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15-1 シェリルside セオとの出会い
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「セオさまぁ ~、これってぇ、どうすればいいですか?」
シェリルは部署内の上司の上司の上司セオにしつこく付きまとっていた。
その様子を直属の女上司が苦い顔で見ているが、そんなことはお構いなしのシェリルである。
若くして役職についたセオは出世頭で顔もいい。セオは既婚者だけれどこの世の中には略奪愛なんてざらにあるからシェリルはセオを虜にしたいのだ。
(どんな略奪愛だって月日が経てば真実の愛に変わっていくものよ。不倫で始まった恋は最初こそ騒がれるけれど数年も経てばおしどり夫婦なんて言われているセレブはたくさんいるわ)
シェリルが目指すのは略奪愛の末に正妻に収まった貴婦人達だ。そのためには爵位持ちか大金持ちの男をまず捕まえる必要があった。それゆえのセオなのだった。
「セオ様は既婚者よ? ベタベタとまとわりつくのはおやめなさいよ」
直属の女上司の忠告をまるっと無視するシェリル。
(うるさい女ね! 私が誰にベタベタしようと大きなお世話だわ! だって高位貴族の独身の男性だとまず相手にされないもの。家柄や学歴、家族構成、全部を調べ上げられ親戚一同に反対されてお付き合いも出来ない。でも既婚者なら奥さんへの小さい不満は誰でも抱えているじゃない? だからそこを聞いてあげてお付き合いするのよ。上手いこと付き合えたら相手の家庭に乗り込んでいって奥さんを追い出しちゃえばいいもの)
不埒な考えのシェリルは臨時雇いの同僚や女性の上司が大嫌いで話をすることも避けていた。あのような忠告も自分が可愛すぎるから妬んで言っているものだと思い込んでいるのである。
ターゲットをセオに決めたシェリルは事あるごとにセオに近づく。
「セオ様。奥様はセオ様のような仕事ができる出世頭と結婚ができてとても幸せですね。いつも感謝されているのでしょう?」
「感謝…はされているかな? よくわからないよ」
「だってセオ様は出世頭ですよ! こんな立派な旦那様を持てて幸せじゃないですか? それなのに日々感謝の気持ちも伝えないのですかぁ? 最低の奥様ですねぇ」
シェリルはここぞとばかりにセオの妻を貶める言葉を口にした。
「ありがとう。君だけだよ、そう言ってくれるのは……」
悲しげな表情のセオにシェリルは応援したい気持ちでいっぱいになった。
(きっと奥さんに虐められているんだわ! 気の利かないバカな女なのよ)
「セオ様は有能なとても素敵な男性ですわ! きっと奥様にはそれがわからないのでしょうね。奥様はどこのご令嬢だったんですかぁ?」
「え? …、そうだなぁ…私の妻は貴族では無いから」
シェリルは気まずそうに目を逸らすセオの表情には気づかない。
「奥様は貴族ではない? そういえばセオ様はポワゾン侯爵様にはいつなるんですか?」
シェリルは平民だし臨時雇いの書類整理係り(古い書類を年代別に綴じ書類整理箱につめ書類保管室に持っていく仕事)なので王宮に働きに来ていても貴族のことはほとんどわからなかった。
「……」
「やっぱり侯爵様となると気品が違いますものね。嫡男様でしょう? でなければその若さで文官の役職になどつけませんよね? 長官にも気に入られているって聞きました」
シェリルは思いつく限りのお世辞を言いまくった。とにかくシェリルは貴族を褒めちぎるのが1番だと思っている。貴族はプライドが高いからきっといい気分になるはずなのだ。
何度もセオに話しかけて親しくなっていくシェリル。そのうちセオはシェリルと一緒にいると楽しいと言い出すようになった。
(そりゃそうよ。言葉の端々には必ず褒め言葉を入れているし、セオ様をこの世で1番できる男として扱ってあげているもん。男って単純なのよね)
