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15-2 シェリルside 子供を捨てたシェリルはやはり更生できなかった
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シェリルはセオから妻との間に子供ができないと愚痴られていた。だったら自分に子供ができればすぐに奥さんを追い出せると思う。シェリルと関係を持った男性はセオの他に実は2人もいるのである。
(会うたびに3人の男性としていれば、そのうち妊娠できるわよね! あはは。子供ができればこっちのもんだわ。あたしは侯爵夫人になるんだ!)
シェリルはニヤリとほくそ笑む。
妊娠したシェリルはセオの屋敷に堂々と乗り込むのだが、ラーニーからトレーニングソードで叩かれて……
シェリルは今、国の機関である国民相談センターで働かせられている。重い荷物を持つ仕事ができない妊婦なので体に負荷がかかる仕事が排除された結果、椅子に座って国民の相談を承るこの仕事があてがわれた。バッテンベルク侯爵は良心的でシェリルに比較的楽な仕事を与え、寮にも入れてくれたのだった。しかし、この仕事は肉体的には辛くないけれどシェリルにとっては退屈でめんどくさい仕事ではあった。
「うちの猫のみーちゃんが死んでしまったんだけど、この間のネズミ対策の毒団子を家に置くことを推奨したあんた達が悪いんじゃないの? 死んだみーちゃんを生き返らせてよ」
中年の女が泣きはらした目でやってくる。
「申し訳ありません。毒団子は害虫やネズミにはとても効き目がありますけれど、保管や設置場所については注意点をいくつも申し上げたと思います。小さなお子さんやペットがいるご家庭はやめたほうがいいというような事はお伝えしてますよね」
「そんなの聞いてないわよ。細々とした説明なんていちいち覚えているわけがないでしょう? とにかくあんたたちが奨励したのがいけないんだから責任をとりなさいよ」
このように説明をよく聞かない人には、シェリルはひたすら謝り続けるしかないのだ。たいていは謝り倒してお引き取り願うのだが不満は募る一方である。
次の女も涙ながらにシェリルを責め立てる。
「国が推奨する予防接種でうちの子に高熱が出て後遺症で右耳が聞こえづらくなったんだけど、どうしてくれるのよ? 副反応なんてごく稀だってきいてたのに!」
「申し訳ありません」
「あんたたちを訴えてやるからね! 」
(なんでこれほど文句を言われなきゃいけないの? 毒団子も予防接種も起案したのは文官のお偉いさん達じゃないの? そして、それを承認したのは国王陛下だ。私は1ミリもこんな政策に賛成した覚えは無い。なのに文句の窓口はあたしが引き受けてお給料はほんの少しだわ。これを決めた肝心のお偉いさんたちは威張り腐ってたっぷりとお金をもらっているのに。あーつまんない)
おまけにイレーヌへの慰謝料ということでシェリルのお給料の半分は持っていかれてしまう。
(こんな退屈でつまらない仕事は嫌よ! 子供さえ産んだら身軽になれるのだから逃げてしまおう!)
子供を産んだシェリルはポワゾン家の門の前にその子を捨てて姿をくらませたのである。
それから月日は流れ、
「あたしはね、本当は侯爵夫人になるはずだったんだよ。お貴族様の愛を一身に受けて貴婦人になるはずだったんだ」
場末の娼館でいつもの自慢話しを始める女。
「あたしはあのラーニーとかいう子供さえいなければきっと侯爵夫人になれたのさ」
狂気の色をはらんだ瞳に男達は苦笑する。
「ふざけるなよ! お前が侯爵夫人だったら俺は国王になれるぜ」
客の男の1人がせせら笑いながらその女を押し倒した。
「あたしに触れるな! 侯爵夫人だぞ! 汚い手であたしにちかづくなぁあぁあああぁあああ」
客の1人の顔を叩き、もう1人の男のアレを蹴り上げる。客の男たちは娼館のオーナーに散々と苦情を言って帰っていったのである。
「こいつはもう使えねーなー。この女、そろそろお払い箱だ。川沿いに捨てて来な」
娼館のオーナーは従業員の男にそう言った。
川沿いには最も最下層の娼婦達が敷物を担いで商売をしていた。そこで自ら客をとって洞穴や木やわらなどを組み立てて作った小屋のようなものに住んでいたのである。ここでは野犬も多く、娼婦同士のいざこざで死ぬ者も少なくない。
「さぁ、さぁ。貴婦人様! そろそろあんたも豪邸に行く時期だぜ。せいぜい長生きするんだな」
娼館の男は気の狂った女に声をかけた。
「あっはは。そうかい? それじゃぁ、きっとセオが迎えに来てくれたかね? 私は今でも綺麗かい?」
不摂生がたたり綺麗どころか年相応にもとても見えないシェリルは、そう言いながらいそいそと男の後についていくのだった。
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
次回シェリルの子供とセオの初めての出会いになります。シェリルの末路は自業自得と言うようなものになりましたが、ポワゾン家の門の前に捨てられた子供はその後どうなったのでしょうか?
