神に喧嘩を売った者達 ~教科書には書かれない真実の物語~

平行宇宙

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学園編 § 学校生活編

第90話 鞍馬 再び (後)

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 「まぁ、なんだ。この前伏見に行ったろ?あのとき神職と話したんだが、神々が、相当に業を煮やしてるようでな、あちこちの神職に訴えがあるようだ。お前も直接何柱かの神や亜神に接触されたんだろ?」
 「うん。」
 「神々としては、あれをやっているヤツらが敵、認定でいいんだよな?」
 「まあ、そこだけは間違いないと思う。」
 「今、京ではな霊能者が二分されている。保守と改革、なんて言ってるようだが、実質は京の術式の書き換えじゃないか、と俺としては睨んでいる。その書き換えをなそうとしている一派と、それを阻止しようとしている一派ってとこだな。」
 「えっと・・・つまりは、生島が改変派で養老が保守派、ってこと?」
 「ま、そうなるわな。」
 「改変、って、ひょっとしてレイライン、龍脈を壊そうとしてるってことか!」
 「だろうなぁ。それに神々が抗議してる、って感じか。」
 「そんなもんいじったら、京どころか、地球がどうなるか。」
 「だろうな。ていうか、むしろ本命はそっちだろうな。」
 「え?」
 「実はAAOとしても二分してる、つうのはチラッと話したな。」
 「・・・まぁ。」
 「今誰がどういう位置にいるかは分からん。1つだけはっきりしているのは、AAOはザ・チャイルドと共にある、というか、ザ・チャイルドの保護管理組織としての面が、現状は大半を占めてる、と言い換えられる。そういう意味では、設立の概念からは大きく外れてはきてるんだが、それはいい。ザ・チャイルド、という化け物なんだが、本来AAO管理下とはいえ、意志を持つ者、いや、意志が強すぎて神をも否定するそんな馬鹿者ばかりだ。当然、その管理を嫌う者も多い。が、AAOから逃げようとすれば、・・・それはお前が一番良く分かっているよな?」
 ああ分かる。
 いくら強くても個は組織にはかなわない。
 そして、どんなに丈夫でも、いや丈夫で死ぬことが出来ないからこそ、苦痛にさらされれば、精神から弱っていく。そうやって諦め、ただAAOに従うようになってしまったのが、僕で、そしてザ・チャイルドという化け物達だ。

 「AAOが不安定な今、1つだけ確かなことがある。これもお前に言ったよな。ザ・チャイルドの意志は1つだ。」
 いつになく、真面目な顔で、淳平が僕を見た。
 僕に、言った?
 あれか?
 あの、例会のために集められた時に言われたことか?

(それでだ。飛鳥。これはチャンスでもある。俺たち、ザ・チャイルド、その中枢はなんだかんだ言ったってお前だ。この地球を、この次元を生かす、そう決めたのはお前だ。お前が決めて、俺たちは乗った。勘違いするな。お前に乗ったのは俺たちの意志だ。事実乗らなかった奴もかなりいたろ?だからお前の責任だなんて言うつもりはない。俺たちはみんな、この次元を救いたかった。あのときは間違いなくそうだ。だが今は?今はどうだ?今でも救いたいか?それともこの生をすべての存在と共に消したいか?俺たちにはその選択権がある。ザ・チャイルドのほとんどがお前に乗っかるだろう。もちろん、俺もだ。)

 僕は、淳平に言われた言葉を思い出す。
 あのときは、単に弱くなった霊能者の代わりに戦わされる僕たちザ・チャイルドがストライキすれば、現状は簡単に変わり、増え続ける他次元からの侵攻に簡単に犯される、それを放置するならみんなで乗るぞ、そう言われているのだ、と思っていたけど。

 現状はさらにその上を行く。

 放置すれば、浸食されるだろう、その程度の話だったけど、積極的にこの星を霊的に破壊しようとする一派がいて、実際に脅威にさらされている。
 これに敵対し現状を守るか、それとも放置して破壊されるままに見守るか、いや、さらには破壊している一派に加担して崩壊を早めるといったことまで視野に入れられる、のか?

 「なぁ、飛鳥君。我々は鞍馬は、神々とともに守ってきたこの世界を守りたい、と思ってる。京のこの術式を守るを是としている。もちろん養老もね。そして、そういう一派の元締めでもある、と言ったら今の状況が分かるだろうか。もし、君が術式破壊を是とするなら、我々の首を打ってくれて構わない。君たちと敵対して勝てるとは思ってないからね。フフ。実はね、私が伏見の雄世先生を口説き落とせたのは、これが条件なんだ。神々は君を大切に思っている。例の高位の神を蹴散らした君を、この次元の神たる、我らが神々が全面的に肯定している、そう先生はおっしゃってね。君が決めたなら、神々は静観するだろう。君が望めば力を貸すだろう。そして、それはザ・チャイルド、世界中に散らばる君と同類方とて、飛鳥君と共にある、そう結論を出した、そうですね、矢良様。」
 「ああ。伏見の神職とは先日そういう話をしてね。彼はAAOではなく、飛鳥につく、そう言っていたよ。」
 「はい。そして我々には、彼を口説けたなら自分は我々に付く、そう言って、先ほどの書を届けてくれたんだよ。だったら、私たちはこの首を差し出してでも君に助力を請うしかないだろう?」

 ・・・・

 「やめてよ・・・。」
 「ん?」
 「なんでだよ。なんで僕にそんなこと・・・僕には決められないよ。無理、なんだ・・・」
 僕が決めて、神は、そう次元を管理していた高次の神は、去った。
 そして、その呪いを受けて、逆らった100名超もの人間が、不死者となってしまった。
 それから、60年。まだたった60年。
 続く未来は果てしなく、僕らはどうやって朽ちればいいのだろう。

 不死の呪いを受けたのは、何も僕らが初めてではない。
 今や各国の支部長に居座っている者は不死の先輩たち。
 みんな、総じて狂ってる。
 まともでいられるはずはない。
 人の身に不死の呪いは、過酷、という言葉で括れるものではなく・・・
 この地球が消滅すれば、呪いはなくなるのか?
 この次元がなくなれば、僕らも消えれるのか?
 そんな問答も何度したことか。

 僕の決断で、誰かは不幸になるだろう。
 だって、守るも反対、壊すも反対、いずれも反対者がいるんだから。
 だったら、中立、という名の放置?
 ハハ、AAOに管理される身。そんなことが許されるはずもなく。
 だったら、AAOに命じられるまま?
 そのAAO自体が割れているのに?
 ていうか、AAOの、僕に命じているのは、どっち派なんだろう。
 そしてその命令は有効、なのか?
 淳平を見ても、そのあたりは分からない。教えるつもりはなさそうで、だったら僕の知る術は、少なくとも、今はないだろう。
 だけど・・・

 「僕は、分かりません。でも、関係する神々の願いはできるだけ叶えたい。けど、何が正しいか、僕には見えていないんだ。ただ1つ言えること。僕には敵じゃない人間の首を討ったりできないよ。だから、もし僕と敵になったら、敵としてその首をさらしてください。今の僕にはそれしかできない。」

 なんとか絞り出した本音。
 淳平が乱暴に頭を撫でてきた。
 
 
 
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みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.11 花雨

お気に入り登録しときますね♪

2021.08.12 平行宇宙

ありがとうございます。
モチベ上がります♪

解除

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