を見間違えているのか──と、もう一度スマホの電源を入れ直して写真を確認しようとしたところで、「あのう──」とすぐ横から声をかけられた。
「何か、お探しでしょうか」
声の方へと視線を動かすと、そこには斑目と歳が近そうな若い男性が立っていた。
無駄に背の高い斑目と比べると、華奢で線の細い体躯。小さい顔は黒目がちな瞳と白い不織布マスクが大半を占め、ふわふわとしたくせ毛に彩られている。
「どうしましたか……?」
きゅっと彼の眉根が寄る。その様子にハッとした斑目は、慌てて消えかけていたスマホの画面を付け直し、その人へと差し出した。
「こ、この本。探しているんですけど……」
「少々お借りしてもよろしいでしょうか」
斑目からスマホを受け取った彼の胸元には、「琴原市立図書館司書 須応真人」と書かれたネームプレートが揺れている。須応はスマホを持ったままカウンターへと向かい、パソコンで何かを調べてすぐに斑目の元へ戻ってきた。
「お待たせしてすみませんでした。スマートホン、お返しします」
「あ、と、ありがとうございます」
「本の場所まで案内いたします」
「は、はい。お願いします」
斑目の目の前を、須応が歩いていく。定規を当てているかのように姿勢が良いが、硬い印象はない。歩く度に跳ねる後ろ髪で、むしろ柔らかく感じる。
須応は、閲覧室の真ん中付近にある本棚の前に立つと、一冊の本を抜き取る。
「こちらの本でお間違いないでしょうか」
そして差し出された本は、確かに斑目が探していたもので。礼を言いながら受け取ると、須応は目を細めて微笑んだ。
「また何かございましたら、気軽にお声がけください」
「あの」
では、と一礼しどこかへと移動しようとする須応を、思わず引き留めてしまう。
再びその瞳が自身に向けられるのを感じ、まとまらない思考から、何とか「言い訳」を見つけ出す。
「この本、借りて帰りたいんですけど……ここを利用するのは初めてで……」
「初めてのご利用なのですね。では、カードを作らせていただきますので、カウンターの方へとお進みください」
上手く言葉を導くことはできなかったが、相手にはしっかりと伝わったようだ。
カウンターへと移動し、そのまま須応の説明のもと名前などの情報を記入し、それをもとにカードを作ってもらって貸出の手続きもする。
その間の須応の動きにも目を奪われ、貸出期間の説明をする須応の声に心も奪われた。
「またのご利用、お待ちしております」
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