そのあたりが次回の展開になります。
(会うたびに3人の男性としていれば、そのうち妊娠できるわよね! あはは。子供ができればこっちのもんだわ。あたしは侯爵夫人になるんだ!)
シェリルはニヤリとほくそ笑む。
妊娠したシェリルはセオの屋敷に堂々と乗り込むのだが、ラーニーからトレーニングソードで叩かれて……
シェリルは今、国の機関である国民相談センターで働かせられている。重い荷物を持つ仕事ができない妊婦なので体に負荷がかかる仕事が排除された結果、椅子に座って国民の相談を承るこの仕事があてがわれた。バッテンベルク侯爵は良心的でシェリルに比較的楽な仕事を与え、寮にも入れてくれたのだった。しかし、この仕事は肉体的には辛くないけれどシェリルにとっては退屈でめんどくさい仕事ではあった。
「うちの猫のみーちゃんが死んでしまったんだけど、この間のネズミ対策の毒団子を家に置くことを推奨したあんた達が悪いんじゃないの? 死んだみーちゃんを生き返らせてよ」
中年の女が泣きはらした目でやってくる。
「申し訳ありません。毒団子は害虫やネズミにはとても効き目がありますけれど、保管や設置場所については注意点をいくつも申し上げたと思います。小さなお子さんやペットがいるご家庭はやめたほうがいいというような事はお伝えしてますよね」
「そんなの聞いてないわよ。細々とした説明なんていちいち覚えているわけがないでしょう? とにかくあんたたちが奨励したのがいけないんだから責任をとりなさいよ」
このように説明をよく聞かない人には、シェリルはひたすら謝り続けるしかないのだ。たいていは謝り倒してお引き取り願うのだが不満は募る一方である。
次の女も涙ながらにシェリルを責め立てる。
「国が推奨する予防接種でうちの子に高熱が出て後遺症で右耳が聞こえづらくなったんだけど、どうしてくれるのよ? 副反応なんてごく稀だってきいてたのに!」
「申し訳ありません」
「あんたたちを訴えてやるからね! 」
(なんでこれほど文句を言われなきゃいけないの? 毒団子も予防接種も起案したのは文官のお偉いさん達じゃないの? そして、それを承認したのは国王陛下だ。私は1ミリもこんな政策に賛成した覚えは無い。なのに文句の窓口はあたしが引き受けてお給料はほんの少しだわ。これを決めた肝心のお偉いさんたちは威張り腐ってたっぷりとお金をもらっているのに。あーつまんない)
おまけにイレーヌへの慰謝料ということでシェリルのお給料の半分は持っていかれてしまう。
(こんな退屈でつまらない仕事は嫌よ! 子供さえ産んだら身軽になれるのだから逃げてしまおう!)
子供を産んだシェリルはポワゾン家の門の前にその子を捨てて姿をくらませたのである。
それから月日は流れ、
「あたしはね、本当は侯爵夫人になるはずだったんだよ。お貴族様の愛を一身に受けて貴婦人になるはずだったんだ」
場末の娼館でいつもの自慢話しを始める女。
「あたしはあのラーニーとかいう子供さえいなければきっと侯爵夫人になれたのさ」
狂気の色をはらんだ瞳に男達は苦笑する。
「ふざけるなよ! お前が侯爵夫人だったら俺は国王になれるぜ」
客の男の1人がせせら笑いながらその女を押し倒した。
「あたしに触れるな! 侯爵夫人だぞ! 汚い手であたしにちかづくなぁあぁあああぁあああ」
客の1人の顔を叩き、もう1人の男のアレを蹴り上げる。客の男たちは娼館のオーナーに散々と苦情を言って帰っていったのである。
「こいつはもう使えねーなー。この女、そろそろお払い箱だ。川沿いに捨てて来な」
娼館のオーナーは従業員の男にそう言った。
川沿いには最も最下層の娼婦達が敷物を担いで商売をしていた。そこで自ら客をとって洞穴や木やわらなどを組み立てて作った小屋のようなものに住んでいたのである。ここでは野犬も多く、娼婦同士のいざこざで死ぬ者も少なくない。
「さぁ、さぁ。貴婦人様! そろそろあんたも豪邸に行く時期だぜ。せいぜい長生きするんだな」
娼館の男は気の狂った女に声をかけた。
「あっはは。そうかい? それじゃぁ、きっとセオが迎えに来てくれたかね? 私は今でも綺麗かい?」
不摂生がたたり綺麗どころか年相応にもとても見えないシェリルは、そう言いながらいそいそと男の後についていくのだった。
✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼•┈┈┈┈•✼
次回シェリルの子供とセオの初めての出会いになります。シェリルの末路は自業自得と言うようなものになりましたが、ポワゾン家の門の前に捨てられた子供はその後どうなったのでしょうか?
そのあたりが次回の展開になります。
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