シェリルがタネをまいている男は他にもいたけれど、セオはその中で1番お金持ちだった。
シェリルは部署内の上司の上司の上司セオにしつこく付きまとっていた。
その様子を直属の女上司が苦い顔で見ているが、そんなことはお構いなしのシェリルである。
若くして役職についたセオは出世頭で顔もいい。セオは既婚者だけれどこの世の中には略奪愛なんてざらにあるからシェリルはセオを虜にしたいのだ。
(どんな略奪愛だって月日が経てば真実の愛に変わっていくものよ。不倫で始まった恋は最初こそ騒がれるけれど数年も経てばおしどり夫婦なんて言われているセレブはたくさんいるわ)
シェリルが目指すのは略奪愛の末に正妻に収まった貴婦人達だ。そのためには爵位持ちか大金持ちの男をまず捕まえる必要があった。それゆえのセオなのだった。
「セオ様は既婚者よ? ベタベタとまとわりつくのはおやめなさいよ」
直属の女上司の忠告をまるっと無視するシェリル。
(うるさい女ね! 私が誰にベタベタしようと大きなお世話だわ! だって高位貴族の独身の男性だとまず相手にされないもの。家柄や学歴、家族構成、全部を調べ上げられ親戚一同に反対されてお付き合いも出来ない。でも既婚者なら奥さんへの小さい不満は誰でも抱えているじゃない? だからそこを聞いてあげてお付き合いするのよ。上手いこと付き合えたら相手の家庭に乗り込んでいって奥さんを追い出しちゃえばいいもの)
不埒な考えのシェリルは臨時雇いの同僚や女性の上司が大嫌いで話をすることも避けていた。あのような忠告も自分が可愛すぎるから妬んで言っているものだと思い込んでいるのである。
ターゲットをセオに決めたシェリルは事あるごとにセオに近づく。
「セオ様。奥様はセオ様のような仕事ができる出世頭と結婚ができてとても幸せですね。いつも感謝されているのでしょう?」
「感謝…はされているかな? よくわからないよ」
「だってセオ様は出世頭ですよ! こんな立派な旦那様を持てて幸せじゃないですか? それなのに日々感謝の気持ちも伝えないのですかぁ? 最低の奥様ですねぇ」
シェリルはここぞとばかりにセオの妻を貶める言葉を口にした。
「ありがとう。君だけだよ、そう言ってくれるのは……」
悲しげな表情のセオにシェリルは応援したい気持ちでいっぱいになった。
(きっと奥さんに虐められているんだわ! 気の利かないバカな女なのよ)
「セオ様は有能なとても素敵な男性ですわ! きっと奥様にはそれがわからないのでしょうね。奥様はどこのご令嬢だったんですかぁ?」
「え? …、そうだなぁ…私の妻は貴族では無いから」
シェリルは気まずそうに目を逸らすセオの表情には気づかない。
「奥様は貴族ではない? そういえばセオ様はポワゾン侯爵様にはいつなるんですか?」
シェリルは平民だし臨時雇いの書類整理係り(古い書類を年代別に綴じ書類整理箱につめ書類保管室に持っていく仕事)なので王宮に働きに来ていても貴族のことはほとんどわからなかった。
「……」
「やっぱり侯爵様となると気品が違いますものね。嫡男様でしょう? でなければその若さで文官の役職になどつけませんよね? 長官にも気に入られているって聞きました」
シェリルは思いつく限りのお世辞を言いまくった。とにかくシェリルは貴族を褒めちぎるのが1番だと思っている。貴族はプライドが高いからきっといい気分になるはずなのだ。
何度もセオに話しかけて親しくなっていくシェリル。そのうちセオはシェリルと一緒にいると楽しいと言い出すようになった。
(そりゃそうよ。言葉の端々には必ず褒め言葉を入れているし、セオ様をこの世で1番できる男として扱ってあげているもん。男って単純なのよね)
シェリルがタネをまいている男は他にもいたけれど、セオはその中で1番お金持ちだった。
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